監視官


 端末が発した音でぼくの意識はブリーチのネット監視課のオフィスに戻る。

 仕事を再開しろというマネージメントソフトの合図だ。

 ひと仕事終え、ひと息ついていたぼくはやれやれとため息をつく。前の仕事を処理してから、まだ五分もたっていなかった。

 監視課はネットにあふれる穢れたコンテンツを審査し、必要であれば規制をかける部門だ。審査するためには穢れたコンテンツを視聴しなければならず、それを見続けるのは、精神的に苦しいものがある。

 マネージメントソフトはそのあたりの疲労度を考慮して、適宜休息を入れてくれるという触れ込みなのだが、十分な休息を取らせてもらったと感じたことは、今まで数えるほどしかない。

 ため息をついている間に、コンタクトレンズに拡張現実が展開される。

 デスクの上の空間に四〇インチほどのウィンドウが現れる。ウィンドウは左右で二つに分割されていて、左側は審査対象コンテンツを、右側はそのコンテンツのタグを表示するスペースになっている。タグスペースには、アルゴリズムによって自動判定された審査対象コンテンツの属性が次々と並べられていく。

 動画、出血、性描写、レイプ。

 タグスペースに付け加えられていく文字列は当たり障りのないものから、だんだんと穢れを伴った、具体的なものになっていく。タグが加えられていくと同時に、脇にあるカラーインジケータの色が変化し、コンテンツの穢れ具合が色相で表現されるようになっている。

 今日のピュアネットの基調色ベースカラーは R:243 G:243 B:243の乳白色。

 ピュアネットの穢れの尺度であるその色を、R:255 G:255 B:255の純白にすることが、ネット監視の理想形だった。

 とはいえ、理想というのは達成されないから理想であるわけで。

 ぼくらネット監視官の働きで、行きつ戻りつを繰り返しながらゆっくりとピュアネットは純白に近づいているものの、残念なことにピュアネットの基調色が純白になったことは、今まで一度もない。

 色つきの穢れたコンテンツが存在するかぎり、純白が訪れることはない。

 ネット監視官はピュアネットを清らかなものとして維持すべく、穢れたコンテンツを判別し、排除する。けれどいくら穢れを排除してもネット上には次々と新しい穢れがアップロードされ拡散されるから。いたちごっこだった。

 ウィンドウ上では、それぞれのタグに設定された色が、乳白色のパレットに加えられていく。「出血」は赤、「性描写」はパッションピンク、「レイプ」はどす黒い血のような赤というふうに。「動画」というタグは、穢れとは関係のない中立的なタグなので透明だ。

 様々な色が混ぜ合わされることで、インジケータの色相は純白とは正反対の、穢れた黒に近づいていく。

 タグの追加が終了したとき、カラーインジゲータが示していたのは、 R:17 G:13 B:19の限りなく黒に近いグレーだった。

 また何度目かのため息が漏れる。

 審査を完了するには、コンテンツを見なければならない。

 嫌々ながらも、ぼくはコンテンツの再生ボタンに手を伸ばして、審査対象の動画コンテンツを再生する。

 聞こえてきたのは女性の悲鳴と興奮した男の息遣い。手持ちと思われるカメラが激しく揺れながら女性の顔がアップになった。右の頬が紫色に変色して腫れている。額から血が一筋の線を引いて頰につたっていた。自分の身に起きていることを否定するように、女性の眼はきつく閉じられている。

 その女性の姿が愛梨と重なり、ぼくの身体が強張った。

 愛梨が経験した地獄。

 それと同じ地獄はどこにだって存在する。

 しかもそれを乗り越えたあとでも、地獄はこうやって複製され、延々と拡散されていく。地獄はどこまでも被害者を追い続ける。

 そのことに、怒りとやりきれなさを感じてはいる一方で、慣れてしまっているのも事実だ。それはある意味都合がいい。ネット監視官であるぼくは、感情的な反応を抑えて、つとめて冷静に映像を分析しなければならないからだ。

