第2話 ラブコメ?
銃などを武装し顔にマスクをかぶった謎の二人組が突然家の中に入ってきた。。二人は俺の叫び声を聞きつけて俺がいる部屋の方へと向かってくる。ゆっくりと確実に……
俺の部屋は廊下の一番奥にあるのだが、二人は他の部屋には見向きもせずにこっちに向かってきているのが音で分かる。何か小細工をしている暇はない。俺は部屋の鍵を閉めた後すぐに部屋の窓から外の庭に飛び出した。庭から家の外に出ようとしたのだが……
「動くな……」
声をする方を振り向いてみるとさっきの武装した二人と同じ格好をした男?がこちらに銃口を向けている。この異常な状況に俺の頭はただひたすら困惑していた。
「よし……そのままこの車に乗ってもらうぞ。」
そう言われるて俺は家のそばに黒塗りの車が駐車している。この車で俺をどこに連れて行く気なんだ……疑問や不安が俺の脳内を駆け巡る。だが、今の丸腰の俺にはこいつの言うことを聞く以外の選択肢はない……俺は仕方なく言われたとおり車に乗ろうとする……が、突然男の動きが止まる。
「……うっ……ぐはっ」
武装した男はどういうわけかその場に倒れ込んでしまった。
「こ、今度は一体何なんだ?」
男を見てみると背中に何かが刺さっているのが分かった。これは……トランプ?トランプが彼らの防弾チョッキを貫通し突き刺さっている。俺はそのトランプをまじまじと見ていると一人の少女が俺の目の前に現れた。
「……大丈夫だった?」
「は、はい……」
……ここら辺では見かけない少女だ。彼女が俺のことを助けてくれたのだろうか……
「え、ええとその……状況が全くと言って良いほど読み込めないんですが……あなたが助けてくれたんですか?」
「……はい、このトランプで。」
……本当に訳が分からない。銃を武装した強盗が家に押しかけてきたかと思えば、突然謎の少女がトランプで強盗を撃退して……本当に訳が分からない。
「おい、No5364が倒れてるぞ!!」
「誰がこいつを……っていうか、あそこにいるの例の野郎じゃねえか!?それともう一人こいつはまさか……」
さっき家に入ってきた二人組が外に出てきた。二人組は俺と女の方に銃口を向ける。
「あ、あの……まさか撃ったりしないですよね?ね?」
「ああ、お前らがおとなしく捕まるって言うなら撃ったりしねえよ。」
これはまずい……こんなところでうかうかしていないで、早く二人で逃げるべきだった。さすがに銃を持った二人に真正面から対抗するのは……
「……私に銃口を向けるなんて、いい度胸してるわね」
少女は二人の男たちの忠告を無視して彼らに向かっていく。
「ば、馬鹿こっち来るんじゃねえ!!本当に撃っちまうぞ!!」
男の一人がそう忠告するものの少女は足を止めようとしない。
「来るんじゃねえって言ってるだろうが!!」
男がそう言った次の瞬間静かな夜の町に、パン!!と言う音が鳴り響く。俺はすぐにその音が銃の発砲音であることに気がついた。撃ったんだ……あいつ、銃をあの女の子に……
「へ、へへ……ざまあみやがれ!!」
「……遅いわね。」
「……!!」
少女の方にまっすぐ飛んでいったはずの銃弾はなぜか彼女には当たっていない。
「な、なんで?ちゃんと命中したはずなのに……」
「斬ったのよ。」
「き、斬った?」
「あんまりとろい弾丸だったからね。難しくはなかったわ……」
彼女の足下を見てみると俺の足下に真っ二つに切られた銃弾の破片が転がっている。しかも彼女が手に持っているものはさっきの男の背中に刺さっていたトランプじゃないか!?つまり彼女は飛んできた銃弾をトランプで斬った……に、人間技じゃねえ……。
「ば、化け物がこっちに来るなああああ!!」
男はさっきの光景を目の当たりにしたためか狂ったように発砲をし続ける。だが、その銃弾は全て彼女が持っているタロットによって全て切り刻まれ、彼女の体にはかすりもしない。こんな……こんな漫画みたいなことあるのか!!
