第2話、町に立ち寄ってみた

毎回こんな調子では、手間がかかって仕方ない。

超合金ロボにこんな落とし穴があったとは…

門兵に相談すると、冒険者ギルドで登録すれば登録証という身分証を発行してもらえるとの事。

素材の買い取りもしてもらえるため、登録しておいた方が何かと便利なんだとか。


正直なところ、宿に泊まる訳でもなく、食事も必要ない。町ですることは情報収集だけである。あまり手間がかかるようなら、パスする選択肢もあった。


門兵に聞いた冒険者ギルドはすぐに分かり、建物に入ったのだが、注目を集めてしまった。まあ、当然といえば当然である。


なっ、なんだ… 鎧か… ゴーレムじゃないのか…

歩くたびにバイーン・バイーンだもんね。

全部無視してカウンターに向かうが、受付嬢の引き攣った表情…


「ご用件は…」


「冒険者登録をしたいのですが、ここでいいですか」


「し、新規登録ですか?」


「はい」


「人間のかた…ですよね?」


「はい。門のところで、お婆さんに鑑定してもらいました。間違いありません」


「それは、鎧ですか?」


「異次元の神の呪いで、脱げなくなっているんです。鎧自体が呪われた防具なんですよ」


「そ、それはお困りでしょう。神殿で解呪はできなかったのですか?」


「不可能です。神様の呪いですからね」


「分かりました。

では基礎レベルを計測しますので、こちらの玉に手をおいて魔力を流してください」


「魔力を流すって、どうやるんですか?」


「んー、とりあえず手を置いてみてください」


「こうですか?」

水晶玉みたいなのに、手を添える。


「わっ、マ、マスタークラス…パラメータは…千を超えてますねって…すみません、私では対応できません。上司を呼びますので少しお待ちください」


そう言って受付嬢は奥へ走っていった。

少しして、仙人みたいな爺さんを連れて戻ってくる。


「ギルマス、こちらの方なんですが、呪いで鎧が脱げないみたいです。

で、このまま計測したら、マスタークラスって表示されて…」


「どれどれ、ふむ、確かにマスタークラスじゃな。パラメータは、1000以上かよ。まあ、いきなりマスタークラスってのは無理があるし、ゴールドクラスから始めてもらおうかの」


「じゃあ、G3でいいんですね」


「そうなるな」


「では…エイジ様でよろしいんですよね、初期登録いたしますのでそのまま動かないでくださいね」


こうして、割と簡単に冒険者登録が完了した。

依頼は、ゴールドクラスのため、ほぼ全ての依頼を受けることが可能。まあ、長居するつもりはないから必要なさそうだが。


「おい、いきなりゴールドクラスだと」 「ふざけやがって」 「ゴールドの昇級試験に何回落ちたと思っているんだ」  

などの声が聞こえたが、気にしないことにする。


「素材の買取をお願いしたいのですが」


「ものは何でしょう?」


「イノバクが20くらいと、オオウワバミ一体です」


「オオウワバミですか…、ゴールドクラスの討伐で出ていますね。

どのあたりで討伐されたんですか?」


「東に10kmほどいった山の中です。

いきなり飲み込まれて焦りましたよ」


「の…飲み込まれたんですか…大きさは?」


「10m以上ありますね」


「目撃証言と照らし合わせますので、奥へお願いします」


僕の狩ったオオウワバミは、討伐依頼の出ていたものに間違いないそうで、依頼達成の報酬込みで金貨50枚(200万円相当)になった。


「じゃあ、金貨10枚をギルドへの寄付と、もう10枚は皆さんで飲んでください」


「「「うおー!」」」 「太っ腹じゃねえか!」 「兄貴と呼ばせてください!」


「それから、孤児を預かっているような施設はありますか?」


「働き手を亡くした家族はギルドで面倒見ていますけど…」


「じゃあ、そこへも金貨10枚を寄付させてください」


「なぜ、そこまで?」


「この体は、呪いのせいで食事不要で、宿も要りません。武器・防具も要りませんのでお金がかからないんですよ」


「でも、元の体に戻った時に、何かと必要になるのでは?」


「戻ったら、そのとき考えますよ」


ギルドで得た情報では、この町はルソンといい、ワードナ王国にある5つの町のひとつ。何か大掛かりなことをしているのであれば、王都以外は考えられない。この国以外なら、隣接する二つの国のどちらかになる。

ルソンから次の町サンドまで約50km、更に王都まで40km程だという。

急ぐ旅ではないが、この街に用がある訳でもない。歩いてサンドへ向かおうとした矢先に騒ぎが起こった。


「北の湿地にヒドラが出た」 「出くわしたパーティが全滅した」 ギルドへ駆け込んできた3人組が口々に叫んでいる。


ギルド内が騒然とする。


「落ち着け!」

ギルドマスターの大声で静寂が訪れる。


「詳しく話せ」


「あ、ああ。北の湿地で、魚や鳥の死骸が異常なほど見つかったんだ。

そこに居合わせた俺たちと、もう一つのパーティーで、少しでも情報を集めようと手分けして調査を始めたんだ。

俺たちは運が良かった…もう一つのパーティーは至近距離で出くわしちまったんだ」


「ヒドラにか」


「ああ、多分穴にでも潜っていたんだろう。真後ろから襲われて、変な液体を口から吐き出したんだ。

そしたら、剣や楯が白い煙を出しながら溶けちまったんだ」


「ああ、頭からそいつを被ったやつも溶けちまった…」


「それで全滅か…」


「…」


「それで、現れたのは一匹だけなのか?」


「わ、わからねえ。頭は10以上あったが、本体の方は糸ミミズみたいにウニョウニョしてて一匹なのか集合体なのか確認できなかった」


「…溶解液ってのはヒドラの特徴だが、通常は3つから9の頭を持つといわれている。どっちにしろ討伐隊を組んで退治するしかないようだな。

おい、緊急招集だ。銀以上の冒険者全員を呼び出せ。明朝6時集合だ!」


それからギルドマスターは俺に向かって言った。


「エイジだったか、町のモン以外に強制はできないが、できれば手を貸してもらえないか。あの湿地は、この町にとって生活に密接した場所なんだ。

ヒドラかどうか確認できていないが、どうにかして退治しないと…」


「金属が溶けたってのは気になりますが、急ぐ旅でもないのでお手伝いしますよ」


「悪いな、助かる」


宿に泊まる必要もないので、ギルドのホールで夜を明かし、翌朝湿地に向かって出発した。

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