 割り振られた映像コンテンツをざっと見て、ぼくはまず、「暴力」というタグを追加した。映像の中の女性は頰を腫らし、頭から血を流している。この映像の前に暴力行為があったことは容易に想像がつく。

 映像の中には殴る蹴るなどの行為が直接的には写り込んでいなかったからアルゴリズムは「暴力」というタグを追加しなかったのだろう。

 アルゴリズムは推測が苦手だ。だからこんなふうに、人間であれば容易に想像がつくことを見逃してしまう。監視官の存在意義の一つは、こうして、アルゴリズムの弱点を補完することだ。

 暴力のタグが追加されたことで、カラーインジゲータには赤の成分が足されたはずだった。けれど、その変化がわからないくらいに、すでにその色は穢れていた。

 引き続き映像を見ながら、アルゴリズムが付加したタグに承認を加えていく。

 女性を組み伏せている男が何を目的にしているのは明白だった。女性は血を流しながら、男の望むことを拒否しているのは明らかだった。

 となれば、出血も性描写もレイプも、文句なく成立する。推測が苦手なアルゴリズムも、直接的に描写されていれば、かなりの精度で映像を判別できる。

 映像を一通り見終わってから、最後に「捜査の必要あり」というチェックボックスにチェックを入れた。

 昔、穢れたコンテンツを人目に触れない環境で密かに楽しむことが許されていた時代には、屈折した人間の欲求に応えるために、そういった内容の映像コンテンツがフィクションとして作られていたという。その時代に作られた映像コンテンツは今でもコピーされてネットに流れ出すことがある。そういった類のコンテンンツであれば、監視官としては削除に指示を出すだけで、警察に追加の捜査を要請することはない。

 けれど、今回の映像は手ぶれがひどくて見にくく、どう見ても素人が撮った作品だ。鑑賞用に作られたものとは思えないし、男女の間に合意があって撮影されたものにも見えない。それに映像の画質が十数年前とは比べものにならないほど高精彩なもので、この動画が最近撮影されたものであることを示している。

 つまりこの動画に収められた行為は最近行われたものであり、まだこういったコンテンツが規制される前の時代に、エンターテイメントとして撮られたものではない。

 最近犯罪を犯した人間が、自分の行為を見せびらかして、さらなる快楽を得るために、映像をネットに公開したのだろう。それをブリーチのネット走査システムが探し出し、ぼくのもとへ審査対象として回した。そんなところだ。

 審査対象コンテンツに犯罪の疑いがある場合、監視官は警察に捜査を依頼する。これも監視官の役目の一つ。自分たちの報告がどれだけ警察の役に立っているのかは知らないけれど、ボタン一つで社会の浄化に貢献できる可能性があるのであれば、安いものだ。

 審査結果の送信ボタンを押して、ブリーチのサーバーに「このコンテンツは黒である」という旨の審査結果を報告する。これにより、日本国内をしているプロバイダ各社に、コンテンツへの接続切断要請が行われる。プロバイダはその要請に従い、対象コンテンツのピュアネットへの接続を切る。

 接続対象となったコンテンツは記録のためにブリーチのサーバーに保存される。

 コンテンツを保存するのは、なるべくネット監視官の手をわずらわせることなく、審査を行うためだ。一度削除対象コンテンツに指定されると、全く同じコピーをネット走査システムが発見した場合に、ネット監視官の審査を必要とせずに削除される。こうしてネット監視官の負担を減らしていく。

 とはいえ、ネットに穢れたコンテンツを上げる拡散者と呼ばれている犯罪者たちも対策は考えていて、全く同じコンテンツをアップロードすることはほとんどない。似たようなコンテンツでも、ところどころにノイズをかけたり、シーンを入れ替えてみたりと加工を施すことで、穢れたコンテンツの寿命を伸ばそうとする。

