第4羽 5人目

「なんで信温がここに……」


「言ってなかったっけ? 俺もここ受けてたんだよ」


と信温は笑いながら言った。

 確かにここは俺たちが卒業した中学校からめちゃくちゃ離れているわけではないので、知り合いがいてもおかしくはない。

 ではなぜこんなに驚いているのかというと……


「お前卒業式の日に泣きながら別れ惜しんだよね?なんでこんなあっさり登場しちゃってるの!」


 そう、あの日俺らは泣きながらカッコつけて"また会う日まで"とか言って再開を誓っちゃったりした。

 だからもう長い間会えないのかと思っていたのだが、それがたったの1ヶ月で再開……

 ——あんなこと言った自分が恥ずかしい。

 そう思いながら顔を赤らめていると、紗黄姉が信温に話しかけた。


「君、蓮くんの友達なんだ〜。部活は入ってる?」


「入ってませんよ。この学校いい部活なくて」


「じゃあバドミントン一緒にやろうよ〜」


 そう言って紗黄姉は信温の『いい部活ない』を聞いてなかったかのような勢いで迫った。

 こんなに紗黄姉に迫られたらさすがに信温もメロメ……じゃなくて入りたくなるだろうと思っていた。

 信温は俺の顔を見た後、少し考え込んで


「まぁいいですよ」


と言った。

 答えは予想通りOKだった。

 でも信温は紗黄姉に言われたからではなく、紫織に興味があるから入ったように見えた。

 終始紫織のことを見つめていたから。

 ——こんな鬼のどこが良……


「イッタッ!」


「また失礼なこと考えましたよね? 次はぶっ飛ばすって言いましたよね? 便器に顔面突っ込みますよ」

 と蹴りながら言ってきた。

 ——本当にこえ〜。まじで信温こいつのどこがいいの? てかこれで心を読まれたのは今日だけで2回目だよ。メンタリストのDa◯Goもびっくりだよ。

 と思いながらもさすがに便器に顔がハマったりして一生便器と共に生活することになったら困るので、逃げようと寮に向けて走りかけた時、信温が


「かわいいな」


と小声で言った。

 走りながらでよく聞こえなかったが確かに言っていた。



 新入部員が入ったのはいいが……これからの部活が心配だ。







 あの後、便器まで追い込まれかけたが、無事に走って寮に戻ってくることができた。

 説明していなかったが、この学校は全寮制で、俺も数日前から寮に入っている……のだが


「なんで俺の荷物がなくなってるんだよ」


 1人なのについつい声が出てしまった。

 それもそのはず、部屋はすっからかん。

 残されていたのは畳の下に隠しておいたエロ本だけ。

 ——これからエロ本だけで生活しろってことなのか……、しかも俺の好みじゃないのだけ残して……

 など混乱して訳のわからないことを考えていると寮のおばちゃんが話しかけてきた。


「君の荷物はさっき女の子が『部活寮に運ぶんだ〜』って言いながらどっかに持っていっちゃったよ」


「部活寮!?」



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