ハイリスク、ローリターン

春嵐

第1話

 危険な道を選ぶのが、好きだった。


 困難な道を、自分の力だけで、なんとかしていく。それに、よろこびを感じる。


 普段は、基本的に調練。自分の身体を鍛えたり、ときどき雇われて誰かの身体を鍛えたり。身体を鍛えるときの楽しさや気持ち良さは、伝播しやすかった。だから、一緒にいるだけで周りの人間のトレーニング効率は上がる。


 弱点は、心。


 精神の揺らぎを利用する分類の相手には、どうがんばっても勝てない。危険を楽しむという精神構造を利用されるだけ。


 電話。


『どうも。ドリームロールです』


 ドリームロール。駅前のコンビニ。同時に、ときどき依頼をしてくる客。


「なんでしょう」


『お仕事依頼してもいい?』


「ええ。なんなりと」


 身体を動かしている途中だったので、二の腕が少し熱を持っている。電話を持ちながら、氷を探した。机の上だっけか。


『じゃあ、うちに来てね。待ってますので』


「持っていくものとか、ありますか?」


『どれぐらいで終わるかわからない依頼なので、戸締まりだけ』


「はい。戸締まりね」


 なんでうちの戸締まりを気にしてるんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る