第8話 目標の意味
いのりから最初の目標を言い渡されてから早くも2日経過していた。土曜日に目標を言い渡されたので今日は月曜日だ。
いのりには ゛月曜日までに今回の目標の意味を考えておくこと!゛ という課題も与えられていたので俺はこの2日間というか土曜日はいのりと出掛けていたので実質的には昨日1日だけどちゃんと考えたりもしてみた訳だが、この目標の意図は分かった気がするけど意味は全くわからずにいた。
俺がいのりの言う目標の意味がわかっていなかったとしても、学校に行くためにマンションを降りるといのりはマンションの下で俺を待ってくれているわけでありまして.......
「おはよって.......その様子だと私の課題の意味は分かってもらえ無かったみたいだね.......」
「.......まだ何も言ってない。まぁ、その通りではあるんだけどさ。けど、目標の意図はわかった.......と思うぞ?」
いのりは本当に何で俺がいのりに出された課題の答えが分からなかったことが分かったのだろうか? 俺は普段と変わらずいつも通りのはずなのに.......。
「それじゃあ、蒼空の思う目標の意図は?」
「あれだろ? 俺が注目されることで柚希を見返すみたいなそんな感じだろ?」
「まぁ、ニュアンス自体は間違ってないんだけど.......別に蒼空が注目されることが見返すことになるわけじゃないからね?」
「?」
「蒼空がいい意味で注目され始めたらもったいないことをしたかもしれないって思わすことが出来るか・も・しれないけど、悪い意味だと宮崎さんはむしろ喜ぶんじゃないかな?」
あぁ、なるほど。確かにいい意味でクラスの女子達からの注目を受けることが出来たなら少しは見返せるかもしれないけど、悪い注目だとむしろ柚希を喜ばせてしまうかもしれない。.......いくら柚希でも喜びはしないだろうけど.......多分。
「か・も・ってことは今回の目標は柚希を見返すことはそんなに重視していないっていうことでいいのか?」
「おっ、蒼空にしては鋭いじゃん! その通り!」
それから、なおさら目標の意味が分からない。俺達の最終目標としては柚希が思わず別れたことを後悔してしまうくらい幸せになることで見返すといったものだ。改めて考えるととんでもなく難しいよなこれ.......。それは今は置いておくとして、柚希にあまり関係の無い目標?
「なぁ、そう言えばいのりは何で俺が意味を分かってないって分かったんだ? 俺はいつも通りだったと思うんだが?」
「うん。蒼空はいつも通りだね。だから、分かったの」
いつも通りだからこそ分かった? なんだ? 俺は注目を浴びるために仮面でもつけてきた方が良かったのか? けど、それだと悪い意味で目立ってしまうことになるよな? .......分からん。
「蒼空ってイケメンだよね」
「前に言うてた性格イケメンってやつか?」
「ううん。顔が」
「馬鹿にしてるのか?」
「それだよ!」
「俺が馬鹿だって言いたいのか?」
「それも!」
「...................」
いのりは俺に喧嘩を売っているのだろうか? いや、間違いなく売ってるな。そういうことなら喜んで買ってやろう。いのりと喧嘩して勝てたためしなんて無いんだけどな!
「それじゃあ、蒼空って本当に優しいよね? 泣いている子とかほっとけないタイプだし。蒼空って本当にいい人だと私は思うよ?」
「.......何だ急に。頭大丈夫か?」
「私が言いたいのはそういうところだよ!」
「意味が分からん!」
「だから! 私が言いたいのはどうして蒼空はそんなに卑屈なの! 素直に喜びなよ! 私、蒼空のいいところいっぱい知っているのに本人がそれを全部否定しちゃうのはどうかと思う! 謙虚なのは蒼空の美徳なのかもしれないけど、それもやり過ぎればただのわがままだからね!」
「!?」
「それに、蒼空って人からよく見られようとしないよね? どこか諦めちゃってるみたいな」
確かにいのりの言う通り俺は人からよく見られようと努力することはほとんどなかった。柚希と付き合っていた頃は少しでも見栄を張ろうと食事などに行った際には奢ったりもしていたけどそれくらいであった。
俺が意識していたのは良い人として見られることじゃなく、誰とでも馴染める人。分かりやすくいうなら普通の人だ。特に秀でているものはなくただの平凡な人。
「なら、今回の目標の意味っていうのは俺自身の向上心を上げるってことなのか?」
「まぁ、そういう事だね。もっと分かりやすく言うなら蒼空は自分にもう少し自信を持つべきだってこと! 自分で自分を認められなくても周りの人から認められたら自分でも認めざる得なくなるでしょ?」
それで、クラスの女子からの注目を浴びるってことに繋がるのか.......。確かにいのりの言い分は理にかなっているようにも思えるけどこれって大分難しくないか?
「なぁ、具体的に注目されるって俺は何をすればいいんだ?」
「さぁ? それは蒼空に任せるよ!」
「.......丸投げでございますか」
「だって蒼空。今日ワックス付けてきて無いでしょ?」
「それが?」
「はぁ.......髪の毛を整えただけでも大分印象が変わるっていうのは土曜日によくわかったでしょ?」
「あぁ、それはって.......イメチェンってことか?」
「そういうこと! いい意味で注目を浴びるきっかけを私は用意してあげてたのに!」
.......なるほど。道理でマンションの下に降りた段階でいのりに目標の意味を俺が分かっていないことがバレてしまったわけだ。確かに自分でもびっくりするレベルの変化だったんだし、クラスメイトからしたら注目しないわけが無い。
「いや、けど.......普段より髪の毛も短くなってるし」
「それだと、ただ髪の毛を切ったんだなで終わっちゃうでしょ!」
「.......すいませんでした」
「もう! けど、不幸中の幸いというべきか蒼空って現時点においてはクラスの中でも目立ってないし明日でも遅くないと思うから明日は絶対にちゃんとしてくるんだよ!」
「.......はい」
そして今日1日の学校生活ではほんの数人の人から髪の毛も切ったんだねって言われたくらいで基本的にはいつもと何ら変わらない1日であったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます