部屋に戻ってイチャイチャ

「家には着いたな」

「うん」


 箱根観光……もとい聖地巡礼から海斗たちは家に戻ってきたのだ。

 久しぶりに旅行を満喫し、帰ってきた海斗はリビングのソファーにダイブした。

 箱根は楽しめたが、泊まりで行くと疲れてしまう。

 今日はもう動きたくない。

 ちなみに澪は家の前まで送ってあげたのでもういない。


「姉ちゃんは帰らないのか?」


 寝転がりながら海斗が夏希に訪ねる。

 明日は仕事なのだがら、今住んでいる家に帰った方がいい。


「車の運転で疲れたから少し休ませて。愛奈ちゃんに抱きつけばすぐに疲れは吹っ飛ぶと思うけど」


 チラリと愛奈のことを見る夏希であるが、「私は海斗くんのものなので」と断られてしまう。

 昨夜にブラコンだと告白した夏希は、今のところ海斗に抱きつきたいなどと言ってこない。

 相当酔っていたし、もしたしたら告白した記憶ないのかもしれない。

 だとしたら今日中に帰ってくれるだろう。

 流石に実の姉から求愛されるのは困るので、帰ってくれるのはありがたい。


「愛奈は俺の抱き枕になってくれる。おいで」

「うん」


 少し頬を赤らめながら頷き、愛奈は海斗に近づいてくる。

 すぐに抱き締め、柔らかな愛奈の身体を堪能。


「海斗だけ狡い。私も愛奈ちゃんを抱き枕にして寝たい」


 まるで駄々をこねる子供のようで、見ていて情けない。

 夏希の女好きな変態を更正させることは難しいのだろうか?

 いや、一つだけ方法があるが、その方法を海斗が取ることはないだろう。

 海斗が夏希に好きだと告白してイチャイチャすればいいだけだ。

 ただ、シスコンになれないといけないので、絶対に告白したくない。


「愛奈は俺の彼女だからダメ。家にアニメキャラがプリントされた抱き枕があるんだろ?」

「あるけど、愛奈ちゃんがいい」


 何で姉と彼女を取り合うような形になっているのだろうか?

 普通ならあり得ない状況だが、夏希いると普通ではなくなってしまう。


「私を抱き枕にしていいのは海斗くんのみなのでごめんなさい」


 丁寧に断れ、夏希は叫びながらリビングから出て行った。

 恐らく部屋にしばらく引きこもるのだろう。

 一人暮らしをしていても、実家にはある程度荷物は残しているから休む分には問題ない。


「海斗くん、愛してる。ずっと離れたくないよ」

「わかってる。離れる気はないから安心していい」


 優しく頭を撫で、愛奈を安心させる。

 学校に行くと未だに嫉妬の視線を向けられるが、それでも愛奈と付き合っているメリットのが大きい。

 自身を守るためと、生活が健康になった。

 手料理を食べることが出来るし、抱きついて寝ると安眠出来る。

 前みたいに寝不足になることがない。


「今度は二人きりで旅行に行ってみたいな」

「気が向いたらな」


 次に行けるとしたら夏休みになると思うが、お金の問題や未成年だけで泊まれるかの確認をしなければならない。

 両親に彼女が出来たから旅行に行きたいと言えばお金は出してくれそうだが、出来ることならあまり頼りたくなかったりする。

 それに夏希がたまに来るとはいえ、家にいれば二人きりでイチャイチャすることは可能だ。

 お金に余裕があって、高校生でも泊まることが出来る旅館があったら行けばいい。


「愛奈こんなに愛されるなんてな」


 付き合う前だったら思ってもいなかったことだ。

 ずっと一人でいるとものだと思っていたが、愛奈と付き合ってから色々と変わった。

 いつも愛奈が隣にいるようになったし、夏希や澪、渚とも少しは話すようになったのだから。


「ずっと愛してるよ。虐めから助けてもらってからずっと……」


 体調が悪そうなとこに話しかける前から、愛奈はどうやって接触しようか考えていただろう。


「記憶がなくて悪いな」


 虐められた記憶はあるものの、海斗に愛奈の記憶はほとんどない。

 でも、間違いなく愛奈を助けたのは事実だと思うし、虐めから助けていなかったら一生懸命尽くしてくれることなんてないだろう。


「大丈夫。でもいつかは思い出してほしいな。辛いかもしれないけど、海斗くんには私の全てを知ってほしいから」

「努力はする」


 本気で愛奈のことを好きになるには、彼女のことを思い出すのは必要不可欠だ。

 愛奈のことを思い出す……つうまりは虐めのことも完全に思い出すということおなので、海斗にとって辛いことになるかもしれない。

 でも思い出さなければ、本当に付き合っていると言えないだろう。


「すぐには無理だろうけど思い出すまで待っててくれるか?」

「いつまでも待ってるよ。たとえおばあちゃんになったとしても」


 思い出す約束をするため、海斗は愛奈に口付けをするのだった。

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