「ひ、ひえええ……」
どうやら男の銃は弾切れになってしまったようだ。二人はこの少女の人間離れした動きを見て戦意喪失している。少女は戦意喪失した男二人に容赦なくトランプで斬りかかる。
「うっ!!」
斬られた男二人はさっきの男と同様にその場に倒れ込んでしまった。
「え?まさか、殺したのか……」
「そんなわけないでしょ、気絶させただけよ。まあ、その気になれば殺すことだって出来るけど。」
……冗談ではなさそうだな。それにしてもこいつらは一体何なんだ。強盗……にしてはこの拳銃といい、背中に背負っているライフルといい、着ている装備といい大げさすぎる。たかが、家を一つ襲うだけなのに……それに彼らの胸元にある黒く塗りつぶされた星のマーク、どこかで見たような……
「なあ、とりあえずこのことを警察に連絡した方がいいよな?」
「警察はだめ。奴らにもみ消される。」
「え?もみ消されるって……そんなまさか……」
「詳しいことはこの中で話すからとりあえず来て」
彼女が指さした方向にあるのはずいぶん前から空き家になっていた隣の一軒家だった。そういえば、一週間前に誰か引っ越しに来てたな……挨拶しようとしたけどずっと家が留守でどんな人か分からなかったけど、まさかこんな意味分からん少女がそうなのか?
「い、いや助けてくれたのはありがたいんだけどさ……突然家の中に入れって言われても……家のドアも壊されちゃってるし、さすがに今、家を留守にするのはさすがにまずいだろ……」
「家のことは大丈夫よ。他の奴らに何とかさせるから」
「ほ、他の奴らって?」
「とにかくそういうことも含めて説明するから家に入って!!これは命令、拒否したら今、この場で……私はあんたを殺す。」
そう言うと彼女はさっき持っていたトランプを俺の方へ向けた。……ここで拒否すればマジでやられると俺の第六感は告げている。
「わかった!!わかった言うこと聞くからそのトランプをしまってくれ!!」
「初めから素直にそう言えば良いのよ」
俺は半ば強引に彼女の家へと連れ込まれた。女の子の家に招待されるのって何年ぶりだろうな……。本来こういうのって、嬉しさと恥ずかしさが相まってドキドキしてしまうものだが、今の俺はそんな気持ちにはなれない、むしろ何をされるか分かったもんじゃないとハラハラしている。
そして、彼女に彼女の部屋らしき部屋へと案内された。ここで俺がらしき部屋と主張するのには理由がある。見た目はいかにも女子の部屋という感じなのだが……なんというか生活感が無い。まだ越してきて一週間しか経っていないからなのか、いやそれにしても……
「なあ、お前本当にこの家に住んでんのか?」
俺はそう質問しようとした。だが、次の瞬間その質問を無に帰すような現象を俺は目撃する。
彼女が部屋の机を開けてその中からタブレット端末を取り出した。彼女が8桁のパスワードを入力すると同じ部屋にある本棚がゴゴゴと音を立てて動く。そして、目の前にエレベーターが現れた。
「!?!?!!?」
状況が飲み込めない。だがそれは現実に起きている。こんなスパイ映画みたいな世界が目の前にある。
「なに口だらしなく開けてるの?早くエレベーターの中に入って。」
「いやいや、入れと言われても………こ、こんなのおかしいだろ……」
「おかしいからなんなの?もうすでにあなたにとってはおかしいことだらけでしょ。いい加減になれなさい。」
「え、えええ……」
もう俺は半分やけくそになってエレベーターに乗り込んだ。ドアは閉まりエレベーターはそのまま下に下にと降りていく……
あれ?これ近未来系のバトル物の話だったか?つい一時間前まではラブコメしていたはずなのに……
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