第52話 レイド隊
「よ!元気にしてた!」
カイルの買い物に付き合って色々と露店を見て周っていると、フィニーに声を掛けられた。
「あれ?その子は?」
彼女は俺の横にいるカイルに気づき、訪ねて来る。
「ああ、この子はカイル。ちょっと訳ありで。暫く預かる事になったのさ」
「へぇ。そうなんだ。あたしはフィニー。宜しくね」
「カイル・モッサです。宜しくお願いします」
フィニーの軽い挨拶に対し、カイルは礼儀正しく返した
これではどちらが子供か分かった物では無い。
まあ彼女もまだ16なので、子供っぽいのは仕方ないと言えば仕方ない事なのかもしれないが。
「所でフィニーはこんな所で何をしてるんだ?」
「買い出しよ。そろそろ一回パンデモニウムの下見に行くって事で、色々とね」
「へぇ。神器はもう扱えるようになったのか?」
「ばっちり!と言いたい所だけど、なかなか完璧にって訳には行かないのよねぇ」
レイド達は既にグレートドラゴンを討伐し終え、神器を手に入れていた。
もう2か月も前の事だ。
当然それには、俺もポーターとして同行している。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「散会しろ!」
レイドの指示で
彼らの戦列は前衛3人、後衛4人に配分されていた。
前衛がドラゴンの足止めをし、後衛の4人が魔法で攻撃すると言うスタンスだ。
レイドが赤い魔法陣に足を踏みいれ、グレートドラゴンの召喚を促した。
「撃て!」
グレートドラゴンが姿を現した所で、レイドが号令をかけた。
その掛け声に合わせ、後衛4人が一斉に魔法を発動させる。
但しそれは攻撃魔法ではない。
投擲系の魔法だ。
「いっけぇ!」
物体を飛ばす魔法は通常石などを飛ばす事に使われるのだが、上手くコントロールすれば矢を飛ばす事も出来た。
そして彼女らが飛ばしたのは、
後衛の4人はそれを纏めて複数本魔法で飛ばす。
その威力はグレートドラゴンにも通用する物で、魔法で飛ばされた矢はその硬い鱗と皮膚を貫き、深々と突き刺さった。
「ぐおおおおぉぉぉぉ!」
「「ノックバック!」」
出現と同時に自身の肉体に突き立った矢の痛みに驚き、グレートドラゴンは雄叫びを上げる。
前衛の三人はその隙をついて魔法を放つ。
但しこれも攻撃用ではない。
目的は相手を吹き飛ばす、ないし仰け反らせる事だった。
ドラゴンは高いフィジカルに加え、魔法に高い耐性を持つ種族だ
当然上位種であるグレートドラゴンも同じ特性を持つ。
その為、半端な魔法では真面にダメージを通す事は出来ない。
そこで彼らが選んだのが、
効果の薄い攻撃魔法を使うのではなく、投擲系の魔法で矢を飛ばしてダメージを積み重ねる。
地味な作戦ではあるが、確かにそれは能率的で有効な戦法だ。
これはかつての攻略パーティー、探索者がグレートドラゴンを狩るのに使った手法でもある。
レイド達はそれを踏襲し、グレートドラゴンを討伐する積もりの様だった。
まあ探索者は途中で矢が切れて、最終的には近接戦で倒してるわけだが……
そのせいで探究者は多くの死傷者を出してしまっている。
だがレイド達にその心配はないだろう。
彼らは10か月近くの時間をかけて竜宮で竜を狩り、十分な数の矢を用意しているのだから。
その総数500本。
流石にこれだけあれば玉切れになる事は無いだろう。
因みに矢は一本500グラム近くあるので、これだけで荷物が250キロの計算になる。
別に俺一人でも持つ事は出来たが、問題はサイズだ。
500本の矢は兎に角嵩張ってしまう。
流石に他と合わせて一人で持つと背嚢がとんでもない形状になってしまうので、今回は俺以外にも
一人は最近この仕事を始めた新人のポーター。
そしてもう一人は、中堅に位置するポーターだ。
2人とも初めて組む相手なのだが、中堅の方が頂けなかった。
道中何度も俺に絡み、敵意を隠そうともしない。
恨まれる様な事をした覚えはないのだが、全く困った物だ。
まあ実害はないので別にどうでもいいが。
そんな事を考えていると、急にそいつに声を掛けられる。
「ミテルーさんは、今回はブルってないんすね」
その言葉を聞いて、俺は眉根を顰めた。
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