箱根に到着
「箱根、とうちゃーく」
車から降りた夏希は、両手を挙げて箱根の大地に足を着けた。
他の人たちも車から降りて、箱根のおいしい空気を吸ったりしている。
今日は晴れているために観光日和だ。
緑が多くて自然が豊かで、都会でたまったストレスが洗い流されていくように感じる。
「少し肌寒いな」
普段住んでいるとこより標高が高いせいもあり、海斗は寒気を感じて愛奈に抱きつく。
人肌はほどよく温かいので、外で抱きつくと良い感じだ。
「私も寒いから愛奈ちゃんに抱きついていい?」
「ダメに決まっているでしょう。夏希さんは二人の邪魔しちゃダメ」
抱きつこうとした夏希を澪が止める。
せっかく親友が彼氏と楽しんでいるのに邪魔されたとあっては嫌だろう。
抱きつかれた愛奈の頬は緩みきっているのだから。
「ここって旅館の駐車場ですよね? もうチェックイン出来るんですか?」
辺りを見渡している澪が夏希に尋ねる。
まだ午前中のため、普通はまだチェックイン出来る時間でない。
「車だけ先に置かしてもらうことにしたのよ」
ゴールデンウィークが終われば凄い混むというのは少し先らしく、すんなり許可が取れたようだ。
「海斗くん、ずっとこうしてて?」
「うん」
せっかく箱根に来ても海斗はひたすら愛奈から離れない。
車に乗っている時もイチャついていて、何度も夏希に羨ましいと言われていた。
その度に夏希は澪の太ももに触ろうとしようしたため、車内が軽くカオスな空間になったのだ。
ショートパンツじゃなくてパンツをはいてくれば良かったと澪は思っただろう。
「はいはい。それじゃあ箱根観光を始めるわよ」
一番年長である夏希が仕切り、三人は「はーい」と返事をする。
外であまりセクハラ発言は出来ないので、旅館に入るまでは夏希に何かされるってことないだろう。
イチャイチャしてるのを見て羨ましいと言われることはあるだろうが。
「箱根と言えば何かな?」
「アニメのモデルになった旅館に行きたい」
夏希の質問に海斗が答える。
今回は聖地巡礼で来たので、旅館の中に入りたいのだ。
他のことは正直どうでも良く、とにかくアニメのメインになっている旅館。
「旅館の中にはまだ入れないわよ。チェックインの時間まで我慢しなさい」
「マジか……じゃあ時間になるまで車で寝てる」
動くのも面倒だし、他の人たちみたいに観光を楽しまなくてもいい。
基本的にまったりのんびりしている方が好きだ。
「せっかくの箱根なのに原田くんは変わってるね」
まさかの観光を楽しむ気のない海斗も見て、澪は「はあ~……」ため息をついて苦笑した。
観光地に来て引きこもる人なんて滅多にいないだろう。
だけど普通とは違うのが海斗で、本当にメイン出てくる旅館以外に興味ない。
それに今の時間はそれほど人がいないが、もう少ししたら観光客が外に出てくる。
愛奈や夏希、澪といった美少女が三人もいるので、その中に一人男がいるという状況ではどうして目立ってしまう。
いくら旅館が満室にならないとはいえ、観光地である箱根は結構人がいる。
視線を浴びたくないため、出来ることなら引きこもっていたいというのが本音だ。
「本当に海斗は……愛奈ちゃん貸してくれるなら車で寝てていいわよ」
「ダメ。愛奈が女だけのグループにいたらナンパされるからついてく」
ピンクの髪で目立つだろうし、美少女だらけのグループにいてはナンパされるのは目に見えている。
せっかくの旅行で愛奈も観光したそうにしているため、海斗も一緒に行くことにした。
「えへへ。海斗くんと一緒に旅行が出来るね」
「そうだな」
少し肌寒いはずの箱根だが、イチャイチャして甘い空気をだしている海斗たちを見て「暑くなってきた」と澪が声を漏らす。
箱根に着く直前に上着を一枚羽織った澪であるが、今すぐにでも脱ぎそうな勢いだ。
「澪ちゃん、私たちもイチャつく?」
「暑いんで遠慮しときます」
澪に断られて夏希は「連れないわね……」と口にして不満そうな表情になる。
何はともあれ、箱根観光がこれから始まるのだった。
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