ラノベびあったシーンを実行してみた
「愛奈」
「どうしたの?」
晩御飯を食べ終わってリビングでのんびりとラノベを読んでいる海斗は、ふと思ったことがある。
少し試してみたいことがあると……。
愛奈に頼めば大抵のことをしてくれるため、したいと思ったことをやらないのは損だろう。
「ラノベにあるシーンをやってみようかと思って」
「ラノベ?」
「ああ。ちょっと読んでみて」
再現したいシーンのページを開いた状態で愛奈に渡すと、おもむろに読み始めた。
やってみたいということは好みのシーンであるので、愛奈にとってはチャンスだろう。
海斗を誘惑することが出来るのだから。
ただ、読んでいる内に少しずつ頬が赤くなっていき、恥ずかしがっていることがわかる。
行動自体は対したことはないが、主人公への呼び方が恥ずかしいのかもしれない。
「海斗くんのこと……その、お、お兄ちゃんって呼ぶの?」
「そうだな。主人公と妹の絡みシーンだからな」
ヒロインの一人に妹がおり、ちょうど『お兄ちゃん』って呼んで甘えてくるシーンがある。
いつもは愛奈が『海斗くん』と言って甘えてくるが、たまには『お兄ちゃん』って呼ばせて趣向を変えても良いのかもしれない。
「海斗くんって年下のが好きなの?」
うるうると瞳に少し涙をためた愛奈が見つめてくる。
年下が好きと言われても年齢はどうしようも出来ないため、愛奈にとっては致命的だ。
異世界転生のように記憶をもって生まれ変わるしかないのだから。
「そういったわけじゃないんだけど、姉ちゃんがあの性格だから」
海斗の言葉に、愛奈は「そうだね……」と納得したかのような表情になる。
アニメ好きならまだ良いが、女の子好きの変態過ぎて年上に憧れるということが出来なかった。
年下と年上を選べと言われたら、間違いなく年下を選択する。
「本当に同級生でも大丈夫?」
「大丈夫だから」
優しく頭を撫でてあげると、愛奈は「ん……」と微笑む。
「じゃあしようか」
「うん……」
やっぱり恥ずかしい気持ちはあるようで、未だに愛奈の頬は赤い。
教室で結婚してと言ったのに、何を恥ずかしがることがあるのだろうか? などと思うが、結婚してと言うよりお兄ちゃんと呼ぶ方が愛奈には恥ずかしいのだろう。
ラノベをテーブルの上に置いた愛奈は、少し海斗から距離を取って「ふう~……」と深呼吸をする。
そしてゆっくりと頬を赤くしながら近づいてきて口を開く。
「お、お兄ちゃ……あう~……」
恥ずかしさからか、愛奈は最後まで『お兄ちゃん』と言えなかった。
『海斗くん』と言い慣れているからしょうがないかもしれない。
どんなに恥ずかしかろうと言ってほしいので、愛奈は言わなければならないだろう。
海斗のためであればどんなことでもすると言ったのだから。
「頑張って」
「うん」
再び深呼吸をした愛奈は、ゆっくりと耳まで真っ赤にしながら海斗に近づいていく。
「お、お兄ちゃん……」
「何?」
今度はきちんと呼ぶことが出来た愛奈であるが、目線を海斗に合わせられていない。
緊張で次の言葉が出てこないのか、愛奈は「あう~……」と座り込んでしまった。
膝を立てて座ったからスカートの中が見えてしまったが、今は見ている場合ではないだろう。
「恥ずかしがっている愛奈は可愛いな」
「え?」
「普段あんまり恥ずかしがってないから恥ずかしがっている愛奈は新鮮で可愛い」
愛奈に近づいて優しく抱き締める。
女の子は少しの恥じらいがあった方が可愛く思えるし、特にいつもと違う愛奈は本当に新鮮だ。
「もう少し頑張ろう。俺のしたいことを出来て愛奈は嬉しいでしょ?」
「うん。海斗くんが好きなことは私もしたい」
少し名残惜しいが、愛奈から離れてソファーに座る。
愛奈は決心したかのように「よし、頑張るぞ」と言い、再び深呼吸をした。
「お、お兄ちゃん」
「何?」
まだ顔は赤いが、さっきよりかはマシになっている。
「私、お兄ちゃんのことが好き……なの。だからお兄ちゃんには私だけを見て、ほしいな」
突然の告白に海斗は「え?」と驚く。
もちろん実際の愛奈からは告白されているので演技だ。
愛奈は海斗の太ももに股がるように座ってから「私の初めてをあげるね」と言い、キスをした。
もう既に何度も感じている柔らかくて熱い唇だが、ラノベでは初めてのキスなので、海斗はもう慣れてきたなと思いつつも演技で目を見開く。
「お兄ちゃん、私のファーストキスを捧げたんだし、浮気なんてしたら許さないから」
「お、おう……」
最後の言葉はとても演技と思えないくらい迫力があったし、瞳に光が宿っていなかった。
もしかしたら週末の箱根で一緒に行く可愛い女の子に目移りしないでという警告が込められているのかもしれない。
「愛奈、良く頑張ったな。ありがとう」
「うん。海斗くんが喜んでくれるなら嬉しいな」
「良かったよ」
「あ……んん……」
いつもより激しめなキスをし、海斗は愛奈の唇をたっぷりと楽しむのだった。
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