第28話 対面
「あれぇ? どうして蒼空がここにいるの? 私は涼風さんに話があるって言われて来たんだけどぉ?」
「安心しろよ。ちゃんといのりも来るからさ。いのりが来るまであれだし久しぶりに話でもしないか?」
「別に私は蒼空と話すことなんてないんだけどぉ?」
「まぁ、そう言うなよ。仮にも元恋人同士なんだしさ?」
俺は今、学校の屋上にて柚希と対面していた。どうやって柚希を屋上まで呼び出したのかというのは柚希も言っていた通りいのりに放課後に話があると直接言ってもらっただけだ。これは正直ダメ元であってダメであった時のことも色々と考えていたのだが呆気ないほどに柚希は屋上に来ることを了承したのだ。.......なにかあると思っておいた方が良さそうだな。
「浮気しておいてよく言うね?」
「おいおい、それを柚希が言うのか?」
「それはこっちのセリフなんだけどぉ? 学校中でも噂になってるじゃない? 蒼空が浮気したって」
「その噂を流したのは柚希じゃないのか?」
「証拠はあるの?」
「ないよ」
「証拠もないのにそんなことよく言えるよね。もしかして私からの言質でも取ろうとしてたの?」
「言質を取ったところでどうしようもないだろ?」
「録音でもしておけばいいだけじゃない。今どきそれくらいならスマホ1台あればどうとでもなるしね?」
さすが柚希と言うべきなのか自分から浮気しておいてそれを何事も無かったかのようにこちらのせいにしてくるとかどんなメンタルをしているんだと思えば、こちらの狙いもすぐに気付いてきた。まぁ、そう簡単にいくとはハナから思っていないけどな。
「はぁ.......降参だ」
俺はそう言うと同時にポケットからスマホを取り出し柚希に画面を見せるようにしながら録音アプリのタスクを切る。
「やっぱりそんなことだろうと思ったよ。涼風さんから呼び出されたのにあんたがいる時点で怪しさはマックスだったしね」
「けど、その言い分だと自分が噂を流したってことは否定しないんだな?」
「さぁ? それはどうでしょうね?」
「それくらい教えてくれてもいいと思うんだけどな」
「仮に私だったとしてもあんたに教える義理なんて無いしね。あと、これで話は終わり? 私もう帰ってもいいよね?」
「まぁ、そう慌てるなよ。いのりも後で来るって言っただろう?」
俺がそう言ってから少しすると屋上の扉を開かれる。音につられて柚希も扉の方を振り向く。その視線の先にはいのりがいた。
「遅れてごめんね宮崎さん」
「呼び出した張本人が遅れるなんてどうかしてるわよ」
「あはは.......それを言われるとなにも言い返せないね」
そう言っていのりはゆっくりと歩いてくる。しかし、視線は柚希から外さない。柚希もいのりの方を注視している。そのままいのりは俺の隣にまで歩いてくる。
「ふ~ん。今から2人で私みたいなか弱い女の子をいじめるつもりなの?」
「いやいや、いじめられているのはむしろ俺らだからな?」
「さっきから証拠もないのによくそんなこと言えるよね? あと、涼風さん? 涼風さんのスマホで録音するつもりなら諦めてね」
「.......ねぇ、蒼空」
「おう。完全にバレてるな」
「バレてるなって.......」
「諦めて録音アプリのタスクを切っとくんだな」
俺がそう言うといのりもポケットからスマホを取り出してタスクを切る。もちろんこの時も柚希が怪しむので柚希にスマホの画面を見せながらタスクを切る。
「涼風さんが遅れてきたのもわざとだよね?」
「ぐうの音も出ないな」
「あはは.......本当にね.......」
「今度こそ帰っていいよね?」
「いやいや、録音しようとしてたことは謝るから少し話さないか? 話があるっていうのは本当だからさ」
「私は話が無いって言ったのも本当だよ?」
「まぁ、そう言わずに頼むよ」
「だったら早くしてくれない?」
さて、ここは話をどう進めてものか.......。さっきから柚希は自分が帰ろうとすることで話を急かして来るが、俺はこれがブラフであると確信している。あの柚希がいのりに話があると言われただけでこうしてホイホイ来ているのだ。絶対になにか裏があるに決まっている。そして、柚希がやろうとしていることについてはなんとなくではあるが分かっている。俺達のやろうとしたことをすぐに見破ったんのだからつまりそういうことなのだろう。.......それなら、
「柚希は自分の親しい人間を殺されたことはあるか?」
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