第2話

 コンビニ。入っていった。


「うわ、また分厚い胸板だこと」


「ええ。鍛えてますんで」


 店長。ドリームロールを名乗るのは、だいたいこのひと。小さい身体と、華奢な線。未成年だという噂がある。


 連れられるまま、奥の事務所に向かった。


 扉を開ける。


「あっ」


 レジ担当の店員。たしか、小間といったか。顔が、元の人相が分からないぐらいに腫れ上がっている。


「どうしたんすか」


「一匹狼に、噛まれました」


 噛まれた傷じゃないだろ。


「と、まあ、うちの小間遣いが使い物にならなくなってね。代わりにお願いしたいわけよ」


「てことは、荒事ですね」


「いえす」


 小間という男は、かなり腕が立つ。それが、ここまで完膚なき状態にされているとなると、かなりの困難な仕事。


 ぞくぞくしてきた。危険は、やめられない。


「あ、小間をぼこぼこにしたやつとは現時点で闘わない予定です」


「あ、そうなんだ」


 ぞくぞくが、消える。


「駅前の商店街とモール会社の対立って、分かる?」


「いえ。全然」


 プロテイン買うときぐらいしか行ってない。飯は、だいたい外食だった。


「そ。じゃあ、もうひとりが来たら説明するね。もう来ると思いますけど」


「ども」


 扉が開いて、男が入ってきた。


「うわ」


 自分の苦手な分類。明らかに、精神の強さで何かをする種類の男なのがわかった。目の光が、尋常ではない。


「紹介します。こちらが今回一緒に仕事をしていただく、山さんです」


「どうも。山です。普段は山に登ったり絵を描いたりしています」


「はじめまして。ハイリスクローリターンです。そのままだと長いんで、ハイリとかクローとか呼ばれています」


「ちなみに私はハイリちゃんって呼んでます。この筋肉と呼び名のギャップがいいのよ」


 山さんと呼ばれた男。こちらをじっと見る。


「初対面ではない、ですね。何度かここで会ったことがあるかもしれません」


「あ、そうですか」


 記憶にない。たしかに、ここでよく買い物はする。甘いものとか。


「おふたりにお願いするのは、商店街とモールのどちらか、あるいは両方の壊滅です」


「壊滅」


「商店街とモール、ってことは土地絡みですか?」


「山さんさすがに耳が早い」


「マネージャが地上げ屋と仲が良いもので」


「下ネタ連合ね。しかし残念なことに土地絡みではなく私怨です」


「私怨?」


「その土地の所有権を持っているおじいちゃんが、何者かにどくさつされかけております。それを実行した側を、あの小間の顔みたいにぼこぼこにしてください」


「つまり、それの実行が俺と」


「いえす。その筋肉が活躍するのを期待します」


「俺はなんで呼ばれたか分からないんですが」


「山さんはハイリちゃんの後ろでバックアップをおねがいします。ハイリちゃんは放っておくと勝手に危険な道を選択して自滅するので」


「わかりました。よろしく」


「よろしく」


 握手した。


 なんとなく、手の肉付きや爪のすり減りかたをさわって確認する。


「おっ」


「お?」


「ああ、いえ」


 かなり基礎体力がありそうだ。骨ばった手は、何かで保湿されているのか柔らかく暖かい。爪は温度変化のせいか変色している。登山のダメージだろうか。


「じゃ、早速任務開始ということでよろしくおねがいしますねお二方」



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