超合金ロボで異世界に転移したんだが…意外と不便だったし…

モモん

第1話、幼馴染が召喚魔法で連れていかれたらしい


幼馴染のマフユが行方不明になったのは、3か月前の土曜日。雨の降る夕方だった。

二人で映画を見てお茶して帰ってきた。

17時過ぎに帰宅。隣の家に住む俺は、マフユが玄関に入るのを見届けている。

マフユの両親が帰宅したのは20時頃で、リビングとマフユの部屋の電気は付けっぱなし。

靴は脱いで玄関に揃えてあり、着替えた形跡はない。濡れた傘もそのままであった。


当然だが、最後まで一緒だった僕は何度も状況を聞かれたが、それ以上の事は答えようがない。

一番つらいのは僕なのだ。

警察犬も導入されたが、捜査の進展はなかった。

僕も中学に通う身、受験勉強の必要な3年生なのだが、マフユの写真をもって駅で呼びかける日々。


そんなある日・・・


『起きろエイジ』


突然頭の中に響く声。


『わしはこの世界の神と呼ばれる存在じゃ』


「神様?」


『そうじゃ。じゃが、情けない事に、ついさっきまで一人の少女を持っていかれたことに気づかなんじゃ。すまんのう』


「少女って、まさかマフユのこと・・・」


『ああ、少女は別の世界の召喚魔法とやらで持っていかれたのじゃ。

部下によるログのチェックが少しばかり遅れ気味でのう。

気づくまでにこれほど時間がかかってしもうた。

ほんにすまんのう』


「マフユは無事なんですか」


『そこは問題ない』


「戻すことは出来ないんですか?」


『問題はそこじゃ。

神による別世界への直接的な関与は、神界の取り決めで禁止されておるのじゃ』


「そんな・・・じゃあ、どうすればいいんですか」


『わしも勝手に手を出されて頭にきておるのじゃ。

そこで提案なのじゃが、お主が少女を取り返してくれんかのう。

ついでに、向こうの奴らにお仕置きをしてもかまわん』


「僕にそんな力があったら・・・」


『もちろん、お主には異世界へ渡る力を与える。

言語能力や絶対的な防御力を与えることもできる。

ただし、いきなり大きな力を持ったお主を送ると向こうの神に気づかれてしまうじゃろう。控えめな能力で送るから、向こうで成長してもらわねばならん。

どうじゃ。

パラメータ以外なら、融通は利かせるつもりじゃ』



こんな経過で、今僕はマフユを誘拐した世界に来ている。


ステータスを確認すると職業欄に超合金ロボとある。

ああ、憧れの超合金ボディーを手に入れたのだ。


だが、転移先は夜だった。

暗視ビジョンで森の中だとは分かったが、空腹感がひどくまともに動けない。

朝まで機能を停止して寝よう・・・と思ったが、すぐにカリカリという音で起こされた。

暗闇に乗じて、何かが足をかじっているようだ。鑑定で確認すると、森ネズミLV.1と表示が出た。


経験値を稼ぐかと立ち上がったが、ビービーという警告音。

視界には充電不足ですと表示が出る。

この体は、光と魔力で稼働するって聞いてたけど・・・電気なの?

