第12話、魔人
「煩いですね。人の部屋の前で何を騒いでおられるのですか?」
漆黒のマント・マスク・衣装。目と口の部分だけがそれとわかる怪人が出現した。
そして、その後ろにたたずむ女性は・・・
「マフユー!」
兵士を飛び越してマフユの正面に立つ。
「探したぞ、さあ一緒に帰ろう」
「・・・だれ?」
あっ、変身していたんだ。人間形態に戻る。
「俺だ、エイジだ。日本へ帰ろう」
「エイジ・・・確かに。
でも、私はハルバード様の妻になった。だから帰らない」
「何馬鹿なことを言ってんだよ。召喚術とかで急にいなくなって、家族がどれだけ心配してると思ってんだ」
一瞬だがマフユの目に動揺がはしる。
「エイジとやら、確かに召喚術で呼んだことは詫びよう。
だが、マフユは私の妻だ。この世界にとどまることを決めた。諦めよ」
「元凶のお前が言うんじゃない。
宝物庫から武具を持ち出し、合成モンスターなんか作りやがって。
周りがどれだけ迷惑をしたと思ってるんだ」
「すべてはこの体を手に入れるためだ。武具の持ち出しや合成モンスターなど、些末事にすぎんよ」
この身体・・・探査には人間と魔王と竜王の合成モンスターと表示されている。
魔王と竜王だと・・・
「ハルバード殿!宝物庫からの数々の持ち出し、確かに認められましたな。
衆人の場で詮議いたします。我らと同行願います」
「今、些末事と言ったぞ。
これから我は、世界のすべてを支配する。そして、人も魔物も等しく我の配下となるのだ。
いずれ我のものとなるのに、先に使って何が悪い」
「世迷いごとを・・・仕方ありません、拘束させていただきます」
「我を拘束だと。面白い、だがいささか面倒であるし、殺戮は好まぬ。
マフユ、配下を呼べ!」
「四天王召喚!」
魔族3体とドラゴン一体が現れた。
「くっ、スキルエディット、イレース!」
マフユの召喚術を消した。次は・・・
「おかしなスキルだな、だがスキル封印!」
二つ目のスキル消しは発動しなかった。
「あはは、これで全員が体術のみだ。魔族やドラゴン相手にどこまでできるか楽しみではないか」
ハルバードの言葉通り、兵士たちはドラゴンと魔族に蹂躙されていた。
だが人間側にも強者とマスタークラスがいた。
「弱い奴は下がってろ。オラオラオラ!」
「マフユ、こんな化け物と一緒にいるつもりか」
「私の勝手」
「そうか、スリープ」
これはスキルではなく、オリジナルの物理作用だから発動した。
「シェラさん、マフユをお願いします。
僕はこいつを、倒します」
「ふん、面白いことを言う。
マフユはお前を倒すまで預けておいてやろう。チェンジ・魔王」
ハルバードは背中の翼を広げて舞い上がり、左右の掌から火のボールを打ち出してきた。
火を無視して重力制御で追いかける。
「それもスキルではないというのか」
「うおりゃー」
右ストレートがもろに魔王の顔面を捕らえ吹き飛んでいく。
魔王は途中でドラゴンへと姿を変えた。
「くらえブレスを!」
吹き飛びながらブレスを使うとどうなるか・・・
体制を整えないまま放たれたブレスは空を切り裂き、本体は反対方法である地面に突き刺さる。
「ぐお、やってくれたな」
いや、俺は何もしてないけど・・・
そのまま、蹴りを放つが竜の鱗に阻まれてダメージにはつながらない。
「竜王の鱗にそんなものは効かぬ」
ふと思いついて剣を取り出し、高速で振動させる。
「じゃあこれは?」
振動させた剣は、竜の腕を容易く切り落とす。
「ぐあ、な・・・なにをした。
なぜ、竜王の鱗に刃がとおる」
「秘密・・・」
もう一度刀を振るい、反対の腕も切り落とす。
「チェンジ・人型」
両腕を失ったハルバードはスキルの封印を解除し、瞬時に治療を行った。
「おのれ、もう許さんぞ。メテオ!」
流星を降らす極限魔法。だがすぐに効果がでる訳ではない。
彼方の小惑星帯から引き寄せるのだから、効果の確認に時間がかかる。
この世界に月はあるが、上空には見えない。
