第8話、ジョブお嫁さん?

「教えてくれ、お前はなんでただの格闘家なんだ?」


「いやだなあ、たまたま格闘家にしてあっただけじゃないですか?」


「「えっ?たまたま?」」


「だって、竜もいないのにドラゴンスレイヤーとか、剣も持っていないのに竜騎士とか表示されてたらおかしいでしょ」


「表示って、まさかジョブを自分で変えられるのか?」


「えっ?まさか・・・変えられないんですか・・・」


「当たり前だっ!ジョブはレベルアップの時に変わることもあるが、少なくとも自分で選択できるもんじゃないぞ!」


「だって、簡単に変えられますよ。ほら、ジョブチェンジ:賢者!」


ギルドカードを見せるとジョブ欄は賢者になっていた。


「どういうことだ?」


「あっ、そういうことか。

僕はスキルでジョブチェンジを持っているんです。

持っているっていうか、自分でイメージして発動させたんですけどね」


「そ、そんなスキル聞いたことがないぞ。

しかも、自分でスキルを発動させたって・・・」


「あっ、私にもスキルができました」


「できたって・・・」


「ジョブチェンジ:お嫁さん!

あっ、やっぱりスキルが変わるんだ。お裁縫とかお料理とか♪」


「か、カードを見せてみろ」


ジョブ欄はお嫁さんになっていた。


「わ、私にはイメージできない・・・

お前たちは本当に規格外だな・・・それにしても、お嫁さんなんてジョブ、聞いたことがないぞ」



港町オタルは、サンドの西側100kmの距離にある。

サンドウォームを倒したことで無限エネルギーのスキルを作った僕たちは、空の旅を楽しんでいた。


「無限エネルギーって、どういう仕組みなんですか?」


「簡単ですよ。大気中の魔力を取り込んで、自動的にエネルギーに変換する仕組みです」


「じゃあ、魔力も無尽蔵ってことですか?」


「そうなります。シェラさんとおんなじですね」


その瞬間、僕たちの乗った絨毯は真っ白な空間に飛び込んでしまった。

目の前には・・・自分は神だと主張する白いトーガを纏った女性がいる。


「エイジ=タチバナ

心配するな、地球の神とは話がついておる」


「はあ・・・僕は売られたんですね。対価はその身体ですか・・・」


「おお、自慢の双丘をチラチラとな…って、馬鹿を申すな。

神である我らに肉体的な欲はない。が、処女神故に興味はあるがな。

まあいい、本題に入るぞ。

お前たちの倒した合成モンスターとかいう二匹。あれはこの世界の理から外れておる」


「はあ」


「考えてもみろ、あれが人に及ばぬとは考えられぬし、二匹にとどまるとは思えん。

千にも及ぶモンスターや魔物の集合体が現れるかもしれぬのだ」


「はあ、千匹くらいなら・・・なんとか」


「違う。千匹が合体したらと申して居る」


「・・・」


「そして、その企みは王城内で行われており、そこにはお主の捜し人がおる」


「マフユが・・・」


「更に、もう一柱の神、ヌエが関与しているため、私が直接関与することもできぬのじゃ。

エイジ、それとシェラ。この騒動の真相を解明し、根源を消すのじゃ」


「はい。承知いたしました」


「シェラさんがいいのなら、俺もやるけど・・・俺たちのメリットは?」


「希望があれば申してみよ」


「私もエイジさんと同じ体に・・・」


「やめろ!なんでそうなるんですか。

そうですね、ジョブチェンジで元の身体に戻れるようになったらいいですね」


「わかった。二人の願いを叶えよう。ジョブに超合金ロボを追加しておいた。

それから、他人のスキルを操作可能なスキルエディットを加えておいた。

おそらく、固有スキルでモンスターを生み出しているのだろうから、二度と使えぬよう抹消するのじゃ」


唐突に邂逅は終わり、僕たちは元の空間を飛んでいた。


「ジョブチェンジ:超合金ロボ!」


シェラさんは超合金ロボに変身した。装備品も整っている。


「重力制御!

