第9話 ガラケー

 俺はこの後家に戻ろうとしたが、せっかくこっちに来てくれたのだからご飯をごちそうすると言われたので俺はその言葉に甘えてご飯をごちそうしてもらうことにした。


「いやあ、悪いっすねごちそうになっちゃって。」

「いやいやいいよ別に。いつも料理係が作り過ぎちゃって困ってたぐらいだからさ。」


 そんな話をしていると一人の女性がこちらの方に歩いて来るのが見える。


「な、なんだ……」


 その女性は三人の男を縄で縛りそれを引き釣りながら歩いていた。俺は思わずその女性を思わず二度見してしまう。


「あ、夜叉ちゃーん!!おーい!!今日は『黒』、三人も捕まえちゃったよー。」


 『黒』を捕まえた……ってことはこの縛られてる奴らは『黒』なのか?


「お、花梨ご苦労だったな。」


 夜叉がそう言うと花梨と呼ばれていた女性はうれしそうに

「いやあそれほどでもあるかなえへへへ……」と言いながら笑った。


「いつもすまないな。この任務を頼めるのは花梨しかいないからな。」

「あたししか……いない……きゅうん!!ありがとうございます!!」


 なんか変わった人だなこの人。


「あれ、夜叉ちゃんもしかして隣にいるこの人は……マリリンの彼氏君かい?」

「いや、彼氏ではないんですけど……」

「むむむ……」

「ち、近いんですけど。」


 この女性は俺の顔をまじまじと見てくる。そして、一言


「大丈夫……男は顔じゃない!!度胸です!!」


 初対面にもかかわらずいきなり心臓をえぐってきた。


「花梨、失礼だろ……」

「え、なにがですか?」


 その女性はキョトンとした顔でそう言った。どうやら悪気は一切ないみたいだ。


「すまないな。こいつはなんていうか……まあ、悪い奴ではないんだ。」

「ま、まあそうでしょうね……わかります。」

「自己紹介がまだだったね。あたいは遠山花梨とおやまかりんパラディンの戦闘担当してます。よろしくね切間っち!!」

「よ、よろしくお願いします。遠山さん……」


 なんというかこの人……正直苦手だ。初対面なのにやたら距離感が近い。


「この『黒』の人達は遠山さんが一人で?」

「そうなんだよ。すごいでしょ。すごいよね!!」

「ははは……そうっすね。でもどうしてこのいかにも普通な感じの人が『黒』のメンバーって分かったんですか?」

「ふっふっふそれはだね……これを使ったんだよ!!」


 そう言って遠山さんが鞄から取り出したのはこのスマートフォンが普及した今の時代、使っている人はほとんどいないであろうガラパゴスケータイ、通称ガラケーだった。


「一見ただのガラケーにしか見えないこれ。なんと、なななんと悪魔武器なんです!!」


 ……これも悪魔武器なのか……武器?


「この悪魔武器の能力は殺意のオーラを感知すること!!範囲はこの街全体!!これさえあれば一般人面してこの街に来た『黒』どもをパパパっと見破れるわけなんです!!」

「お、おお……そうなんすね。」


 ……誰が敵なのか分からない今の状況このガラケーの能力はとてもありがたい。


「ただし!!この能力には弱点があります!!なんだか分かりますか?」

「え、ええっと……なんですか?」

「悪魔武器を持っている人間の殺意は感知できないということです。まあ、悪魔武器を持ってる人間なんてそういないから合ってないような欠点なんなんだけどね!!」


 悪魔武器を持っている人間は感知できないか。ん?ということはNo14は……。


「そ、そうっすね。」

「普段はこの近くの廃ビルからこの街に黒がいないかどうか常に監視してるんで、気軽に会いに来てね!!」

「……あの。」

「なんだい?」

「ロープ。」

「あっ。」


 遠山さんが俺達と話している隙をつき『黒』の男三人が逃げ出していた。


「けっ、何、くっちゃべってんだよよバーカ!!」


 『黒』の三人はそう雑魚みたいなすて台詞をはきながらも必死こいて逃げている。


「やばいですよ、早く捕まえ……ってえ?」


 俺が遠山さんの方を見るとそこには彼女の姿はなかった。ゆっくり前を向くと……


「あっぶな、ごめんね夜叉ちゃんうっかりしてて……でもすぐに捕まえたからノーカンだよね、ノーカン。ははは……」


 『黒』の三人はすでに遠山さんに捕らえられていた。本当に一瞬だった。目にもとまらぬ速さとはまさにこのことをいうんだろう。


「い、一瞬で……あれも悪魔武器の力なんですか?」

「ああ、彼女が履いている靴。あれは花梨専用の悪魔武器、速度増強シューズ『神速』その名の通り自信のスピードを倍加させる能力を持つ。それに加えて花梨は50m走5秒台っていう驚異的な脚力を持っている。」


 50m走5秒台って……男子のトップアスリートレベルじゃないねえか。とんでもないばけもんだぞこの人。


「よいしょっと……じゃあ私こいつら運ばないといけないから。またね!!」


 遠山さんはそう言うと再び『黒』の男達を引き釣りながらその場を去っていった。








 

 遠山さんと分かれた後、俺は食堂でご飯を食べていた。


「いやあ、本当に美味いですねここのご飯。毎日食べにいきたいぐらいですよ。」

「そいつはよかった。さ、さ好きなだけ食べてくれ。」


 俺はお腹をすかしていたこともありバクバクと飯をたいらげる。


「……そういえばさっき遠山さんが言ってたことなんですけど、あの眼鏡があれば『黒』の奴らがこの街に『黒』が来たらすぐに分かるんですよね。」

「ああ、そうだな。」

「だったら学校にいる『黒』、No14の正体もすぐに分かるはずですよね。でも、それが分からないってことはもしかして……」

「No14は悪魔武器を所有している可能性が高いってことだ。」


 あんなやばい武器を敵も持ってる可能性があるのか……味方が持っていたら心強いが敵が持っていたらかなり面倒なことになりそうだ。


「実際、俺の知る『黒』のメンバーにも悪魔武器を所持してる奴がいるからな……珍しいものであることは変わりないが他の『黒』が持っていてもおかしくはない。」

「……そもそも悪魔武器って一体なんなんですか?何のために作られたものなんですか?パラディンはどうやってこの銃とかトランプとかてに入れたんですか?」

「正直、この武器のことはあまりよく分かっていないんだ。銃やトランプは神宮家が所有していたものだが、それに関する情報があまりにも少なく、誰が何のために作ったのか、なんで悪魔武器と呼ばれているかすらわからない。」


 本当に謎の武器って感じだ……


「ただ、これだけははっきりしている。君に渡したその銃馬鹿げた銃フールガンは、きっと君のことを守ってくれるだろうと……。」


 この得たいのしれない武器が俺を守るねえ……



 

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