第10話 待ち望んだ昼休み


 朝からずっとクラスメイト達からの視線を浴び続けながらも学校生活を過ごすこと4時間とちょっと。俺がずっと待ち望んでいた昼休みはついに訪れた! 

 俺はクラスメイトからの視線から逃れるべく弁当を持って教室を出る支度を始める。お前、目標忘れたのかって? 忘れてはいないさ。ただ、考える時間という名の1人の時間が欲しいだけだ。


「いーのり! 今日はお昼ご飯一緒に食べよ!」

「うん! もちろんいいよ!」

「やった! 夕凪くんも一緒に食べよ!」

「.......へ?」


 いや、ちょっと.......俺は1人の時間が.......。ここで断ることは簡単だがここで断るとクラスでの悪目立ちをしかねない.......。しかし、1人の時間も欲しいし.......ぶっちゃけ、普段は注目なんか浴びることの無い俺がクラスの人達からの注目を受けるってだけで気疲れしてしまうのだ。

 この現状を打開するには俺だけではしんどそうだ。ということで、俺はすぐ近くにいる頼りになる幼馴染こといのりにアイコンタクトを送る。するといのりはすぐに頷いてくれた。よし! さすがはいのりだ!


「いいね! 蒼空も一緒に食べよ!」

「おっ、夕凪くんも既にお弁当を持ってるみたいだし中庭にでも行こっか!」

「.......はい」


 頼りになるはずの幼馴染は全く頼りにならなかった.......。いのりも仮にも俺の彼女なら他の女を近づけたくないとか恋愛漫画なんかでよくある嫉妬みたいなのは無いの? .......無いんだろうな。俺がいのりのことを今は彼女というより幼馴染として見てしまってるいるようにいのりも俺に同じなんだろうな.......。

 それから俺達3人は中庭に移動し空いていたベンチにいのりを真ん中にして3人並んで座る。


「さてと、さっそくだけど夕凪くんはどうして急にイメチェンしたの!?」

「どうしてって言うか.......いのりにするように言われた? みたいな?」

「そう言えばいのりがプロデュースしたんだったね!」

「そうだよ! 蒼空って顔だけ見てもそこそこかっこいいのに普段から適当にしてるからもったいないなぁって思ってね!」

「確かにちゃんとしたらかっこいいしね! これだったら柚希ちゃんにフラれることもって.......ごめん! 今のはデリカシーがなかったね!」

「いや、別に気にしてないしいいよ」


 柚希と俺が付き合っていた事は柚希が広めていたので周知の事実となっており、別れたことも柚希によって広められていた。もちろん、柚希の浮気が原因で別れたことを知っているのは俺と柚希といのりだけだ。どうやら、柚希の浮気相手であったチャラそうな男はこの学校の生徒ではなかったらしい。


「もう光莉ったら」

「ごめんなさい。私ってついつい余計なことまで言っちゃうんだよねぇ。本当にごめんね?」

「いや、別に本当に気にしてないからいいよ。別れたことは事実だしね」

「.......夕凪くんって顔だけじゃなくて性格もイケメンだったんだね! もう私がもらっちゃおっかな!」

「あはは.......光莉? 面白い冗談だね?」


 そう言っているいのりの目は笑っていなかった。こ、怖い.......。ここはどうにかして話を逸らさないとって.......何を話せばいいのか全く分からん! とりあえず、何か無難な話題で.......


「2人は友達ってことでいいんだよな?」

「うん! いのりとは中学の時にテニス部で同じだったんだ!」

「あぁ、なるほどな。ということは、俺とも中学は同じだったんだな」

「そっか! いのりの幼馴染なんだったら中学も同じだ!」

「いのりとは幼稚園から同じだからな」

「幼稚園の頃のいのりかぁ。いのりってどんな子だったの!?」


 いのりの幼稚園時代かぁ。どんな子って言われると意外と難しいものだな.......。


「幼稚園の頃のいのりって言うとよく泣いていたってイメージだな」

「ちょっと蒼空!?」

「その話をもっと詳しく!!」

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