だがどうにもならない。諦めた僕は、行動を停止した。

まあ、ネズミくらいにかじられたりしない。

だって、超合金だから。


翌朝、陽が昇ったので動き出そうとすると再度警告音とメッセージが出た。


『初回起動時は、フル充電するまでお待ちください』


「どれくらいかかるの?」


『フル充電までお待ちください』


結局充電完了のメッセージが出るまでに、丸三日を要した。

意外と不便な体だ。

だけど、焦る必要はない。帰るときは元の時間軸に戻してくれるって話だから。

とりあえずこの森で十分にレベルを上げてから行動しよう。


4日目の朝、僕は活動を開始した…のだが、ネズミ系は動きが速すぎる。

木にも登れない。スライムを殴りつけても破壊力不足と表示される。

歩くたびにバイーン、バイーンと音がするので、おとなしい魔物は逃げてしまう。

…嗚呼、僕は役立たずだった。初期レベルを上げる事にさえ手こずるなんて。


散々歩き回ったが、僕の力で倒せる魔物はいなかった。

ふと、思いつく。自分の力でダメなら相手の力を使えばいい。

普通のカウンターじゃだめだ。こちらが弾き飛ばされてしまう。

突進タイプの魔物を誘導して、岩壁か大木を背にして戦うのがいいかもしれない。


手ごろな相手がいる。イノバクだ。 イノシシタイプのモンスターでカウンターを当てても僕のほうが吹き飛ばされてしまう。

そのイノバクを相手に3回ミスった後、4回目にして想定通りの態勢に持っていくことができた。

岩を背にした僕に、イノバクが突っ込んでくる。

タイミングをあわせて右拳を突き出すと、”ドガッ!”拳がイノバクの頭にめり込んだ。


チャラリーン♪


おっ、レベルアップしたっぽい。

ステータスを確認するとレベル2に上がっていた。パラメータ全てが1から2に上昇。

スキル欄に「消音」がついていた。


イノバクをロボ収納に格納し、同じ要領でイノバクを仕留めるとまたレベルアップした。パラメータは2から4に、スキル「ロボパンチ」が追加になった。


夜活動すると、ライフゲージが目に見えて減っていくため、日没後は機能を停止して日の出を待つことにする。

魔物を倒すことで、魔力を吸収することができるが、効率が悪い。それでも、一週間かけてレベル10まで上げる事ができた。


各パラメータは512まで増え、スキルも最初のころに覚えた「ロボキック」「ロボソード」「ロボパンチ」が「ロボメガトンキック」「ロボライトソード」「ロボジェットパンチ」に昇格した。

そして、レベル10では、「ロボ重力制御」を獲得できたが、まだ、ビームやフィンガーミサイルは獲得できていない。

アニメ通りなら、いずれは獲得できるはずである。


どちらにしても、パラメータ512というのは一般的…ゲームなど…に見て十分と判断。 町に向けて移動する事にした。

ロボ重力制御を使えば飛び跳ねて行けるのだが、ライフゲージの減りが激しい。

ライフゲージはHPとMPの合算値で表示されている。


仕方なく、歩いて町に向かうが、直線距離で30kmある。

丸二日は見ておいたほうがいいだろう。


バイーン、バイーンと音を立てて歩いていく。

走ってもいいのだが、景色を楽しみながら魔物を倒していく。

もう、イノバクも一撃で倒せるし、それ以上は今のところ現れていない。


陽が沈み、魔物の世界が訪れる。

街道沿いの木に寄りかかり、機能停止してエネルギーの節約に努めるが、突然大きな衝撃があり転がされる。

それと同時に、周囲から締め付けられる。

どうやら何かに飲み込まれたようだ。


鑑定すると”オオウワバミLV10”と表示されたが、手足を広げると、結構楽に動くことができた。


『ロボライトソード!』 ビーム状の剣を稼働させて、オオウワバミの腹を切り裂く。

オオウワバミは苦しさから転げまわるが、構わず切り口を広げていく。

10分ほどかかったが、オオウワバミを討伐し、レベルアップした。

パラメータ1024、これってもう無敵レベルなんじゃないか?

最初の頃はしょぼかったが、どうやら倍々で増えていくようだ。


切り裂いた腹から、光る金属類が山ほど出てきたが、面倒なのでそのまま収納した。

そして、こんなことが起きないよう、岩陰にうずくまり機能を停止した。

今度は無事朝を迎えることができ、その日の昼過ぎに町へたどり着くことができた。


バイーン バイーンと音を立てて近づく俺を見て、門兵は身構えた。


「敵じゃありません、人間でーす!」 大声で叫ぶが、武器は構えたままだ。


「異次元神の呪いで、鎧が脱げないんです」


「嘘をいうな! そんな鎧見たことがないぞ!」


門番は町に入れてくれなかった・・・


「できれば、鑑定のできる人を呼んでくれませんか。

そうすれば人間だとわかるはずです」


門兵の呼んでくれた鑑定士により、僕は人間であることが証明された。

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