第3話
部屋に戻って、話をする。
「今から会議を行います。何故僕が壁にぶつかったのかについて話し合いましょう」
「はいはい。でも良かったよ。お母さんたちには見えないみたいだね。これは私以外は見えないってことでいいかな。でも確かにびっくりしたよ。壁にぶつかっちゃうんだもんね。笑っちゃったよ」
「だけど、原因が分からん。あれか凛ちゃんに何かされたらそのときは物理現象が働くのか?なんだその都合のいい設定は!誰がこんなことをした!」
「もううるさいなぁ。じゃあもう一回やってみればいいだけじゃん」
凛ちゃんが俺の頭を持つ。
「おい、ちょっと待て、殴られる痛さとは桁違いなんだそ!流石のドMで定評のある俺でも躊躇するから!」
凛ちゃんはそんな言葉を聞く耳を持たず振りかぶる。ピッチャー投げました!
「ドカン」「チーン」
俺はリアクションをとる間もなく、一瞬で気絶した。その間に凛ちゃんはお風呂に入っていたようだ。寝巻きを着ており、髪を濡らした彼女がいた。
「これで分かったでしょ。私が投げてもぶつかる」
「あぁぁぁぁぁ!お前さてはアホだろ?あそこで投げるのはホント考えられん」
そんなこんなでもういい時間だ。
「あ、もうこんな時間だ。もうそろそろ寝なきゃ。これからの約束。トイレとお風呂だけは絶対に覗かない。これだけは絶対だからね」
「さっきから言ってるだろ。俺、凛ちゃんに興味ない。俺が見たいのはもっとボンキュボンな人なんだよ」
「ッ!た、例えそうだとしても、絶対ダメなんだからぁ!!!」
俺たちはこうして契約というか一方的な約束を交わした。その後のことはあまり覚えていない。
気がつくと朝になっていた。
「柳、いつまで寝てんの。もう寝させないよ」
「おお、もうこんな時間か。ところで何してんの?どこか行くの?」
「今日は学校だから、その用意してるんじゃない」
「え、今日学校なの?そんなの聞いてないよー」
「今言ったんだから当たり前じゃない」
「学校かー。なんだか久しぶりな気がするなー。何も覚えてないけど、すごい懐かしい響きだよ」
俺たちは家を出て学校へ向かう。
「そういえば、今日体育あるんだけど、女子更衣室は絶対覗いちゃダメだからね。覗いたらどうなるか分かってるんだろうな?ゴラァァ!」
「あー、はいはい。分かってるよ。いや、待てよ、正直すごい見てみたい。凛ちゃんはどうでもいいんだけどさ。最近の子の様子見てみたいなぁ〜」
ゴゴゴゴゴ!凛ちゃんからすごいオーラを感じる。周りの空気が揺らいでいるように見える。
「戦闘力53万だな。なかなかやるじゃないか!でもすごいね。凛ちゃん。たまに女子高生とは思えない、ゴリラみたいな迫力出してくるじゃん」
「ア゛何かいったか?」
凛ちゃんからどす黒い何かが出ている気がした。
「い、いえ、何も申しておりません。ははぁー。<(_ _)>」
凛ちゃんは俺の頭を掴み、何かを体から発している。
「あぁ、凛様のお力で私を成仏させてくださるのならこれ以上の幸福はありません。どうか、一思いにやってください」
目を瞑って待っていても何も起きない。目を開けると凛ちゃんは手を離した。
「こんなしょうもないことやってないで早く学校いこ。遅刻しちゃうよ。こんなこと誰もいないここだからできるんだからね。誰かがいるときはしょうもないことしないでよね」
凛ちゃんのガチトーンに僕は返す言葉がなかった。
「はい……」
「あ、凛だ!おはよう!」
「おはよう!」
「すごいじゃん!凛ちゃん。教室入っただけでこんなに声かけてもらえるなんて人気者だね。柳は凛ちゃんが立派になってくれてうれしいよ」
「うるさい…、みんなの前なんだから、なんの反応もできないし、次からは無視するから。」 ボソボソ
「うわぁー。本当に教室だぁ。学校か、まるで自宅のような落ち着き。はっ!もしかしてここが俺の故郷!?母校!?まっ、なーんにも覚えてないけどね」
凛ちゃんを見るとそこに凛ちゃんはいなく、数メートル先で友達と話をしていた。
「無視どころか、聞きすらしてくれないのかよ!俺の渾身のボケが………」
だがそのツッコミさえも誰も回収してくれない。なんて悲惨な男だ。ああ、柳くんかわいそうに……。
俺には凛ちゃんと同じ部屋いるという呪いがかかっているから教室から出るすべもなく、授業を聞くか、寝るかしかなかった。授業を聞いてもまったく理解できなかった。少しショックだ。俺はこんなにもバカだったのか。
凛ちゃんが移動中で一人のときに話しかける。
「高校の授業ってあんなに難しかったんだね。俺なんてさっぱり分からなかったよ」
「そう?あれくらい、普通に勉強してれば分かるはずだけど……。柳、言動からしてバカだとは思ってたけど、あんなのも分かんないの?頭に何入ってんの?ちゃんと脳味噌ある?」
「あぁ、久しぶりの冷酷凛ちゃん。あぁ、いいね!」
「はぁ、忘れてたわ。柳ってそういえばこういうヤツだったんだ」
「あ、次体育だからね。分かってるよね」
「はいはい、言われてたとーりにしますよ」
俺は女の子たちがバドミントンをするのを眺めているだけだった。
「あーあ、つまんねーの。体育っていったらわりと楽しい授業だった気がするんだけど、見るだけってこんなにつまんないんだ。例え女子高生のバドミントンだとしても全然盛り上がらねー」
体育が終わってみんなが更衣室に入っていく。ああ今この扉の向こうで女の子たちがあんなことや、こんなことをしてるんだろうな。考えただけで、鼻血もんだよこれ。そのときバランスが崩れた。本当に意図せずに崩れてしまった。幽霊なのにそんなことあるのかって?俺も知らん。だが起こったものは起こってしまったのだ。そして、女子更衣室のドアをすり抜けて俺は中に入っていく。
「あぁ、俺はどうなってしまうのだろうか?あぁ、数秒後の俺よ。どうか安らかに眠っていてくれ」
俺が更衣室に入ってももちろんのことながら誰も俺に気づかない。ただ凛ちゃんだけが俺を見ていた。
「ホントにごめんなさい。こんなつもりは無かったんです。心の底からお詫び申し上げます」
俺は全力で土下座をした。だが何の反応もない。顔を上げて周りを見てみる。みんなもう制服を着ていて、アウト!ということは防げたみたいだ。凛ちゃんはこちらを見て、怒り顔をした後、セーフのジェスチャーをしていた。俺は安心した。そのときに冷静になって現実に戻ってきた。
鼻で息をする。すると女の子特有のいい匂いがする。もっともっと吸う。スゥゥゥハァァァ、スゥゥゥハァァァ。
あぁ、ここは長年俺が探し続けていた楽園に違いない。俺はきっとここを見つけるために生きていた、いや死んでもこの世にとどまっていたんだ。もう俺に思い残したことはない。こんな場所でならもう俺は成仏してしまってもいい。俺は甘い空間を味わいながら、天に召される感覚に襲われる。俺の目標が叶いそうだ。そうして俺は天に旅立っていく。
ゴン!衝撃を感じて、俺は目を覚ました。どうやら凛ちゃんに蹴られたみたいだ。
「柳、何してんの?まだこんなとこで寝てたの?もう学校終わったから帰るわよ」
「へ?」
どうやら俺はまだ成仏できないみたいだ。
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