学園のアイドルのライバル
「テストの順位が貼ってあるな」
教室に着くと、黒板には先日行われた中間テストの順位が貼り出されていた。
五十位までの順位が貼り出されており、三位のとこに天野愛奈の名前がある。
他人の順位なんて全く気にしていないが、彼女である愛奈のだけは探してみた。
海斗の名前はギリギリ五十位に書かれてて、赤点は二人共に余裕で免れることが出来た。
「一位には中々なれないね。別に狙っていないけど」
上位二人は別格のようで、ほとんど満点に近い数字だ。
愛奈にとってテストの順位なんてどうでもいいらしく、全く気にしていない様子。
「今回も私の勝ちだったね」
「澪ちゃん」
驚くことに、学年首席は愛奈の親友である青井澪だ。
しっかりと一位のとこに澪の名前が書かれているから嘘ではない。
「バカキャラなのに学年首席とは……世も末だ……ガルル」
「バカキャラ? 私はバカじゃないよ。日本のどの大学も狙える秀才なのです」
えっへんと澪は胸を張る。
テストの順位が一位は自慢になるかもしれないが、別に天狗になるところではない。
全国一位ならかなり凄いのだが。
「後一点で全教科満点なのに。ケアレスミスするバカ? フシャー」
「ねえ、私は貶されてるの? しかも威嚇もされるし……」
海斗の言葉に怒りを覚えたようで、澪は「むうー……」頬を膨らます。
五十位の海斗にバカと言われたら怒りもするだろう。
怒っている澪を見て愛奈は「あはは……」と苦笑いをしているだけだった。
「とにかく私は愛奈のライバルなのです」
「恋の? シャー」
「違うよ。それじゃあ私が原田くんを好きみたいじゃない」
威嚇する海斗に、澪は必死に否定をする。
「いくら澪ちゃんでも海斗くんを好きになったらダメだよ」
「何で愛奈まで……」
威嚇してくる人を好きになるわけないでしょと思っているかのような視線を向け、澪は「はあー……」とため息をつく。
それに親友の彼氏を好きになるのは気が引けるだろう。
「私が言いたいのは学業のライバル」
「ケアレスミスする人がライバルで嬉しいの?」
「原田くんに言われたくなーい」
反応を見ると、ケアレスミスで満点を逃してしまったようだ。
テストの返却がされて、採点にミスがないか本人が確認してから順位が張り出される。
ミスで満点じゃなかったのが本当に悔しいらしい。
「俺は愛奈に聞いたんだが。ガルル」
「威嚇しなかったからそうなんだろうね」
怒りを通り越して呆れたような顔に澪はなっている。
「海斗くん、澪ちゃんと話しすぎだよ。私といっぱい話して」
今度は愛奈が「むうー……」と頬を膨らます。
彼氏が他の女性と話してたら嫌な気持ちになるだろう。
一方の澪は「私は貶されたのと威嚇されただけなのにな」と呟いている。
「悪いな」
肩を抱いて引き寄せ、海斗は自分の胸に愛奈の顔をうずめさせた。
すると自分の匂いをつけるかのように、愛奈はスリスリを頬を擦りつける。
小動物みたいで可愛らしく、頭を撫でらずにいられない。
「海斗くんのことが好きすぎるよ」
「俺も愛奈のことが好きだ」
好きという言葉が少しずつ興味を持って出たのか、それとも人前だから言った方がいいと思ったのか、海斗自身にもわからない。
ただ、好きと言われて嬉しいようで、愛奈は「えへへ」と笑みを浮かべる。
うっすらと目に涙を浮かべているのは、初めて海斗から言われて感無量になったからだろう。
「二人は砂糖を振り撒くのが好きなのかな?」
「砂糖を振り撒くとか掃除が必要なことをするわけないだろ。ガルル」
「ここで天然はいらないよ。原田くんはラノベ読むから意味わかるでしょ? バカップルがイチャついて甘い雰囲気を出すことだよ」
今の海斗と愛奈はバカップルにしか見られないだろうし、澪が言ってたことは間違いではないだろう。
「バカップルだって」
「そう見られて嬉しい。でももっともっと海斗くんに愛してほしいよ」
「そうか」
二人を見て、澪は「何なの……」とため息とついてから呟くのだった。
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