推しと彼氏は違うの! 1

ーもしかしたら、NEXTのメンバーにばったりあっちゃったりして!!

就職を機に上京した私はそんなことを考えていた。

現実にはそんなことが起こるわけでもなく、大変な毎日を過ごしていた。



暑い中、お昼ごはんの店に向かう途中、1台の車が横を通る。

ー裏の窓、黒かったからもしかしたら芸能人乗ってるかも

そんなことを考えながらお店に向かおうとしていたそのとき

「あの、すみません。」

バケットハットを深めに被った男性が前方から来て、私に声をかけた。

見上げると

「!!!」

そこにはニコニコしながら私に話かける大林日向がいた。

「もしかして、僕たちのファンなのかなと思って…」

心地よい彼の声を耳にしながら、私は意識を手放した。


目を覚ますと、病院にいた。

「あっ、おかげんどうですか」看護師さんが優しく声をかけてくれる。

「えっと、あの…」

「熱中症で倒れられたんですよ。ふふっ、そうそう、救急車に同乗してきた男性からです。」

そう言いながら、紙きれを渡してくれた。

"もしよかったら、ごはんでも行きませんか?連絡待ってます"

連絡先とともに添えられた言葉にまた意識を失いそうになった。


これはドッキリなのか?

あのバラエティ番組のように長期に渡って仕掛けられるタイプのドッキリ??

家に戻ってからも紙を握り締めながら、考え続けている。

そして、"バラエティ的にもここで引っかかった方が面白いし!"と謎の思考で電話をかけることにした

ープルルルル

「はい、もしもし。」

「っ!!!」

テレビで聴くよりも低めの声

「もしかして、紬ちゃん?」

「っ、あっ、はいっ」

「体調はもう大丈夫?」

「あっ、はい、あの、ありがとうございましたっ!」

「僕も人が目の前で倒れるの初めてだったからびっくりしちゃったよ〜、でももう大丈夫ならよかった。そうだ、電話してきてくれたってことは、ごはん一緒に行ってくれるってことだよね?」

「えっ? ドッキリですよね?」

少しの沈黙があったあと、

「うわ〜そんな風に思ってたんだ〜ショックだなぁ〜」

「えっ?! 普通そう思うじゃないですかっ!!」

「ほんと、傷ついたわ〜」

「えっ、そんなこと言われたって!!」

「傷ついたぁ〜」

「ごめんなさいって!」

「一緒にごはん行ってくれたら、許すんだけどなぁ〜」

「もう! 分かりましたって!」

「じゃあ、土曜日の20:00待ってるね。」

そう言って、電話が切れた。

えっ、まって、売り言葉に買い言葉で行くって言っちゃったけど、大丈夫なの?!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る