足湯で

「箱根と言ったら温泉よね」


 海斗たちは足湯カフェという所に来ている。

 足湯に浸かりながら飲食が出来るため、普通のカフェとか違って長時間いてしいまいそうだ。

 特に夏希は社会人で普段から疲れがたまっているらしく、足湯で一番気持ち良さそうにしている。

 足湯でこの調子であれば、旅館で温泉に入ったら相当長い時間浸かっていそうだ。


「二人は足湯でもイチャつくんだね」


 どこでもイチャつく海斗と愛奈を見て、澪は苦笑した。

 せっかくの足湯でこうもイチャつきまくられたらため息の一つも出るだろう。

 イチャイチャしているというよりかは、海斗にくっつかれている愛奈が嬉しそうにしているだけだが。


「愛奈、ずっとこうしてるから」

「うん。いっぱいくっついてて。海斗くんとイチャイチャ出来て幸せだよ」

「二人だけの世界……」


 あり得ないほどにイチャつきまくっているため、海斗は周りが見えていない。

 いや、見る気がないと言った方が正しいだろう。

 まだ開店したばかりでそんなに人はいないが、やっぱりこのグループに男一人は目立つ。

 明らかな嫉妬の視線は向けられるし、リア充爆発しろというオーラが凄い。

 だから周りのことは見ずに、こうやってイチャイチャしているというわけだ。

 一番嫉妬の視線を向けているのは夏希なわけだが。

 今も足湯に浸かりながらも海斗のことを見ているのだから。


「海斗がこんなに成長するとはね」


 嫉妬の視線を向けてはいるが、何故か夏希の顔は少し嬉しそうだ。

 ずっとボッチだった弟に彼女出来たし、聖地巡礼に行きたいと言い出したからかもしれない。

 苛められてボッチになることを選び、誰とも絡むことをしようしなかった……姉からしたら心配でしょうがなかっただろう。

 愛奈と付き合う前はジョンがいる時じゃないとまともに喋ることもしなかったが、今は彼女相手にだけどきちんと話している。

 澪などに威嚇する時もあるが、海斗は格段に成長したと言えるだろう。


「夏希さんも成長しましょうね。可愛い女の子ばっかり追っていたら彼氏なんてできませんよ」


 澪の的確なツッコミが入る。


「私は彼氏なんていらないもん。可愛い女の子とイチャイチャしたいだけよ」


 女の子とアニメが生き甲斐すぎるのか、夏希は彼氏が欲しいと思わないようだ。

 せっかくの美少女なのに残念な性格だ。


「海斗くん、もっとくっつこ?」

「ああ」


 おでこをくっつけ合い、海斗は愛奈のことしか見ていない。

 空気を読まずにイチャイチャしているため、再び夏希は嫉妬の視線を向ける。

 本当にどこでもイチャつき、二人きりであればこのまま始めてしまうんじゃないかと思えるくらいの雰囲気だ。

 海斗は愛奈と一緒にいても視線を気にしないようにイチャついているのだが、他の人からしたらバカップルにしか見えないだろう。

 少しずつ客も入り始め、二人を見る人たちが増えていく。


「私、お酒飲みたくなってきちゃったわ」

「カフェにお酒なんてありませんよ。飲むとしても旅館で飲んでください」


 イチャつく二人を見ているからか、お酒で気を紛わらしたいようだ。


「せっかく箱根に来たんだし、食べ歩きとかしません? ネットで食べ歩きブログがあって食べてみたいんですよ」

「そうね。今は飲めないからいっぱい食べることにしましょう」


 足湯カフェを出たら食べ歩きすることが決まった。

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