猫の真似
「愛奈、これつけてくれ」
家に帰ってきた海斗は、愛奈にあるものを渡した。
「これは……猫耳?」
白い猫耳のついたカチューシャだ。
可愛い愛奈には似合うだろう。
本当はピンクが良かったが、なかったので白だ。
「猫カフェで戯れることが出来なかったから、愛奈に猫の真似をして俺に甘えてきて」
「いいけど、悲しかったんだね」
愛奈に図星を言われ、海斗は苦笑いしか出来なかった。
確かに猫と触れ合えなかったのがショックで、愛奈に猫代わりになってもらおうと思ったのだ。
ちなみに猫耳は夏希の部屋にあったのを使用させてもらった。
勝手に使うことになるが、愛奈に使われれば夏希も文句ないだろう。
「じゃあ付けるね」
猫耳をつけた愛奈が「にゃー」猫の鳴き真似をする。
恥ずかしいのか少し頬が赤く染まっているが、思っていた以上に破壊力抜群だ。
本物の猫とは違い、愛奈は海斗のためにやってくれているので、何も感じないなんてあり得ない。
とても可愛く、海斗は思わず愛奈の首筋を撫でてしまう。
いきなりだったからか、愛奈は「ひゃん」と甘い声を出す。
声を聞きたくて撫でるのを止められず、あえてくすぐったくなるようにする。
「海斗く……あう……」
声が出てしまうのが恥ずかしいようで、愛奈は耳まで真っ赤だ。
将来海斗に抱かれることになればもっと声を出すことになるのだろうし、これくらいで恥ずかしがることはない。
「愛奈が弱いとこ発見だな」
首筋を撫でられたら誰だってくすぐったいだろうが。
「猫愛奈可愛い」
「ありがと、ひゃん……」
どうしても声を抑えることが出来ないようだ。
くすぐったそうしていても、可愛いと言われて愛奈は「えへへ」と笑みを浮かべている。
猫より愛奈の方がいいかもしれない。
そっぽを向かれることがないし、何より可愛すぎる。
「いっぱい甘えてきて」
「うん」
寂しい海斗を思ってか、愛奈は自分の頬を最愛の彼氏の頬に擦りつけてきた。
柔らかい感触や甘い匂いなどが海斗に襲いかかる。
「私は猫と違ってずっと海斗くんから離れないからね」
「そうだな」
愛奈が離れていくなんて想像すら出来ない。
むしろグイグイと近くに寄ってくるくらいだ。
「今の愛奈は猫なんだから語尾ににゃあってつけてよ」
「分かったにゃあ」
再びスリスリと頬を擦りつけて甘えてくる。
ずっとこのままでもいいかもしれない。
理性がもつかわからないが。
「いっぱい甘えるにゃあ」
いつもより高い猫撫声になっており、本当に猫が甘えてきているようだ。
海斗は腕を回し、愛奈の背中を優しく撫でていく。
するとゆっくりと目を閉じ、愛奈は撫でられるのを楽しんでいるよう見える。
「幸せ……」
好きな人とイチャイチャ出来るのだし、幸せと思わない方がおかしい。
特に愛奈は何年も海斗のことを思い続けていたのだし、完全に満足はしていなそうだが、今感じる幸せを味わっているようだ。
愛奈が完全に満足する時は、海斗に本物の告白された時だろう。
今の状況は愛奈が無理矢理作り出したのだし、本気で好きになってもらわないと意味がない。
教室で抱いてくれないと眠れない身体にされた言うくらしだし、愛奈は海斗に好かれるためなら何でもするだろう。
実際に付き合ってからの愛奈は、海斗お願いを一切断っていない。
「ずっとずっと一緒……」
晩御飯の準備をするまで、愛奈の猫の真似が続いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。