姉妹漫才
「んん……朝か」
愛奈が泊まった次の日の朝、海斗は鳥の鳴き声やカーテンの隙間から差し込んでくる朝日で目が覚めた。
これだけならいつもの光景だが、今日は海斗の腕に抱かれて寝息を立てている愛奈と一緒だ。
とても可愛らしい寝顔は無意識の内に人を惹き付ける。
「ずっと一緒にいることになるのかな」
告白を受け入れてしまったため、今は彼氏彼女の関係だ。
少し前の自分からしたら考えられなかったことで、しかも相手は学校一の美少女、学園のアイドルである愛奈。
全男子からしたら海斗のことが羨ましいと思うだろう。
これだけ可愛くて優しいので、モテるのは当たり前のことだ。
そんな愛奈は実は昔から好きだと告白してきて海斗は付き合い始めた。
ずっと一途に想い続けてきたのだし、愛奈から飽きて別れを切り出すなんてことはないだろう。
海斗に関しても付き合いたいくらい好きな気持ちはないが、別れたら男子たちに何か言われてしまうので別れることはない。
つまりは少なくとの高校卒業までは付き合っているということだ。
ただ、愛奈の性格からして、絶対に別れたくないと言うだろう。
つまりはずっと一緒にいることになる可能性が非常に高い。
嫌いではないから良いのだが、もう海斗にボッチ人生は訪れない。
常に愛奈が側にいることになるだろうから。
「んん……海斗、くん」
どうやら夢でもイチャイチャしているらしく、愛奈は寝言で彼氏の名前を口にした。
「あ、い、なちゃーん、おっはよー」
朝からテンションが高い姉の夏希がノックもせずに部屋に入ってきて、愛奈の寝ているベッドにダイブしようとしてくる。
「うるさい。帰れ」
思い切り蹴っ飛ばそうかと思った海斗であるが、寝ている愛奈がいるので止めた。
「姉に対して辛辣じゃないかしら? 弟の彼女と仲良くなりたいと思うのは普通のことじゃない」
「姉ちゃんはセクハラするからダメだ。こっち来るな」
「いいじゃない」
「良くない」
両手を使って夏希のベッドへの侵入を阻止する。
夏希を愛奈に近づけてしまったらキスくらいは普通にしてきそうだ。
そんなことをさせるわけにもいかず、ひたすら二人の攻防が続く。
「んん……海斗、くん?」
うるさいためか、愛奈が起きてしまった。
まだ完全に目覚めていないようで、可愛らしく目を指で擦っている。
時折小さな欠伸をしながらボーッとしており、どうやら愛奈は朝に弱いようだ。
「ちょっとこの姉を黙らすから待ってて」
「うん……海斗くんカッコいい」
寝ぼけながら言われてもあまり嬉しくない。
ポアポアしたような感じな愛奈は完全に無防備で、尚更夏希を近づけるわけにはいかないだろう。
「この変態がいたら愛奈が着替えられないだろ」
「海斗だっているじゃない」
「俺は彼氏だから良いんだよ」
「何それ海斗だけ狡いわ。私も愛奈ちゃんの着替え見たいのに」
「ええい、収集つかんから部屋から出るぞ。愛奈、着替えたらリビングまで来てくれ」
海斗は夏希を両手を使って抑えつけ部屋から出ていく。
出る際に「はーい」とポワーンとした返事が聞こえた。
☆ ☆ ☆
「海斗は鬼畜だわ。せっかく合法的に美少女の着替えが見れると思ったのに」
「本当に中身はオッサンだな。産まれてくる性別完全に間違えてるだろ。いや、男に産まれてたら今頃は牢屋の中か……」
「酷くない? 確かに高校生の時は体育の着替えで視姦しすぎて、一人だけ違う部屋で着替えないといけなくなったけど」
まさかにカミングアウトで海斗は驚く。
きっと目が血走ってよだれでも垂らしながら見ていたのだろう。
別の部屋になったのは頷ける。
こんな変態では愛奈が危険に陥ってしまう。
色々と考えないといけないことが多すぎて、海斗は「はあ~……」深いため息をつく。
「あんな可愛い彼女がいて何でため息がでるの? お姉ちゃんにも愛奈ちゃんをシェアしてほしわ」
「やだよ。今日はデートするから帰れ」
デートの約束なんてしていないが、何かしらに理由をつけないと夏希は愛奈から離れることはないだろう。
「ええ? そのデートにお姉ちゃんは?」
「ついていけるわけないだろ」
デートに姉がついて来るなんて聞いたことがない。
そもそもこんな変態な姉は二次元でも見たことがなく、海斗は本当にため息が止まらない。
「あの……さっきから姉弟漫才してるの?」
「してないから」
制服に着替えた愛奈がリビングにやって来た。
声が大きかったから寝室にも聞こえたらしく、それで目が完全に覚めらのだろう。
学校が休みなのに制服なのは着替えがないからだ。
「愛奈、おはよう」
「海斗くん、おはよう」
すぐに海斗の元にやってきて愛奈は抱きつく。
変態な夏希がいるのでしょうがないことだ。
「朝からお熱いのね。私も混ざっていいかしら」
「ダメ決まってるだろ」
夏希が混ざったら大変なことになるのは目に見えている。
「海斗くん好き。……んちゅ……」
ふいに愛奈の唇が自分の唇に触れ、海斗はフリーズしてしまう。
「ずっと一緒だよ。ちゅ……」
再びキスをされた海斗は無意識に自分の唇を指で触ってしまうのだった。
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