何をどこに落とすか明確でないと多分発動しないぞ、それ。
「マジック・キャンセル!」
発動中の魔法に直接魔力をぶつける荒業だ。
念のためにシェラさんと練習しといてよかったよ。
一応キャンセルしておいた。
「くっ、インフェルノ!」
「マジック・キャンセル」
「おのれ、召喚リバイアサン!」
「マジック・キャンセル」
「あのな、大魔法ってのは発動にタイムラグがあんの。
お前は大量のMPを浪費してるだけだって気づけよ」
「ぐっ、お・の・れ・・・」
あっ、倒れた・・・ふりして、魔法を発動かよ。
「マジック・キャンセル」
「おお、MP1かよ。ステータスエディット・・・っと
MP最大値10、HP最大値10、種族:人間、職業:村人、後は全部消しておくかな」
スキルエディットを参考にして構築したらできちゃったやつだ。
「おのれ、出鱈目なやつめ。お前だけは許さん」
突然周囲が暗くなり、声が響いた。
「ヌエか」
「知る必要はない、死ね!デス・・・」
「煉獄のジャッジ!」
後者の言葉のほうが先に完了した。空間が裂け、鎖が飛び出してきてヌエの四肢に絡みつき裂け目に引きずり込む。
「神による人への直接関与は認められていません。
ヌエよ神界の審判を受けなさい」
マリューだった。
「お疲れ様でした。ヌエは連れていきますので、皆さんの元にお帰りください。
マフユさんの記憶も消しておきましたから」
意識を失ったハルバードを抱えて戻ると魔族が1体減っていたものの、残りは苦戦していた。
仕方ないので、ステータスをいじって人間が倒せるようにしてやる。
「お疲れ様です」
シェラが迎えてくれたので、ハルバードを兵士に引き渡し、マフユを連れてその場を後にする。
「お待ちください!その女も同罪!」声をあげた兵士を皆が取り押さえる。
バカ、空気を読め、マヨネーズ男爵だぞ!と。
「エイジ=タチバナ、そなたを男爵位に叙する」
財務大臣から爵位について打診があり、マリュー神を国神とする事を条件に承諾した。
名目だけで制約は一切ない。
国王からは、おまけとして第一王女のアネリサがついてくると言われたが丁重にお断りした。
神剣類はすべて宝物庫に返却し、代わりに貴族街の一等地にある屋敷をもらった。
「本当にこちらに残られるんですか?」
「そうですよ。向こうと行き来するスキルも構築できたし、これで甘いお菓子も商品化できます」
マフユは記憶を消した状態で帰らせたし、何といってもこっちの方が楽しいんだから仕方ない。
中学は卒業したことにしてもらい、家族には海外に留学すると思い込んでもらった。
いつか、子供ができたらシェラさんと里帰りもいいな。
日本から色々なものを持ち込んだ。
ゴムの木や紙の文化。カイコに桑の絹セット。
稲にトウモロコシにじゃがいも。
学校よりも、余程勉強していると思う。
各町にも拠点を作り、バランスよく産業を興していく。
シェラさんとの結婚式は叙勲から4か月後に行った。
その頃には財務大臣の副官にされていたが、それもまた一興である。
「エイジ、カップ麺がなくなりそうだ・・・」
「王様、カップ麺ばかり食べていると栄養が偏りますよ」
「わしだけではない。ほとんど大臣どもが食べてしまうんじゃ。
次はミソとやらがいいぞ」
「はいはい」
「エイジさん、私、最近ムネが苦しくて・・・」
「アネリサさん、シュークリームとチョコの食べすぎです」
「エイジ、勝負だ!」
「ペーター王子、オセロはジュリエッタを倒せたら相手になりましょう」
「エイジ、もっとバターを量産してほしいって訴えが」
「エイジ・・・」「エイジ・・・」「エイジ・・・」
「エイジさん、母が早く孫の顔が見たいと・・・」
よっしゃー!
超合金ロボで異世界に転移したんだが…意外と不便だったし… モモん @momongakorokoro3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます