週明け面倒くさい

「怠いな」


 箱根旅行から帰ってきた翌日の月曜、海斗はそう呟いて学校に向かっていた。

 いつもの土日は引きこもっていることはほどんどで、ジョンが生きている時は散歩はしていたが長時間ではない。

 旅行から帰ってきた後の学校は面倒だと思うにだけだ。

 でも、あまりサボるわけにはいかないので、彼女である愛奈と手を繋ぎながら登校している。


「旅行に行ってたし疲れは残るよね」


 愛奈も疲れが残っているらしく、今日はいつもより起きるのが遅かった。

 旅行から帰ってきたら誰だって疲れるものだ。


「姉ちゃんが暴走したからな」

「そうだね。私の一番のライバル……」


 一緒に旅行に行った夏希が疲れた原因だ。

 愛奈ちゃんに抱きつきたいなどといっぱい言ったり、お酒を飲んでる時に実はブラコンだと告白してきて暴走しまくっていた。

 海斗の彼女である愛奈からしたら、一番警戒しなけれならないのは夏希だろう。

 今日から仕事があるから夏希は昨日の夜に帰ったが、これから週末の度に帰ってくるかもしれない。

 今のところお酒を飲んでいない時は海斗に愛情を向けていないが、愛奈からしたらいつ夏希がブラコンを炸裂させるか気が気でないだろう。


「海斗くんの一番は私だもん」


 登校中で人がいるのにも関わらず、愛奈は抱きついてくる。

 ピンク色の髪はただでさえ目立つが、抱きついたおかげで視線が海斗たちに集中してしまう。

 ほとんどが朝っぱらからイチャつくな的な視線で、嫉妬のオーラが凄い。

 学園のアイドルと言われるほどの美少女である愛奈とイチャついてるとこを見せられれば、大抵の男は羨ましいと思うだろう。


「心配性だな」

「だって……海斗くんにとってお姉さんは一番近い存在だもん」


 確かに家族だから近い存在ではあるが、姉に誘惑されても嬉しくない。


「大丈夫。愛奈は俺の彼女だろ」


 少しずつ海斗は愛奈のことを意識し始めている。

 こんなにも美少女から愛情を向けられているのだし、意識しない方が無理な話だ。


「うん。ずっと海斗くんといれるようにいっぱいイチャイチャするね」


 女性らしい身体付きのの愛奈は、海斗に自慢であろう大きく膨らんだ部分を押し付けた。

 朝から人前で大胆であるが、愛奈には海斗しか見えていないのだろう。

 人がいる教室で告白するくらいだし、もう愛奈には他の男子のことなんてどうでいいようだ。

 全く眼中にないくらいに、学校では他の男子と会話しない。

 誰にでも優しい学園のアイドルは演技だったのだし、今は海斗の側にいれるから本性を隠す必要はないと判断したのだろう。

 彼氏が出来れば他の人との対応が疎かになるのは仕方ないし、学校の男子は愛奈が演技しているとは思っていないらしい。

 海斗が羨ましすぎて他を考える余裕がないようだ。


「本当に俺のことが好きだな」

「うん。海斗くんのことしか考えられない」


 愛奈の脳は最早海斗一色と言っても過言ではないだろう。

 今は付き合っているとはいえ、海斗は一切好きと言っていないから恋人同士だがカッコ仮がつくのが妥当かもしれない。

 早く好きになってもらってもらいたいと愛奈は思っているだろう。


「小学生の時から俺のことを考えてた?」

「うん。いつも海斗くんのことが頭から離れないよ」


 ずっと愛してる……という想いがこめられたような視線を向けられる。

 どうすれば彼女の想い答えられるか……過去のことを思い出さないといけないに決まっている。

 でも……やっぱり怖い気持ちがあり、思い出すと決めたのに何も出来ない。

 愛奈に過去のことを聞くの一番早いかもしれないが、どうしても恐怖が勝って聞き出せないでいる。

 そのことを愛奈も感じ取っているようで、自分からはあまり過去の話はしない。


「いつかは愛奈に愛してるって言いたいな」

「うん。いつまでも言ってくれるの待ってるよ」


 約束だよと言わんばかりに路上でもお構い無しに愛奈はキスをするのだった。

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