第42話 許可

「成程な。王に会う為にダンジョン攻略をすると言っていたが、要は俺に会う事が目的だった訳か」


「その様です」


レムの口から報告を聞き、スーメリアの目的を理解する。

どうやら彼女は魔王を倒した英雄が異世界人であると判断し、現王であるサトゥに居場所を聞くため、この国へとやって来ていた様だ。


当然そんな質問にサトゥが真面に答える訳もなく。

既に亡くなっていると返しているのだが「異世界人が死ぬわけないじゃん」と一蹴され、しぶとく粘られ仕方なくレムに連絡を寄越して来た訳だ。


「どうされますか?始末されるのでしたら私が――」


「いや、会うとしよう。態々ダンジョン迄攻略して訪ねて来てくれたんだ。それ位してやっても罰は当たらないだろう」


あの後、彼女はダンジョンを完全攻略している。

まあ人間用に作ったダンジョンなのだから、異世界人である彼女なら突破出来て当然だった。


「大体、お前じゃ勝てないだろ?」


「残念です」


ダンジョン最奥には、レムが化けたレムリア・クイーンが待ち受けている。

スーメリアはしこたま手加減したまま、それを容易く撃破していた。

勿論レム側もダンジョンボスとして機能する様に能力を大幅に制限されて――本来の力だと強すぎて人間では絶対勝てないので――はいるが、その差を鑑みてむレムでは彼女には勝てないだろう。


まあそれ以前に、敵対している訳ではないの始末する理由事態無いしな。


「例の場所に行くから、連れて来る様にサトゥには言っておいてくれ」


別に直接遠距離通話メッセージで伝えても良いいのだが、俺から話しかけるとサトゥが無駄に長々と挨拶して来て面倒臭いので、レムに丸投げしておいた。


「残念です」


何が?

意味不明だが、まあ了承と受け止めていいだろう。

多分。


「じゃあ頼んだぞ」


転移魔法を使い、特殊な謁見の間へと向かう。

此処に出入り口はない。

転移魔法やスキルでのみ出入りできる場所だ。


「一応、座って待っておくか」


部屋の奥には豪奢な玉座があり、その周囲には贅沢な調度品類が置かれている。

そういった類のものは別に必要ないと言ったのだが、レムが勝手に用意してしまっった物だ。


「何だこれ?」


玉座横のテーブルにに置いてある、見慣れない陶器の人形を手に取る。

それは卑猥なポーズをした、レムの姿をした人形だった。

俺はそれを無言で地面にたたきつけ、粉々にして破片は魔法で遠くに飛ばす。


「これから客人が来るってのに、こんな物がを置いてあったら俺が変な奴だと思われちまうだろうが」


他にもないかと、周囲を注意深く見渡す。

すると、テーブル以外にも同じような人形がいくつもあちこちに置かれている事に気づいた。


「一体いつの間に……」


俺はそれらを無言で取集し、一つ残らず異次元に吹き飛ばしてやった。

あのアホには後で苦情を言わねばならないだろう。


「やれやれ」


パンパンと手を叩き、片付けが終わった俺は玉座に身を沈めた。

サトゥがスーメリアを連れて来るにはもう少し時間がかかる――謁見中にいきなり転移で連れて来る様な真似は出来無いので。


暫くここで待つとしよう。

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