人気者になろうとした理由
教室に戻ってからずっと海斗はクラスメイトから視線を向けられていた。
非常に不快であり、早退してしまいたい気分になったほどだ。
何でボッチのアイツが学園のアイドルである天野さんに好かれてるんだ? と思っているかのような視線は本当に辛く、海斗は愛奈を連れて無断で早退してしまった。
一緒に連れて来たのはこれからのことを話す必要があるから。
何かしら考えて嫉妬の視線を回避しなくてはならない。
海斗は自分の家に案内し、リビングにあるソファーに愛奈を座らせた。
「付き合った初日に家に連れ込むなんて、海斗くんは狼なのかな?」
「なってほしいのか?」
「うん。海斗くんには私の全てを貰ってほしいから」
頬を赤くして上目遣いの愛奈はとても可愛く、海斗の心臓は少しだけ高鳴ってしまう。
「私は海斗くんの側にいれるのであれば何でも構わないよ。たとえ自分の欲求のために使われることになろうとも……」
「流石にそんなことはしない」
別に欲求不満だから付き合うことにしたわけではない。
断って学園のアイドルを捨てた男を認識されないために付き合うことにしただけだ。
「愛奈ってさ……昔虐められてた?」
「え……?」
海斗の言葉に愛奈は驚いたような表情になる。
虐められた女の子を助けたのを見て愛奈は海斗のことを好きになったと言っていた。
それだけでここまで好きになるなんてことは考えにくく、だとしたら考えられることはただ一つ。
「愛奈は俺に虐めから助けられたから好きになった。違う?」
まだ記憶は戻っていないが、そうとしか考えられなかった。
でないと欲求を満たすために自分を使って良いなんて言わない。
虐めから助けられた本人だからこそ、愛奈はこんなにも好きになったのだ。
もう離れることなんて出来ないくらいに。
「それに虐めから助けた子にある唯一の印象はピンク。これは愛奈の髪を同じだ」
優しく愛奈の髪に触れ、過去の印象と同じかどうか確かめるために自分へと近づける。
「思い……出したの?」
心配そうに愛奈が見つめてくる。
「全く思い出せん」
思い出そうとしてもフィルターがかかったような感じで、海斗は考えるのを止めた。
これ以上はどうしてもトラウマが甦る。
それに思い出せなくても生活に支障は一切ないし、これから何か変わるわけではない。
思い出そうと思い出さなかろうと愛奈と付き合うことは変わらないだろう。
「そっか。でも、海斗くんが思っている通りだよ。私は海斗くんに助けられて好きになったの。本当はもっと早く仲良くなりたかったんだけど、また虐められるかもしれないと思うと最初は距離を置くしかなかった」
「その判断は正しいな」
「虐められなくなるには人気者になるしかないと思ったの。だから皆に優しくして明るく振る舞って……気づいたら学園のアイドルなんて言われるようになったけど」
だから愛奈はあんなに優しい性格になったということだ。
ボッチを選んだ海斗とは違って、愛奈は虐められなくなるために人気者になる道を選んだのだろう。
両極端だったはずが、元は似た者同士というわけだ。
「人気者になりすぎて困っちゃってるけどね」
まさかここまでになるなんて思ってもなかったようで、愛奈は「あはは……」苦笑い。
好きな人がいるのに毎週のように告白されても困るだけだだろう。
「虐められてたのって容姿が原因?」
「うん。ピンクの髪の人って滅多にいないからね」
国際化の時代といえど、黒髪が多い日本人からしたら愛奈の髪は異色だ。
それだけで虐めにあったとしてもおかしくはない。
虐めなんて悪いことはわかっているが、周りの人からしたら自分が対象になあるかもしればいから何も言うのとが出来ない。
そんな中、海斗だけは違って止めるように言ったのだ。
好きになったとしてもおかしくない。
虐められるのが嫌で明るく接し、小学生の頃は受け入れてもらえなかった髪も今では何か言われることなくなった。
元々美少女であったため、今では絶大の人気を愛奈は誇る。
でも、愛奈はボッチである海斗に心奪われてしまった。
今すぐに海斗が抱かせて言っても、愛奈は喜んで身体を捧げるだろう。
「私はもう海斗くんから離れることは出来ないから。ずっと一緒いてほしいよ」
「俺は無愛想だぞ」
「大丈夫だよ」
ボッチで人との付き合いを止めてしまった海斗に、愛奈を楽しませる自信なんてない。
本人は一緒にいれるだけで幸せそうな顔をしているが、流石にこのままというわけにはいかないだろう。
学園のアイドルと付き合いだした以上、海斗からフるわけにはいかない。
クラスメイトはもう抱かれたと思っているし、これでフったら天野愛奈を捨てたクズ言われてまた虐められてしまう。
「保健室に一緒に行かなきゃボッチままだったんだろうな」
「そうだね。抱き締められたら想いを抑えきれなくなっちゃって」
愛奈の告白は昨日の出来事があったからこそだ。
抱き締められたことで好きな気持ちが爆発し、大勢の人がいる前で告白したのだろう。
それに一緒に保健室行って授業をサボったことは効果があった。
サボってまで一緒にいたいくらい好きなんじゃないかとクラスメイトは思っただろう。
昨日寝不足は二人きりになるために嘘ついたんじゃないかと呟いている人はいたが。
「ずっとこうしたかったの……」
愛奈は自身の顔を海斗の胸にうずめる。
高校生になればイチャイチャしたいという気持ちはあるだろう。
どうせ抵抗しても意味はないし、海斗はしばらくこうしているのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。