昼休みも甘い雰囲気を作る
「あ……これからご飯なのに……」
昼休みになった瞬間に海斗は愛奈に抱きついた。
澪のおかげで何かにつけてされることはほとんないものの、何故か抱き締めてしまう。
だから教室内に甘い空気が拡散され、クラスメイトたちは近づかない。
イチャイチャしてるバカップルに近づこうとする人はいないだろう。
「いいでしょ。くっつきながらご飯を食べよう」
「うん」
同じ机に二つお弁当を広げて食べ始める。
「普通、お弁当って彼女が作るものだよね」
「別に良いじゃん。ボッチの家事スキル舐めるなよ」
一人暮らしをしているため、海斗は家事全般が得意だ。
愛奈の分のお弁当も作り、それを二人で食べている。
でも、愛奈がお弁当作りたかったようで、少し不満そうに「むう……」と頬膨らます。
「明日からはお弁当は私が作りたい」
「いいのか?」
「うん。海斗くんに喜んでもらいたい」
どうして作りたいようなので海斗が「作りたいなら」と頷くと、愛奈は嬉しいのか「えへへ」と笑みを浮かべる。
この光景を見ていた澪が「男の子にも自然な笑顔出来るじゃん」と呟く。
つまりは今まで男子に見せていたのは作り笑いだということだ。
それでも男子は騙されてコロっと恋に落ちてしまった。
過去に愛奈を虐めていたのは男子だったため、作り笑いになってしまうのはしょうがないだろう。
でも、愛奈は助けた海斗にのみには自然な笑顔を見せてくれる。
「海斗くん、あーん」
お弁当おかずである鶏の唐揚げ箸でつまみ、愛奈は海斗は口元に持っていく。
いわゆる恋人同士がやるあーんというやつで、一度やってみたかったのだろう。
恥ずかしさがあるからか少し頬が赤いが、食べてほしそうな眼差しが向けられる。
これは食べないといけないと思い、恥ずかしながらも海斗は唐揚げ食べていく。
自分で作ったからいつもと変わらないはずなのだが、何故か少しだけ美味しく感じた。
食べさせてもらった効果なのだろう。
お弁当はあーんってしてほとんど食べさせてもらう形になった。
☆ ☆ ☆
食べ終わった後は授業が始まるまで雑談タイムだ。
こんな風に学校でクラスメイトと話すのは虐められる前までで、ボッチになってからは想像すらしていなかった。
これからは毎日のように愛奈と話すことになるのだろう。
基本的に家族以外の人と話すと緊張してしまう海斗であるが、何故か愛奈とだけは緊張せずに話すことが出来る。
記憶がなくても助けたことがあるというのが影響しているかもしいれない。
「海斗くんとイチャイチャ……幸せ」
愛奈は海斗の膝の上に座っており、イチャついてる幸せを味わっているようだ。
大勢のクラスメイトがいるのにもかかわらず甘い雰囲気を出しているため、親友である澪も近づこうとしない。
親友が幸せそうにしているから見守っていたいという気持ちもあるのだろう。
ただ、愛奈のことを好きな男子からしたら面白くないようで、海斗に嫉妬の視線を向ける。
向けてはいるが、愛奈が幸せそうな顔をしていたら何も言えないし何も出来ないだろう。
「帰りに本屋行っていい?」
「うん。何か買うの?」
「ラノベ」
基本的電子書籍が多いが、本屋で買うと特典がつく物もある。
そういったラノベは本屋に行って買ったりするのだ。
今日は海斗が好きなラノベ発売日であるため、どうしても本屋に寄りたい。
「でも、ラノベに集中し過ぎて私とイチャイチャするの忘れないでね」
「大丈夫。愛奈とずっとくっついてるから」
「うん。嬉しい」
どんな話をしても甘い雰囲気をぶちまけ、クラスメイトたちは口に砂糖を直接入れられた気分になっているだろう。
実際に「ブラックコーヒー買ってこよう」と教室を出ていく人もいるほどだ。
甘い雰囲気は予鈴が鳴るまで続き、クラスメイトはため息が止まらなかったという。
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