5.屋上
「斎藤くん、来てくれてありがとう~」
授業が終わって、俺は屋上に来ていた。
授業中になんで呼ばれたか考えてたけどやっぱり落とし物だと思った。
それ以外で呼ぶ必要がないからだ。だからまた謝ろうとして来ていた。
「来てくれなかったら泣いちゃうところだった~笑笑」
「大げさだよー」
「それでなんで呼ばれたかわかったー?」
浜辺さんは少し顔を赤らめていた。
「授業中考えてたんだけどさ、なんかまた物落としちゃった?」
顔が少し赤かったけどなんかあるのかな。まあいいや。
「むーっ!違うよー!」
「え?じゃあ何?」
落とし物じゃ無かったらなんなんだろうか。
「屋上に呼んだんだよ?わからないー?」
「……わかんないや。」
「んーもう!告白だよ、告白!斎藤くんのせいで変になっちゃったけど……」
え?どう言うこと?告白?俺になんで?
「改めて言います。斎藤くん。」
「はい。」
やばい心臓のバクバクが止まらない。
「前からずっと好きでした!良ければ付き合ってください!」
いつもの浜辺さんからは想像ができないぐらいの綺麗なお辞儀だった。
すらっとした金髪が下に垂れてより綺麗に見えた。
「一応聞いていい?俺のどこがいいの?」
「前から見てたんだけど、他の人のことに気をかけてて、なんかあったらいろんな人のこと助けてたよね!
みんなは気付いてないみたいだけど。
その時からもうすこし気になってて、それでこの前のことがあったじゃん?
それで、私思ったの。
いつも少し怖くて勉強しかしてなくても、好きなことがちゃんとあっていい人だなって。
だから他の人に取られたくないって思って呼んだんだよ。」
「ありがとう。でも、ごめんなさい。浜辺さんと付き合うことはできない。」
昔みたいなことはしたくないんだ……
「………………私のこと嫌いなの?」
「嫌いじゃない。」
「じゃあ、なんで泣いてるの?」
そう言った浜辺さんは心配そうに悲しそうな顔をしていた。
「あれ、なんで泣いてるんだろ俺」
「大丈夫?」
「ごめん。気にしないで。」
「斎藤くんはそうやって自分のことを自分だけで抱え込んじゃうから辛くなっちゃうんだよ。私にちょっとだけでもいいから話してもらえないかな。これでも一応斎藤くんのこと好きだから少しでも何かをしてあげたいの。」
「そんなに大きな事じゃないんだけどね。」
そんなに言ってくれるんなら話してもいいのかな。
そうして、浜辺さんが聞いてくれいる中、話し始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
これは俺が4年前、小学6年生だった頃の話。
その頃は友達は多くはなかったが決して少なくはなかった。
みんなと遊んでたしそれなりに楽しかった。
だけどある時、お母さんが入院してしまってそれからみんなとは遊べなくなってしまった。
それから俺への態度は変わってしまった。
そう、いじめられたのだ。遊べなくなっただけどこうも変わってしまうのかと思ったが、全員が全員いじめてくるわけではなかったからそこまでは苦でなかった。
そんな時、いじめられていても仲良くしていた友達に
「好きです!付き合ってください!」
と言われたのだ。その友達に対しては恋愛感情はなかったが、嫌いではないし傷つけるのも嫌だったから付き合った。
そうしたら彼女がいじめられ始めたのだ。俺は出来るだけいじめから守ろうとしたが、到底俺には無理で、結果彼女は転校してしまった。
それからは
「俺のせいで彼女をつらい思いにさせてしまった。俺が悪いことをしたんだ。」
そうずっと思ってきた。だからもう他の人を傷つけないためにも付き合いたくないんだ。
いや、違う。俺は怖いんだ。また付き合って人を傷つけることをしたくないんだ。
そう。だから。ずっと…ずっと…俺は…………
浜辺さんは手を握っていてくれた。
「辛かったね。大丈夫大丈夫。」
話しているうちに、俺の目からは涙が落ちていた。
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