第20話 予想外の展開
昨日の夜は家に帰ってからもずっと何か今から出来ることは無いのかってことを考えていたら俺はベッドで横になったまま結局一睡もすることが出来なかった。幸いと言うべきなのか今日は金曜日なので学校さえ終わってしまえば明日からは休みなのでゆっくりすることができる。そうは言ってもやっぱり眠いもの眠いわけでして.......
「蒼空? ねぇ、聞いてる? 蒼空ったら!」
「ん? あぁ、悪い。ボーッとしてた」
「もぉ! またゲームで徹夜でもしてたの?」
「俺がゲームばかりだと思うなよ? 考え事してたら朝だったんだよ」
「何を考えてたの?」
「いのりには秘密だ」
「えぇ~」
ここで下手に嘘でもつこうものならいのりはすぐに俺が嘘をついていることにすぐに気付いてしまう。本当に何故かいのりには昔から俺の嘘は通じないのだ。なので俺は本当のことを言いつつもその詳細は伝えないといったちょっとした裏技のようなものを使う。これなら、嘘は言っていないし話も誤魔化せる。俺の対いのり最終奥義だ。
「そう言えばもうすぐテストだねぇ」
「あぁ、もうそんな時期か」
「そろそろテスト勉強しないとだね」
「いのりでもちゃんと勉強するんだな」
「するよ! 私をなんだと思ってるの!?」
「いやぁ、いのりって勉強とかそんなにしなくても賢いのかと。言っちゃなんだけどいのりが家で真面目に勉強してるところは想像できないから」
「まぁ、確かに家では出されたテスト課題をするくらいだけど.......。けど、ちゃんとそれでも何とかなるように授業中とかは真面目に聞いてるからね! 寝てばかりいる蒼空とは違って!」
寝てばかりと言われるのは心外ではあるが確かに授業中に寝てしまっていることは全くもって否定できない.......。だとしても、いのりもよくテスト課題を家でしているくらいで強気に出られたもんだな.......。
普通の人はテスト課題を何周もしたり教科書の内容をまとめてルーズリーフなんかに書き出してみたりするだろうけど、どうやらいのりは課題だけしかしないにも関わらず学年でも上位の点数を取っているらしい。俺なんて各科目の課題を2周してやっと80位くらいなのに.......理不尽だ.......。ちなみにだが俺の学年は全部で240人ほどだ。
「ねぇ! 今回のテストのテスト勉強一緒にしようよ!」
「ん? 俺としてはいのりに教えてもらえるならそれは願ったり叶ったりだがいのりに教えれれることなんて俺はないと思うぞ?」
「大丈夫だよ! 教えるだけでも自分の勉強になるしね! 何より私は蒼空と一緒に勉強したい!」
「そういうことなら喜んで」
「やったぁ!」
何がそんなに嬉しいのだか分からないけどいのりは教室に着くまでずっと上機嫌のままだった。そう、教室に着くまでは。
俺達はテスト勉強はどこでするかなど他愛もない話をしながらいつものように校門をくぐり昇降口で靴を履き替え教室に向かう。
「なんか、人多いね?」
「だな。何かあったのか? というか、これ俺達のクラスで何かあったのか?」
「みたいだね。どうしたんだろう?」
「まっ、行ってみたら分かるだろ」
この時点で俺はとんでもなく嫌な予感がしていた。ここ最近の噂に続いて俺達のクラスに集まる人達。俺達に関する何かがあると思うのが普通だろう。俺達というよりは俺に関すること。しかし、その考えが間違いであったことに気付くのは教室に入ってすぐのことだった。
゛ 涼風いのりは人殺しだ ゛
俺が教室に入ってまず目にしたもの。それは黒板にでかでかと書かれたこれであった。そして、それを必死に消そうと雑巾で黒板を拭いている瑠川さんの姿であった。どうして雑巾なのかはチョークでは無くそれがペンによって書かれていたからである。油性ではなく水性ペンで書かれていたのか瑠川さんが拭いている箇所の文字は薄まってきている。
「なんだよこれ.......ふざけやがって.......。おい、いのり。あんなの気にしなくても.......いのり?」
どう見てもいのりの様子が普通では無かった。確かに教室にきてこんなイタズラをされていたのなら普通でいられるわけもないだろうけど、いのりの様子は明らかに異常であった。全身を小刻みに震わせ顔も蒼白になってしまい、完全に全身の血の気が引いてしまっている。
「おい! いのり! しっかりしろ!」
「.......ごめんなさい」
そう言っていのりは教室から走り去って行ってしまった。
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