番外編 柚希

終わりの始まり

「全部あんた達のせいよ! どうして私ばっかりこんな目に合わなくちゃいけないのよ!」


 そう言って柚希は俺に罵声をあびせる。恥も外聞も気にせず涙を流しながら。その涙を拭うこともせずに。


 俺と柚希が今いるのは学校の屋上だ。俺が屋上に呼び出したわけでも、柚希に呼び出されたということもない。なら、どうして俺達2人はまた屋上で向き合っているのか? それは、俺が学校から帰ろうと校門を通り過ぎた時に偶然にも見てしまったからである。


 屋上の安全柵を乗り越えて、風に髪を靡かせながらもそこに佇んでいた柚希の姿を。




⿴⿻⿸



 あの日から私の私生活は大きく変わった。私の周りにはもう誰もいない。


『これでやっと俺と柚希の立場が同等になった。柚希を見返していくのはこれからだよ』


 あいつはそう言って屋上から出て行った。これでやっと立場が同等? ふざけないで! 私はあんたとは違うのよ! そんなことを思っていたけど、現実はそうではなかった。同等どころか私はあいつよりも程度の低い人間になってしまった。学校に行っても誰とも話すことなくただ無意味な時間だけを過ごすだけとなってもう一週間が経過していた。


「.......むかつく」

 

 本当なら私ではなくあいつらがこうなっているはずだったのに。どこで私は間違えたのだろうか? 蒼空のことを甘く見すぎていた? いや、私と付き合っていた時の蒼空はずっと頼りなさそうなやつだった。 なら、あいつは爪を隠していたとでも言うの?


「.......本当にむかつく」


 今も蒼空はあの女とその友達と仲良く話している。クラスのみんなもあの二人を私からの被害者という認識になっている。.......せっかく社会的にあの二人を終わらせれるところまでいけたのに。


「このクラスには.......この学校には私の味方はもういなさそうね」


 だが、それでも構わないと私は思っていた。私には優吾くんがいるのだから優吾くんさえいれば私は何もいらない。そして、優吾くんなら私の受けた屈辱を何倍にもしてあいつらに返してくれる。優吾くんにはそれをするだけの力があるのだから。優吾くんは私の思いつきもしないような残虐なことでも平気でやる。みはるの復讐として蒼空達にしたことのほとんどは優吾くんにアドバイスしてもらったことだ。


「いつまでも平穏な日々が続くとは思わないでよね蒼空」


 絶対に見返してやる。私は楽しげに過ごしている蒼空達を横目に見ながら決意を新たに、今日の放課後に優吾くんに会うことに待ち焦がれるのだった。


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