再び

 テスト前日の夜、海斗は自室でテスト勉強をしていた。

 明日からテストなのだし、余程のことがない限りは勉強するだろう。

 ただ、長時間勉強するのはしんどく、海斗は「ふう……」と息を吐く。


「夜食作ってきたよ」


 愛奈が部屋に入って来て、手には夜食であるホットケーキを持っている。

 キッチンに丁度ホットケーキの粉があったので、それを夜食にすることにしたのだ。

 それに先日テレビである物を入れるとフワフワな食感のホットケーキが出来ると紹介されていたので、海斗は食べてみたいと思った。

 ホットケーキをリクエストしたら愛奈が「頑張って作るね」と言ってくれたので楽しみだ。


「いただきます」


 勉強を一時中断し、海斗はホットケーキを食べ始める。


「美味いな」


 きちんとある物を入れてと頼んでおいたので、普段食べているホットケーキよりフワフワしていて美味しい。

 あえてホットケーキに少し苦味を出しているおかげなのか、蜂蜜の甘味がより引き立っている。


「良かった。あーん」


 フォークでホットケーキの切れ端を差し、愛奈は海斗の口元へ持っていく。

 教室で皆いる前でしたから、家であーんってして食べさせてもらうことに恥ずかしさをあまり感じない。

 口元持ってこられたホットケーキを海斗は食べていく。

 フワフワ美味しく、これならもう一つ食べれてしいまいそうだ。

 もう晩御飯は食べ終わった後なので、おかわりはしないが。


「あはは~、このホットケーキ美味い~」

「え?」


 突然海斗のテンションが上がってしまったため、愛奈の目が驚いたように見開かれた。

 まるで先日ブランデー入りのチョコを食べた時ようになり、顔が赤くて完全に酔ってしまっている。


「嘘? 確かにビールは入れたけど、熱を通してるからアルコールは飛んでるはずなのに……」


 海斗が入れてほしいと言ったのはビールだ。

 ビール含まれる炭酸がホットケーキのフワフワした食感を生んで美味しくなる。

 このホットケーキはどう見てもきちんと火が通っているため、本来だったらアルコールは分解されて酔っぱらうことはない。

 だけど海斗はビールが入ったホットケーキ食べて酔ってしまっている。

 火を通せばアルコールは完全に分解されるため、ホットケーキなら酔うことはないと愛奈は思ったのだろう。

 ちなみにビールは夏希が残していった物を使用したので買ったわけではない。


「愛奈~、口移しで食べさせて~」

「え? いや、あんまり食べない方が良いんじゃ……」


 テスト前日だし、明日に影響してしまってはよろしくない。

 だったら食べさせない方が良いと思ったのだろう。


「ええ~、愛奈は俺のためなら全て欲求を満たしてくれるんでしょ? なら食べさせて」

「大丈夫なの?」

「大丈夫だよ~」


 顔を赤くしながら「ヒック」となっていて、海斗は最早酔っぱらいと変わらない。

 分解されていても酔うなんて誰も思わないだろう。


「じゃあするね」


 海斗に言われて断れるわけもなく、愛奈はホットケーキを口に咥える。

 すぐさま海斗は愛奈の口に咥えられているホットケーキを食べ、唇を彼女の唇につけて離れない。

 口の中ホットケーキを飲み込み、海斗は愛奈唇ついているわずかな蜂蜜を舐めとった。


「美味しい」

「喜んでくれたなら良かった」


 顔を真っ赤にしていることから恥ずかしいさがあるようだが、愛奈にとっては嬉しさのが勝るだろう。

 自分の作った料理美味しいと言って食べてくれるし、何より沢山イチャイチャすることが出来る。

 愛奈が嬉しくないはずはない。

 その証拠に口元はニヤけているのだから。


「何で酔ってるんだろ? お酒の匂いしいないのに……」


 海斗は加熱してアルコール分を飛ばしたとしても、ビール入っているとわかっているから酔っているのかもしれない。

 それともビールのアルコール分が火で分解されていないと思い込んで酔っている可能性だってある。

 いや、それだったらビールを入れてほしいと言わない。


「でも、甘えてくる海斗くんが可愛すぎるからたまに作ってあげようかな」


 夏希はかなりお酒が好きなようで、冷蔵庫にストックはまだある。

 勝手に使うのはよろしくないが、愛奈が可愛く謝れば許してくれるだろう。


「海斗くん、まだ食べる?」

「うん」


 口移しでホットケーキを食べた海斗は、愛奈の太ももを枕にして寝るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る