食べ歩き
「これ美味しいわ」
箱根には黒たまごという温泉卵があり、それを食べた夏希の頬が緩んでいる。
何でも一つ食べると寿命が七年延びるという卵らしい。
もちろん実際にそんなことないだろう。
末期のガン患者に食べさせても余命が延びるわけないのだから。
宿泊費は夏希に出してもらっているので、海斗たちは各々自分で買った食べ物を食べている最中だ。
海斗も夏希と同じ黒い卵を買い、早速一つ頬張る。
普通の温泉卵とはまた違った味でとても美味しい。
「海斗くん、あーん」
人前だというのに、愛奈は手に持った黒たまごを食べさせようとしてくる。
愛奈の手にあった黒たまごはすぐに海斗の口の中に消えていき、再び彼女は卵手に持って「あーん」と食べさせていく。
愛奈といると甘えてしまうが、本人が望んでいることなので何も言わない。
いっぱい頼ってほしいと思っているだろう。
なら頼らせてもらいだけだ。
「海斗くんが美味しそう食べているのを見るの好き」
「えへへ」と可愛らしい笑みを浮かべる愛奈はとても可愛い。
実際に夏希も「私も愛奈ちゃんにあーんってして食べさせてもらいたいわ」なんて呟いているし、周りにいる人たちはリア充爆発しろという視線を海斗に向けている。
あんなに可愛い子とイチャイチャ出来るのだから嫉妬の視線を向けられるのは当たり前だ。
一応、海斗がいるからか、いまのところナンパされる気配はない。
箱根にナンパ目的で来る人なんて少ないだろうし、普通は観光を楽しむものだ。
カップルや家族連れの人たちが多そうなので、ナンパがなさそうで一安心。
聖地巡礼ために泊まる旅館はまだ入れないので、ひとまず食べ歩きを楽しむことにした。
「澪ちゃん、あーん」
どこでもイチャつく海斗と愛奈を見てしたくなったのか、夏希は澪の口許に黒たまごを持っていく。
最初は「私はノーマルなので」と断った澪であるが、夏希が諦めないために仕方なくいった感じで黒たまごを食べる。
周りからしたらレズなカップルがいると思うだろう。
澪は周りに人がいてされたからか、顔が真っ赤になっており、「あの二人は良く人前で出来るね……」海斗たちを見て呟く。
完全にバカップルで、もうこうやって食べるのが当たり前になっているから仕方ない。
「ソフトクリーム美味しそうだね」
「そうだな」
食べ歩きでは定番のソフトクリームが売っているお店に並ぶ。
珈琲牛乳ソフトというのが売っており、海斗は一つ買って愛奈と一緒に食べることにした。
どうせ「あーん」ってして食べることになるし、どうせシェアするなら一つでいい。
これから色んな物を食べるのだし、同じ物を二つ買う必要はないのだ。
いっぱい食べることになるが、皆痩せているし心配ないだろう。
それにせっかくの旅行なのだし、体型を気にすると食べ歩きを楽しめなくなるのだから。
「あーん」
買ったソフトクリームを早速愛奈は海斗に食べさせる。
珈琲の苦味と牛乳の甘みがあって本当に美味しい。
名前からして薄い茶色をイメージしたのだが、珈琲牛乳クリームは思っていたより白かった。
「愛奈もあーん」
「うん……」
いつもは愛奈が食べさせてあげることが多いので、きちんと食べながらも頬が少し赤い。
「クリームがついてる」
「あ……」
愛奈の口についているクリームを舐め取ると、一気に顔が紅潮した。
流石に舐められると思っていなかったようで、愛奈は「あう~……」恥ずかしそうにしている。
とても可愛らしく、周りにいる人たちの視線を釘付けだ。
「澪ちゃん、私もやりたい」
「絶対嫌です」
二人を見ていた夏希が提案するも、澪は無理だと断る。
女同士でそんなことやっては、間違いなく百合カップルだと思われだろう。
「夏希さんってガチのレズですか?」
「うーん……男の子より女の子方が好きなのは事実ね」
それは完全にレズと言っても過言ではない。
「とにかく私はノーマルなので、絶対やりませんから」
断固拒否の澪に、夏希は「そんなあぁぁ……」と叫ぶのだった。
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