 融通の利かないネット走査システムは、そんな単純な撹乱にも対応しきれず、違うコンテンツであると判断してしまう。ブリーチの技術部門はこの撹乱に対応しようと必死だけれど、彼らには守るべきことが多すぎる。システムに融通を利かせることは可能だが、利かせすぎると今度は検閲だと批判される。縛りのない穢れたコンテンツの拡散者たちのほうが有利な状況にあるのは間違いなかった。

 そういう事情もあって、ぼくらネット監視官は、新しい穢れの他に、過去に削除した穢れと見た目にはほとんど変わらないバージョンを何度も見る。

 昔、消したはずの穢れに再会したときの気分は最悪だ。自分の努力が報われていないような、やりきれない気分になる。

 ピロン。

 ぼくの出したコンテンツの接続切断申請が、システムに受理されたことを知らせる音が鳴る。同時に、拡張現実の視界上に新しいウィンドウが開き、ブリーチの社内開発ソフトの一つ、 “カンダタ” が起動する。ネットに漏れ出した穢れの源泉を突き止める権限が、ぼくに付与される。

 カンダタを使うことで、監視官はインターネットに張り巡らされたクモの糸をたどることができる。穢れたコンテンツをアップロードする拡散者は、アップロードしたコンテンツ以外にも多くの穢れを溜め込んでいるものだ。だから、審査済みの削除対象コンテンツを起点にして、それが通ってきた道のりをたどれば、穢れの巣窟に行き着くことができる。

 画面上に幾重にも枝分かれした糸が現れる。今いる場所は、穢れたコンテンツが見つかった場所。ここから糸を辿って行き、穢れの巣窟を目指す。

 カンダタによって視覚化されたネットワークをしばらく眺めて、この穢れを拡散したのは素人だと判断する。偽装工作がされてはいるが、ないよりはあったほうがいいというような、お飾りていどのものだ。辿ってきたネットワークの構造は単純で、経験の浅い拡散者の仕業であるとわかる。

 緊張の糸を少し緩める。

 時刻は午後一時半を過ぎたところ。一日の中でいちばん集中力がなくなる時間帯だ。そんなときに、穢れたコンテンツをアップロードする常習犯、ぼくらがシリアルスプレッダーと呼ぶ拡散者が作ったネットワーク構造が現れたら、正直、それをうまくたどれる気はしない。彼らが作るネットワーク構造はとても複雑に絡み合っていて、正しい道のりを辿るには相応の集中力を必要とする。

 カンダタを使って、コンテンツがたどってきた道のりをさかのぼる。一目では、枝分かれの数が多いように見えるが、よく見ればほとんどがフェイクで、実質的に重要な糸は一本だった。経路は長いが、これなら何も考えず走り続けるだけでいい。

 二十分ほどして穢れの巣を突き止めた。構造が単純だったから追跡は簡単だった。

 穢れの巣は個人所有のサーバーだから、セキュリティがかかっている。セキュリティを突破して、内部に保存されているコンテンツを検分することが、監視官の仕事の腕の見せ所だ。

 セキュリティの構造を感覚的に把握し、必要な電子鍵の形を思い浮かべる。感覚なんて抽象的なものは言語化することができないから、プログラムで機械的に行うことは不可能だ。だから、監視官のような人間の力が必要となる。

 目の前のセキュリティに合致する鍵を作成するために、“ロックアーティスト” を起動すると、拡張現実の視界いっぱいに真っ白な空間が現れた。

 その空間にはただ一つだけ、三メートルほどの高さの門がある。門は空中に、地面から三十センチほど浮かぶようにそびえ立っていて、見るからに頑丈な錠前で閉じられている。ロックアーティストによって視覚化されたセキュリティだ。錠前を外し、門を開けば、穢れたコンテンツの流出元のサーバーへとアクセスをすることができる。

