第27話 立ち回りについて

「え? どういうことなの蒼空」

「黒板に書いたことを認めさせるんじゃないの?」

「浮気したことっていうのは蒼空じゃなくて本当は宮崎さんが浮気していたってことをだよな? なんで今更そっちなんだ?」

「そりゃだって俺達が今したいのって柚希に認めさせる事じゃなくて仕返しだろ?」

「そうだけど.......蒼空は一体何をしようとしてるの?」

「柚希には俺と同じ立場まで降りてきてもらおうと思ってるだけだぞ?」


 俺といのりの最終目標である幸せになることで見返すという目標にも柚希と俺が同じ立場になることは大切だ。この立場というのは今回は学校でのカーストのことだ。悲しいことに俺は学校内のカーストにおいて底辺層ににいるのだが柚希は現在カーストでいう上位層にいる。

 どこぞの似非イケメンと同じでこれまでのキャラ作りによって築いてきた信頼などによってカースト上位層にいるので柚希にはそこから降りてきてもらう必要がある。見返すにしても格上の者が自分より格下の者に嫉妬なんてするわけが無いのだから。そしてこれが結果的に仕返しにもなるのだから一石二鳥というやつだ。なんせ、俺がやろうしているのはこれまでに柚希が築き上げてきた信頼なんかを木っ端微塵にしてやろうっていうことなんだから。


「うわぁ.......蒼空が悪い顔してる.......」

「要するに夕凪くんがやろうとしてるのは宮崎さんが浮気したことを認めた会話を録音してそれを拡散することでってことだよね?」

「まぁ、そういうことだな。自分が浮気しておいてそれを人のせいにした噂を流したなんて白状すれば誰もそんな人の事なんて信じなくなるだろうからな」

「その後に黒板に書いたのも自分だって証言させられれば涼風さんを擁護する人も増えるっていうことか」

「そういうことだ」


 和真の言うように全てが嘘だったことを証言させてから黒板のことを認めさせることでいのりが人殺しなんてことに対する信憑性も下がりタチの悪いイタズラだったと判断する人がいのりの擁護にまわってくれると期待することができる。


「確かにそれなら仕返しもできて何もかもがうまくいくと思うんだけどそう簡単にいくのかな?」

「さぁ? こればっかりは全部行き当たりばっかりになるしな」

「それって大丈夫なの.......?」

「大丈夫か大丈夫じゃないかで言ったら大丈夫じゃないだろうけどこれ以外に方法もないのも確かだからな」

「確かにそうだな.......。けどまっ、蒼空ならどうにかするんだろ?」

「そうだね! 蒼空だもんね!」

「なぁ、その過度な期待はなんなんだ?」


 本当に柚希の出方次第だというのになんでこの2人はこんなにも俺に期待しているのだろうか? 別に俺は口が上手いわけでも無いので自分の思う展開に持っていくことは難しいだろう。ただ、こちらのペースにさえ持っていくことが出来たならそこそこの自信はあるが.......。


「だって蒼空って自分のことならともかく誰かのために頑張ろうって言う時は本当に頼りになるからね」

「普段からそれくらい頑張れていたなら蒼空は今頃モテモテだっただろうなっていうくらいにはな」

「いや、今回は俺が仕返しをしたいからするだけだから誰かのためって訳では無いぞ?」

「いやいや、夕凪くん。夕凪くんが今回こんなに真剣なのはいのりが絡んでいるからでしょ?」

「ま、まぁ.......それは.......」


 確かに俺に対する嫌がらせだけの噂なら俺な何も気にすることなくそのままにしていた気がする。多分俺のことだから行動を起こすこと自体をめんどくさがるのでは無いだろうか?


「いつも何かあったら結局最後は蒼空が解決してくれるもんね!」

「いのりの場合は泣いてばかりで何も話が進まないからだろ」

「うっ.......今はもう泣かないもん!」

「昨日思いっきり泣いて」

「あーあー聞こえなーい」


 本当に昔からいのりは変わらない。けど、これこそいのりらしいと言えばいのりらしいのだ。そして俺は昔から変わらない普段通りのいのりが好きだ。けど、このままだといのりは普段通りでいることをしんどく感じてしまうだろう。だから.......


「次の月曜日には行動に移そうと思う。まぁ、柚希とどうにかして話し合いの場を設けるだけなんだけど」

「.......私が話がしたいって言うんだよね」

「現状だとそれが1番可能性が高いからな」

「わかった.......」

「あと、今から話すのは当日の立ち回りについてなんだけど.......」


 もう話し合うべきことは何も無い。あとは、神のみぞ知るというやつだ。日曜日は特になにかすることも無いので1日家で過ごして月曜日を迎えるのであった。

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