第4話 わたしに相応しいのはおまえじゃない!
朝。セットした髪型に、昨日アイロンをかけた制服。うん、今日もかわいい。
そして、机の上にはお弁当が2つ置かれている。
昨日はおいしかったって言ってもらえたようで何よりだ。今日は宇城くんの好きな唐揚げを入れといたから、今日のお昼は一緒に食べよう!
あれ?昨日のお昼はなにしてたって?なんか変なことがあったような…うん、夢だよな。夢だ夢。いやー我ながらびっくりしたわーなんで急にあんな夢見たんだろー不思議だなーあっそろそろ行かないと!よし!今日も張り切って…
「いってきまー」
「おはよう高坂さん」
その瞬間、私は勢いよく扉を閉めた。なんでここに、あいつが…。
「高坂さーん?ちょっ…あれ?鍵?高坂さーん?はっ!まさか何か事件に…!?高坂さーん!?」
なんでここに、赤城玲香がいるんだ…。
「いやー偶然ね!高坂さん」
いや、絶対偶然じゃない。だって今までこの通学路であなた見かけたことないもん。そんなに大通りでもないし。
ごめんなさい。夢じゃありませんでした。バリバリ現実でした。
「朝から偶然高坂さんに会えるなんて、ついてるわね!」
いや、玄関の前に立ってたよね。てか、なんで私の家知ってんだよ。
「それで、その…」
なんかちらちら見てくるんだけど…。いやなんか、目を合わせちゃいけない気がする。
「すっ、好きです!」
うん、耳も塞いでおこう。なんならこのまま立ち止まって…。
すると赤城さんが私の袖をちょんとつまんで、上目遣いでこちらを見上げてきた。
「好き…だから…」
このシチュエーション、普通ならときめくのだろうが、女と女である。私は早急に目眩を感じふらつきそうになるのをなんとか堪え、必死に目を合わせまいと関係ない方向を見る。あ、タカが飛んでる。いいなあ、私も大空へ行きたい。
「私と、付き合ってください!」
「ごめんなさい」
全然関係ないことを考えていたのに私は反射的に返事をしていた。すごいな、私。
だが当の赤城さんはといえばそんな私を褒めてはくれず、涙目でこちらを見ていた。
「な、なぜ…」
「なぜって、私には宇城くんがいるし」
「昴?なぜあんな奴を選ぶの?あんなのよりいい男なんて、世界中にたくさんいるわよ。あ、でも高坂さんに釣り合う人はそうそういないし…」
また昴って呼んでるけどなんかもう咎める気にもならない。もう赤城さんならどうでもいいや。
「わっ、私なら高坂さんのためならばどんな事でも…」
「あーはいはい」
私が投げやりにそう返すと赤城さんは不服そうに頬をプクッと膨らませた。今更だけど、あれ?この子こんな子だっけ?もっとなんか偉そうっていうか、ツンツンしていたような気がするんだけど…。
そんなことを考えているうちに、学校に到着した。下駄箱で上靴に履き替えていると、先に到着していた花梨と出会った。
「あ、舞おはよー…と、赤城さん…?」
赤城さんと目が合ったことで、怪訝な顔をした花梨に私は苦笑いでかえした。そりゃそうだよね。昨日あんなに敵対してた相手と一緒に登校してるんだもんね。でも告白のことを言うわけにもいかないし…
「花梨さん、だったわね。あなたは高坂さんと友達、もとい幼馴染らしいから言っておくけれど私は高坂さんのことを、1人の女性として愛しているの」
こいつ、言いやがった。てかあれ?私こいつに花梨のこと言ったっけ?
「え…と、赤城さん?面白い人だねー。私は吉川花梨。よろしくね」
少し驚いた表情を見せたが、花梨はスルーすることにしたらしい。そして私に赤城さんとのことも聞かないでおいてくれた。なんか知らんけど気をつかってくれたのだろう。できる親友である。
「それじゃあ行きましょう。高坂さん」
「そうだね。行こっか舞。赤城さんも、うちの舞と仲良くしてくれてありがとね。ちょっとこの子気が強いところあるけど、そこも含めてよろしくしてくれるとうれしいな」
「あら、何か勘違いしてないかしら?高坂さんは別に貴方のものではないわよ。」
「やだなー赤城さん。私はほら、舞のことなら全部知ってるから。一緒にいる時間なら誰よりも長いし…」
「時間なんて関係ないんじゃないかしら。大事なのは愛の大きさよ」
「愛って…」
なんか揉めてる…?花梨は基本的に誰かとケンカはしたことないけど私の事になるとちょっと張り詰めすぎちゃうからな…。もしかしたら心配してくれているのかもしれない。そう思った私は早々に教室に行くことにした。
「ほら、早く行かないとHR始まっちゃうよ?」
そう言うと2人とも不満そうな顔をしながらもうなづいてくれた。
昼休み。宇城くんの隣から感じる不穏なオーラを無視して私は宇城くんにお弁当を渡す。
「あっ、宇城くんにお弁当渡せたんだー」
花梨がやってきた。宇城くんは他の友達のところに行っていた。今日も一緒にお昼は無理っぽい。それなら花梨とお昼を食べようと花梨の隣の席へ移動する。するとなぜかそこには赤城さんがいた。
「あら。偶然ね。私もちょうどそこでお昼を食べようと思っていたところよ」
嘘つけ。席ちがうじゃねぇか。私が心の中でそうツッコミをするも、花梨は気にした様子はなく既にご飯を食べていた。
「そういえば5時間目は50m走だね~。舞、一緒に走ってあげようか?」
「はぁ!?やめてよ!元陸上部の花梨と一緒に走るとか、地獄でしかないじゃん」
そう言うと分かっていたとばかりに顔をニヤつかせる花梨に私は若干腹が立ったが私より足が早い花梨に何かを言うのは無理なので諦めた。
「へー高坂さんは運動が苦手なの。私は結構得意なのだけれど。もしかすると吉川さんより得意な気がするのだけれど」
すると花梨はムッとしたようで
「えーでも、私陸上部だよー?あんまりなめないでくれるかなー?私最高記録、7.3だけど」
と言い返していた。
「あら、それじゃあ競走してみる?次の時間」
「別にやってもいいけど、後で泣かないでよ?」
「そういうのをフラグっていうのよ?貴方こそ本当にいいの?高坂さんにかっこ悪いところを見られて」
「ハッ!いいよ!やってやろーじゃん!あんたこそ、舞にかっこ悪いところ見せる準備、しときなさいよ」
なんか競走することになっていた。
ていうか、仲悪いのかと思ってたけど、以外と2人って仲良いんだな。
私はそう思いながら、残りのお弁当を平らげていた。
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