 ロックアーティストを操作して、どんな種類のセキュリティなのか感覚をつかむために、門に単純なデータを投げつける。

 投げたデータが錠前にぶつかって、錠前が揺れる。水面に張った油膜のような虹色の波紋が現れて消えた。

 錠前の振動と、波紋の色彩のパターンから、セキュリテイの構造を感覚的に把握する。

 何ということはない。標準的なセキュリティだ。これなら似たようなテンプレートがいくつもある。

 ロックアーティストのアーカイブの中からテンプレートを呼び出す。多少の修正は必要だろうが、一から作り上げるより、ありものを作り変えたほうが早い。

 呼び出したテンプレートを鍵穴に入れると、きちんと奥まで入った感触がある。ここまでは想定通り。期待を込めて鍵を回転させてみるが、どこかで引っかかる感触があり、最後まで回らない。

 追跡のしやすさ、セキュリティの単純さから考えて、このストレージの所有者は、拡散の初心者だと予想していたが、一般的なセキュリティをそのまま使うほどではなかったようだ。

 差し込んだ鍵を取り出して形状を修正する。鍵を回したときの引っかかりの感触をもとに、概形を整える。セキュリティにぴったりの鍵を作れることはめったにないけれど、細かい部分はソフトウェアが補正してくれる。だから多少の間違いがあっても問題はない。人間とソフトウェアの共同作業だ。

 コンピューターは、手順を順番に消化していく能力には長けている。しかし、コンピューターの計算速度がいくら高速でも、星の数ほど組み合わせのある問題を総当たりで解くのは現実的ではなく、膨大な計算時間を必要とする。

 だから解答の候補が無数にある問題は、人間とコンピュータの共同作業で行うと効率的だ。推測の得意な人間がどのあたりの候補が解答になりそうかあたりをつけ、コンピュータが計算する領域を絞り込んでやる。この絞り込みによって、コンピュータの負荷は軽くなり、すべての候補を総当たりでコンピュータに試させるよりも早く、答えにたどり着くことができる。

 例えば今回のセキュリティの解錠の場合、数兆の鍵の組み合わせがあるとしても、正解に近いと考えられる鍵は数百程度しかない。それなのに、コンピューターにすべてを任せ、数兆の組み合わせを順繰りに試していては、正解に辿りつくまでに日が暮れてしまう。一日が終わるどころか、宇宙の寿命が尽きてしまうかもしれない。だから、正解に近い数百の鍵を人間のほうで推測ができるのであれば、コンピュータにはその数百だけを試させれば良い。

 概形の決定は人間に、細部の修正はコンピュータに。

 一からマジメに取り組むコンピュータと、隙あらば楽をしようと考える人間のこのような共同作業はもともと、増え続ける多種多様なハッキング行為を検知するために、アメリカの電子決済サービス会社が取り入れたのが最初らしい。

 政府からネット浄化業務を委託されているとはいえ、セキュリティを勝手に解析して、他人の持つデータに干渉する権限を持つブリーチの行為は、ハッキング行為と同じではないかと批判されることがあるが、ハッキングを検知するために生まれた仕組みが、ハッキングまがいのことを行うために利用されているというのは、皮肉が効いているように思う。

 鍵の修正を終え、再びセキュリティの鍵穴へ差し込む。少し引っかかりを感じたのもつかの間、今度はソフトウェアの補正機能がうまく働いて、鍵を回転させている間に微修正される。

 錠前が開き、下に落ちる。

 地面に衝突する前に、錠前は七色に輝く粒子になって消えた。

 質量を感じさせるゆっくりとした動きで扉が開く。

 扉の向こうに保管されていたデータたちが露わになる。ロックアーティストの機能によってオブジェクト化されたデータが画面上を飛び回った。それを検知したブリーチの評価ソフトが、まだ無色透明なコンテンツに色付けをしていく。

 ぼくは審査対象コンテンツの中から、評価ソフトウェアが特に黒いと判断した七つを選んで、ウィンドウを開いた。それら一つ一つを計三分ほど眺め、全てに接続切断対象という審査結果を下す。黒に近い灰色だったコンテンツがどんな光をも吸い込む漆黒に染まった後、粒子になるまで分解され、煙のように空に昇って消えた。炭になった木片が風化し、散り散りになっていくさまを早送りで見ているようだった。

