甘い空気を出し始める
「愛奈ちゃん、お姉ちゃんと一緒にお風呂に入らない?」
夜ご飯を食べ終わった後、海斗にくっついている愛奈に夏希は「はあ、はあ……」と息を荒げながら両手の指を上下にワキワキさせながら訪ねた。
変態すぎる行動に愛奈は海斗から離れようとしない。
もし、離れたのもなら夏希の餌食になってしまうのは間違いないだろう。
イチャイチャしていたい気持ちもあるだろうが、一番の理由は間違いなく夏希の毒牙から逃れたいからだ。
先ほどから愛奈は恐怖のせいか身体を震えさせている。
それでも帰ると言わないのは、海斗と一緒にいたくてしょうがないからだろう。
「先に一人で入ってこい。愛奈にセクハラするなら自分の家に帰れ」
身内のせいでこうなっているのだし、愛奈のことを守らないといけない。
「ここは私の実家よ。それに先に入ったら愛奈ちゃんの残り湯を堪能出来ないじゃない」
「お前は変態オヤジか」
全くもう……とため息をつき、海斗は愛奈のことを優しく撫でる。
愛奈と付き合うと決めた以上は不幸にさせたくない。
それに過去に虐めにあったという似たような境遇なので、とても他人事とは思えないのだ。
海斗に関しては愛奈を助けたことで虐めにあったのだけど。
「こんな姉で悪いな」
「大丈夫だよ。海斗くんが守ってくれるから」
頭を撫でたのが良かったのか、いつの間にか愛奈の震えが止まっていた。
虐めから助けてもらったというのが大きいかもしれない。
愛奈は完全に海斗のことを信頼しきっているように見える。
「何で惚けるの? 私も愛奈ちゃんで惚けたいわ」
「惚けたつもりはない」
「天然なの? 天然のバカップルなの?」
「いいからお風呂に入ってこい」
意味不明なことを言っている夏希をお風呂に向かわせた。
「本当に変な姉で申し訳ない」
「ううん。海斗くんがいてくれるし」
最早、愛奈は海斗中心の生活になろうとしているのではないだろうか?
好きな人と一緒にいたい気持ちは誰にでもあるだろうが、恐らく愛奈は強すぎる。
何年間も我慢し、抱きつかれて想いが爆発してしまったのだし仕方ない。
これからはほぼ毎日一緒にいることになるだろう。
両親の許可が取れれば同棲したいと言い出すかもしれない。
ずっとボッチだったはずだが、愛奈を抱き締めて寝たことによって生活が完全に変わってしまった。
学校の男子からしたら羨ましいことだろう。
絶大な人気を誇る愛奈が彼女になったんだから。
「海斗くんと連絡先交換したいな」
「そういえば知らないな。交換するか」
スマホを取り出して連絡先を交換する。
家族以外の人の連絡先がスマホにあるのは何か変な感じがして落ち着かない。
かといって消すわけにいかず、海斗はスマホをテーブル上に置く。
「俺たちは連絡先を知らずに付き合うことにしたのか」
「そうだね。でも、私は海斗くんのことをずっと見ていたから。他の人と話していても海斗くんを目で追っていたこともあったよ」
確かにたまに誰かからの視線を感じていたことはあった。
ただ、流石に学園のアイドルである愛奈の視線だとは思わなかった。
「これから海斗くんといっぱいイチャつけるね」
「そうだな」
「えへへ」と可愛らしく笑みを浮かべる愛奈のお願いを断れる気がしなかった。
学校でイチャつけば嫉妬の視線を向けられるが、家では何も気にしなくて良い。
今日に至っては夏希がいるので、嫉妬の視線は避けられないだろうが。
「海斗くんの匂い」
愛奈は顔を海斗の胸にうずめ、深呼吸するかのように息を吸う。
まるでペットがご主人様の匂い覚えているかのようで可愛らしい。
気がついたら愛奈の頭を軽く抑えていたため、もっと匂いを嗅いでもらうことにした。
一切の抵抗を見せないので、愛奈は海斗の匂いが好きなのだろう。
「海斗くん好き大好き」
ずっとくっついていたため、お風呂上がりの夏希から嫉妬の視線を向けられるのだった。
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