わあ、自分で飛べます!」


僕も人間の姿になれることを確認した。神様の配慮か、服を着た状態だった。


「エイジさん・・・こんなお顔だったんですね」


「がっかりした?」


「いいえ、でもちょっとだけ童顔なんですねって」


「そういえば、童顔というか僕が15才でシェラさんは17才ですから、少しだけお姉さんなんですね」



オタルの町は漁港だったが、沖にモンスターが現れて出港できないらしい。

またか。と思ったがともかく冒険者ギルドへ行きギルドマスターに面会を申し入れる。


「申し訳ございません。マスターは現在モンスターの討伐で出ております」


「海に出ているんですね」


「はい。司令船にお乗りです」


「ありがとう。シェラさん行くよ」


「はい」


人間の姿で空を飛んでいくと、すぐに分かった。

上半身が半魚人で下半身がタコという分かりやすいモンスターだ。

それを取り囲む漁船が20隻ほどあった。

モンスターはタコ足の先端から水流を打ち出し、船の側は障壁を張って防御する。

人間側は、氷の槍や炎、モリや弓矢で応戦するが全然効いていない。

水面に出ている半魚人の部分だけで8m程度。

時折、船底を持ち上げられるのは水中からの攻撃か、数隻が大破した痕跡もあった。


司令船はすぐにわかる。

一隻だけ大きな船だ。

二人で司令船に乗り込み、ギルドマスターを探す。


「おじ様!」


「うん?おお、シェラか、大きくなって・・・はおらんな。残念じゃ・・・」


「どこを見ているんですか!もう・・・って、そんな場合じゃないです。

あれは私たちで倒しますから、船を下げてください。

近くにいると巻き込んでしまいます」


「あれを、どうにかできるのか?」


「はい!お任せください」


「わかった。おい、全部の船を下がらせろ!」


「シェラさん、僕があいつを引き付けておきますから、その間にお願いします」


「はい!」


「ジョブチェンジ:超合金ロボ!」


「「「おお!」」」


重力制御を使いながら接近し、ビームソードで足に切り付ける。

合成モンスターオクトダゴンは8本の足で応戦してくる、

ウォータージェットは、至近ではカッターにもなる。

装備品は本体ほど丈夫じゃないので、一応避けるが数が多い。

一旦距離をとって炎魔法で攻撃すると、タコの焼ける匂いが漂った。


「お待たせしました」


超合金姿のシェラさんもいいな。


「じゃあ、雷で!」


「はい」


「あいつの持っている鉾に意識を向けてやってみて」


「はい」




「おい!お主のジョブが村人で、シェラのジョブがお嫁さんって、何なんだ!」


ギルマスであるタワワさんの部屋に来ている。


「変でしょうか?」


「おかしいだろ!みんなが全身鎧姿のお主達を見ておるわい。

どう考えても、重騎士とかだろうよ!

それにシェラ!」


「はい」


「お前は魔法剣士だったよな」


「はい。

それから賢者になって、お嫁さんになりました」


「だから、どうしてそうなるんだ!」


「えっと、一番なりたかった職業?」

その、人差し指を口元にもっていくポーズは人前でやっちゃダメです。


「全身鎧のお嫁さんになりたかったというのか」


「えっと、あれは超合金ロボ?」


「うん」


「うん、じゃねえだろ!」


それからが大変だった。

スキルチェンジを説明して、婚約したことを納得してもらい、バーバラさんからの手紙を読んでもらってマスタークラスの承認をもらった。

今回の戦利品の中には片手斧があったのでタワワさんに贈呈した。

例によって宝石の一部を町に寄贈したら、ここでもお祭りになった。


「それにしてもよ、シェラのHP4000はとんでもねえ数値なんだがよ、?ってのはなんだよ!

お前のHPとMP、シェラのMPは計測不能ってか・・・計測不能なんて初めてみたぞ」


「でも、マスタークラスにしていただいたおかげで、表示されなくなりました。

ありがとうございます」


「それによ。ジョブお嫁さんってのを見た職員どもが目の色を変えやがった。

みんな賢者の先にお嫁さんがあるんだって勘違いしちまったよ。

どう責任をとってくれるんだよ」


「お嫁さんを目指して研鑽していただくのは素晴らしいと思います」


「賢者ってのは、国に二人しかいねえ上級職だぞ。

その先を目指せってか・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る