 煙の行き着く先はブリーチの保管庫だ。送り込まれた穢れたコンテンツは、そこにこの世の終わりまで閉じ込められることになっている。

 作業に区切りがついたところで、ロックアーティストからログアウトする、

 ぼくは大きく息を吐いた。

 表示を見ると、ぼくが解放したサーバーにあったコンテンツの数は千をゆうに超えていた。それに対し、処理した件数は七つ。

 残りのコンテンツを審査する気になれず、ブリーチ監視課の業務管理サーバーに全てを投げる。単純に疲れていた。ネット走査アルゴリズムが持ってきたコンテンツの審査から、追跡、解錠。十分に仕事をしたはずだ。今、サーバーに送ったコンテンツの審査は、監視課の別の誰かの仕事になる。

 少し休憩でもと思い、椅子から立ち上がる。

 ワークスペースから顔を上げると、ビルの十一階を占領するブリーチ監視課が一望できる。今は三十人ほどの監視官が、業務についている。

 ネットの穢れは世界中で、二十四時間あふれ出す。だから、監視官も三交代制で、二四時間の監視体制が敷かれていた。監視官一人ひとりにワークスペースが与えられているから、フロアに用意されたワークスペースの数は百ほどある。今は八時から十六時の第二シフトだ。

「何かお飲物をお持ちしましょうか?」

 椅子から立ち上がって伸びをしていると、いつの間にか近くに来ていた給仕係の女性型アンドロイドが声をかけてきた。

 監視課に最近導入された最新バージョンのアンドロイド。

 最新バージョンといっても、そこに積まれた人工知能は開発当初とほとんど変わらず、進歩したのはより人間らしく見せるための、皮膚や髪の質感といった、外見上のものだけだと、颯太が言っていた。

 扇情的にならない程度に控えめに開いたアンドロイドの胸元には、人工皮膚の下からうっすらと透けるようにして、セレンディップのSのロゴが光っていた。

 より人間らしいアンドロイドを。

 そう言って人間性を追求するセレンディップは、大量生産品であるアンドロイドでも外見が全て同じになることを許さない。人種、民族、性別、その他諸々の特徴で三十カテゴリに振り分けられた計二十万人を超えるサンプルの中からランダムに五人を選び、顔や体型の三次元データを重ね合わせる。そうすることで、アンドロイドは全て異なった外見で、なおかつ一定の外見水準を満たした状態で生産される。

「お飲み物をお持ちしましょうか」

 アンドロイドはもう一度言った。

「いいよ。自分で取りにいく。少し休憩したいんだ」

「わかりました」

 アンドロイドは人間と変わりのない自然な声を出し、離れていった。ぼくに声をかけてから立ち去るまで、とても自然な動作だった。

 その立ち居振る舞いがあまりに人間らしいから、あのアンドロイドに何か腹づもりがあって話しかけてきたのではないかと思ってしまう。たとえば、「飲み物を持ってきましょうか」と話しかけることで、ぼくにデスクから離れず、仕事を続けるように言外の圧力をかけにきたとか。

 そんなことを想像しながらも、その圧力に屈することはなく、仕事に勤しむ同僚たちの脇をすり抜けて、ぼくはフロアの中央に設けられたガラス張りの休憩室に向かった。

 歩きながら同僚たちの端末の画面を見ていくと、みんな熱心に穢れたコンテンツの審査に取り組んでいるようだった。

 みんな楽しそうに仕事をしている。

 目をらんらんと輝かせて。

 ときにはこみ上げる興奮で体を震わせながら。

 人が刺されて傷口を抉られている場面を、恍惚とした表情で見つめる同僚もいた。

 その中を、沈んだ表情をして通り抜けるぼくは、きっと少数派に違いなかった。

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