第14話 イケメンの正体
「あれ? いないのか?」
「灰崎くんあっちあっち」
「ん? やっぱりいるじゃないか! 涼風さんありがとう!」
ちっ。いのりのやつなんて余計なことを.......。俺はこのイケメン灰崎和真が苦手だ。正確には学校でのこいつが苦手なのだ。別に悪いやつでは無いのだが.......むしろ良い奴であることには間違いないのだがこのキラッキラした学年に1人はいるであろう王子様タイプの放つ雰囲気が苦手なのだ。分かりやすく言うなら、そこのイケメン。俺に近づくな。なんだか、惨めな気分になるだろってことだ。.......別に嫉妬とかじゃないからな?
「なんのようだ?」
「なんで蒼空はそんなに上からというか.......俺に厳しいんだ?」
「お前が近くにいると眩しい」
「俺は発光でもしてるのか?」
「まさか.......気づいてなかったのか.......?」
「えっ.......まさかほんとに.......」
「それで? なんの用なんだよ?」
「ノリに乗ってあげた俺にこの仕打ちは無いんじゃないかな! まぁ、用っていうのは今日部活が休みらしいから帰りにどこか寄って帰らないか?」
まぁ、どうせそんなことだろうとは思ったけど。別にそれならLINEで送って来てくれてもというか、そっちの方がこうして周りから注目も浴びずに済んでよかったんどけどな.......。まぁ、この律儀さも和真のいい所なんだろうけども。
和真はただいるだけで目立つのだ。イケメンだし。さっきは冗談で言ったが本当に和真の周りはキラキラしているように感じることもあるくらいだ。そんな和真が俺みたいなやつといるとそれはそれは注目を集めてしまうのだ。.......なんか俺、最近注目浴びてばかりな気がする。
「まぁ、断る理由もないしな」
「蒼空って本当に素直じゃないよな」
「帰るぞ?」
「冗談だから! それじゃ、今日の放課後に正門前で集合で。やっぱりめんどくさくなったとか言って帰るなよ?」
「俺が今までそんなことしたことあるか?」
「何だかんだ無いな.......蒼空ならやりそうなんだけど.......」
失礼なやつだな。俺は1度した約束を守るタイプだ。
約束をしたならどんな約束でも絶対に守れ。だから、約束をする時はその責任についても考えろというのが我が家の教えなのだ。小さい頃からずっと言われて育ってきたので約束を破ったことは1度も無い。
「そんじゃ、また放課後にな」
「うん」
そう言ってイケメンは去っていく。そして俺の方へと集まった視線も分散していく。.......和真にはマジでクラスに来るなって言っておこうかな。
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「それじゃ、今日は先に帰ってるね!」
「あぁ」
「また明日ね蒼空! ばいばーい!」
「じゃあな」
今日の放課後は和真との約束があるので今日はいのりとは帰れないので正門前までは一緒に向かうもそこで別れる。それから5分程すると和真がやって来た。
「遅い」
「いや、蒼空のクラスが早すぎるだけだからな?」
「それで、どこに行くんだ?」
「う~ん、何も考えてないんだよなぁ」
「おい」
「とりあえず、カラオケにでも行こっか?」
それから俺と和真は学校から歩いて15分程のところにあるカラオケに向かい受付を済ませて指定された部屋へと入ると、
「あぁ.......しんっどい.......」
「なら、やめればいいだろって何回も言ってるだろ?」
「今更、素が出せるわけなんてないだろって俺も何回も言ったと思うが?」
「それなら諦めてそのイケメンキラキラ王子様キャラで残りの高校生活も乗り切るんだな」
「他人事だと思いやがって.......」
「他人事だからな。あっ、そういえばいのりが俺とお前が2人で遊んでいるところを見て驚いたって言ってたぞ?」
「.......え? まじで?」
もう分かってもらえたと思うが和真の素は全く王子様系キャラでは無い。ほとんどの漫画やラノベで出てくるイケメンキャラというのは根っからのイケメンパターンが多いが和真に関しては完全に作り物だ。あることをきっかけにモテたいと思ったこの男は何を思ったのか少女漫画を読み漁りこのイケメンキャラを完成させていったのだ。
まぁ、そのあることっていうのも単純なもんで好きな子が出来たからどうにかその子に振り向いてもらいたいといったド定番のやつなんだが。そんでもって、和真が好きになった子っていうのがいのりだったりもする。それで幼馴染の俺の協力を得ようと必死に俺に懇願してきた時の和真は今思い出しても傑作だった。
「お前まだいのりのこと諦めて無かったのか?」
「いや、そこは踏ん切りはついているんだけど昔の癖というか涼風さんには自分の情けないところは見られたくないというか.......」
「ふ~ん」
「それに、蒼空と涼風さんって今付き合ってるんだろ?」
「.............え」
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