10.二人で帰る 

「斎藤くんなんであんなの上手いの!?びっくりしたよー!」


「全然。」


「そんなこと言ってえーなんかやってたりしてたの?」


「ま、まあ、小さい頃お父さんにたくさんカラオケに連れてかれていっぱい歌ったことがあったらしい。でもここ数年歌ってないからそんなだよ。」


「いやいやうますぎ!ほんと!凄かった!」


「そんなこt……いや、ありがとう。」

本気で褒めてくれているのにずっと拒否するのは悪いだろうと思って感謝を言った。


「それはそうとして、なんで急にカラオケ一緒に来たの?やっぱり莉乃が関わってる感じ?」


「げっ」

え?もうばれてるの?早くない?


「やっぱり!?なんかそうだと思ったんだよね。今日もなんか今日他の人より少し近かったし。なんかあるんですかねぇー?」


「うーん、えーとー」 

あのことを言っていいのかわからないしどうすればいいんだろうか。

そう困ってたら、


「はっ!ってごめんね私こう言う話になると周りが見えなくなっちゃって。

あんまり話したそうじゃないし、嫌なことをさせてまで聞きたいわけじゃないからほんとごめんね!」


「あ、ありがと。」


「まあ、莉乃に聞けるしね!」

そう言った柏田さんは少し怖い笑顔をしていた。


それからはアニメの話や学校のことなどいろいろな話をした。


「結構色んな人と話すのも疲れるんだよねー。

楽しいっちゃ楽しいんだけど一人の時間も欲しいっていうかさ。」


「やっぱそう思ってるんだ。俺今まで一人になると寂しくて死んじゃうとか考えてるのかと思ってた。」


「そんなわけないでしょー!!斎藤くんにもわかると思うけど一人の方がなんでも楽でしょやっぱり。友達と関わるもいいけど一人も楽しいよやっぱり。」


「うん、そうだね。」


「お、駅着いたね。ちょっとチャージしてくるから待ってて!」

そう言って券売機のほうに走って行った。


陽キャでも一人が楽しいとか思ってる人いるんだなあ。少し驚いた。

柏木さん俺となんか考え方少し似てるし、話しやすいし仲良くなれるかなー?


「ごめん、お待たせー!行こっか?」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜

やばい、近い近すぎる。

俺は今とても危険な状況にいる。

そう、今軽く電車の中で柏木さんに壁ドンしてる感じになってしまっているのだ。

「大丈夫?キツそうだけど…」


「まだ大丈夫、」


「ごめんね、一緒に帰りたいって言ったから。」


「気にしないで、柏木さんのせいじゃないから。」


それでもこの状況はやばい。

いつもよりものすごく近くて、いい匂いがする。

それに位置的に柏木さんと話すには下を向かなくてはいけなくて結果的に柏木さんは上目遣いになってしまう。

俺にとってはその柏木さんの行動の全てが意識されられてドキドキしてしまう。

この状況が20分も続くと思うととてもやばい。

「んんーー。」


「なんか挟まったりしちゃってる?」

ドキドキしてるのを出来るだけばれないようにしながら話しかけた。


「人が多すぎてつり革つかめ無くて体勢がきついんだよね。倒れちゃうかもどうしよう。」


え、どうしよう。イケメンとかってこういう時絶対俺の腕に捕まってろ!とか言うけど俺には精神的に無理ムリ!

でも困っちゃってるんだよなー。どうしよ。早く決めなきゃ。ーーーーー


「よかったら俺の腕掴む?」

あーーー、言ってしまったああ!!

やばい、いきっちゃってるやつとか思われたかな。


「あ、ありがと。」

柏木さんは頬を赤くして少し照れながら掴んできた。

そんなことされると俺ももっと照れちゃう。もうやばい!!!


そんなこんながありながらやっと八王子駅に着いた。


「斎藤くんありがとう。」

そう言った柏木さんはまだ顔が赤かった。


「あんな状況だったしあれしかできなかったからしょうがない。」

そんなことを言ったが俺もものすごく照れていた。


「ーーーーーー」


「ーーーーーー」


「んーー!もう恥ずかしくムリ!ごめんねもう帰る!!!バイバイーーー!!」


そう言って走って行ってしまった。

俺も柏木さんを見るだけで少し照れちゃうから別れられてよかったんだけど、なんか寂しさが残っている。


遊んだ後ってこう寂しくなるなあ。こんなことを思っちゃってる時点でもう変わってきてるのかな。それだったらいいな。うん。


そう思いながら暗い夜道を走って帰って行った拓人であった。

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