学園のアイドルの家へ
「何でこんなことに……」
漫画喫茶から出た後、海斗は愛奈の家を訪れていた。
同棲することになったため、愛奈が家から服などを持っていかないといけないのでその準備だ。
本当は家の外で待っているつもりであったが、愛奈から「お母さんに紹介したいから入ってってよ」と言われてしまい、今の海斗は天野家のリビングのソファーに座っている。
テーブルにはお茶とお菓子が置かれており、向かい合って愛奈の母親もいるために、海斗は緊張がマックスの状態だ。
つい先日までボッチを謳歌していたので、いきなり彼女の両親と会話するのはキツい。
幸いなことに父親は家におらず、もしいた海斗は断っていただろう。
「まずは自己紹介しましょうか。私は
愛奈の母親──天野ルカは肩ほどまである綺麗な桃色の髪に藍色の瞳だった。
親子というか姉妹と思えるくらいにルカは若々しく、まさにラノベやギャルゲに出てくるお母さんといった感じだ。
ピンクの髪に抵抗がなければ、今でもナンパされるかもしれない。
「原田海斗です」
緊張で単調な自己紹介になってしまい、海斗は恥ずかしさを隠すためにお茶を飲む。
見た感じ怖い印象は受けないが、人は見かけによらない。
でも、感謝していると言っていたし、ルカが海斗に牙を向けることはないだろう。
「緊張しなくても良いわよ。もう私のことはお義母さんって読んでくれても良いし」
「は、はあ……」
「海斗くんはあがり症なのかしら?」
「そうですね」
家族以外の年上の人と話すのなんて久しぶりで、心臓が破裂しそうなくらいに大きく激しく動いていた。
むしろこのまま気を失ってしまいそうだ。
「可愛らしいわね。食べちゃいたいわ」
ペロリとルカは自分の唇を舌で舐めとった。
ビッチなの? と思いつつも、海斗は妖艶な容姿をしているルカから目を離すことが出来ない。
これが高校生には出せない大人の色気というやつだろう。
「ふふ、冗談よ。流石に娘の彼氏に手を出すつもりはないわ」
「はあ……」
本当に冗談だったのだろうか? という言葉が頭を過る。
好みの人がいたら手当たり次第に漁りそうな……そんな雰囲気だ。
「信用していなそうな顔ね。今の私は夫にメロメロなのよ」
突如としてルカの顔色が変わる。
先ほどの舐め回すような視線ではなく、一途の……愛奈が海斗に見せるようなこの人にしか興味がないといった表情だ。
手当たり次第漁っている内に旦那に夢中にさせられたということだろう。
全く興味がないため、海斗は「そうですか」と言うだけだった。
「ちなみに愛奈は超が付くほど一途だと思うわ」
それは海斗も感じていることだ。
何年も一人の人を想っていたのだし、愛奈が一途じゃなかったらおかしい。
「海斗くん、ちょっといいかな?」
準備をしているはずだが、愛奈はリビングにヒョコっと姿を現す。
もう準備が終わったのだろうか?
「どうした?」
「ちょっと聞きたいことがあるから私の部屋に来てほしいの」
「わかった」
頷いてから愛奈の部屋に入る。
初めて入った異性の部屋はとても甘い香りがして、まるで違う世界に迷いこんでしまったんじゃないかと思わせる感覚に陥った。
ただ、部屋の中は服が散乱していて汚い。
「海斗くんの好みの服知りたいから選んでほしいの」
だから服だけ散らかっているようだ。
彼女である以上、少しでもお洒落をして彼氏に可愛く見られたいのだろう。
その気持ちはわからなくのない。
ラノベなんかのデート回だとヒロインがとてもお洒落をしているのだから。
だからといってボッチであった海斗に女の子服を選ぶのなんて難易度が高く、それすればいいか凄く迷う。
着てるのを褒める分には問題ないが、選ぶのはどうすば良いだろうか?
初心者すぎて全くわからない。
「女の子の服……」
どれが良いのか全くわからず、海斗は頭を抱える。
「迷ってるなら実際に着ようか?」
「え?」
「着るから海斗くんの好み服を選んでほしいな」
「いや、でも……」
着替えるとなると時間もかかってしまう。
出来ることなら早めに帰りたいので、適当選んだ方が良いかもしれない。
「じゃあ着替えるね。見たいなら見ても良いから……」
頬を赤らめてるあたり恥ずかしいのだろうが、愛奈は海斗がいるのに着替えるのだった。
その間、海斗は愛奈のことをガン見していたのは言うまでもない。
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