第1話 最初の1歩
彼女に浮気され、そんな彼女を見返すべく幼馴染と付き合うことになった次の日の朝。俺は今、全く今の状況を理解出来ずにいた。
彼女に浮気され別れたその日のうちに俺にも別の彼女ができた。意味がわからないだろう? この現状を詳しく説明してくれる人がいるなら今すぐ紹介して欲しい。いや、まじで。
「とりあえず、学校行くか.......」
一晩寝たおかげか気持ち的には自分でもびっくりするくらいには落ち着いていた。ただ、現状を理解出来ていない。ただ、それだけだ。
俺はいつものようにベッドから出ると母親が用意してくれていた朝食を食べ終わるとスマホで今日のニュースやらを確認したあと、歯磨き洗顔をしてから制服に着替えて家を出る。
「おはよ!」
「.......なんでいんの」
俺は家を出て.......というよりは、今俺が暮らしているマンションの部屋を出てマンションの下に降りていくとそこにいのりはいた。
「もぉ.......朝から蒼空を待ってくれていた彼女になんて言い草なの?」
「彼女って言ってもなぁ.......急に態度を変えろってのも無理な話だと思うぞ?」
俺といのりは幼稚園から高校2年生である現在に至るまでずっと同じ学校に通い続けている。そのため、昔からよく一緒に遊んだりしていたし、親同士も仲が良いので今でも家族ぐるみで出掛けることもあり、旅行にも行ったことがあるくらいだ。
そんないのりを相手に彼女としていきなり接しろっていうのはハードルが高すぎやしないだろうか?
「私としても、いきなり蒼空に彼氏面されても困るだけなんだけどね」
「おい」
「あはは。けど、一緒に学校に行くくらいならいいでしょ?」
「それくらいなら全然いいけど」
「それじゃ、行こっか」
そう言っていのりは歩き出して行くので俺もいのりに続いて歩き出す。考えてみればいのりと一緒に学校に登校するのも久しぶりな気がする。小学校の頃はずっと一緒に登校していたが、中学生になるといのりはテニス部に入部したため朝練が始まり、それからは一緒に登校することは無くなっていた。もちろん俺は中学高校ともに帰宅部だ。
「そう言えば、いのりはなんで高校ではテニス部に入らなかったんだ?」
「それはねぇ! 遊びたかったから! 中学時代は部活ばっかりで遊ぶのも我慢することが多かったから高校では遊ぼうと思って!」
「あぁ、確かにテニス部って大変そうだもんなぁ」
「本当に大変だったよ.......けど、高校では部活に入らなかったから時間を持て余してる感もすごいんだけどね」
残念なことに俺にはその感覚は分からなかった。なんせ、中学からの生粋の帰宅部なので時間があればゲームばかりしていた。もちろん友達と遊びに行くこともあったが周りの人はほとんどが部活に入っていたので家で過ごすことが多かったのだ。
「なので! 私の彼氏になった蒼空には私と一緒にいっぱい遊んでもらうからね! それが昨日言ったことにも繋がるしね!」
「昨日言ったことっていうのは見返すってやつか?」
「その通り!」
浮気した彼女を見返してやる。そのために俺はいのりと付き合うことになったが、そう言えば見返すって具体的に何をすれば見返せるんだ? いのりが言うには俺が羨ましがられるくらい幸せになればいいみたいな感じのことを言っていたが、具体性が無さすぎる.......。
「なぁ、見返すために幸せになるって言っても一体は俺は何するんだ?」
「見返すだけなら簡単だよ? ただ、相手に羨ましがられるくらいに幸せになるのは難しいんだけどね」
「見返すだけなら簡単って.......何をするんだ?」
「え? そんなの、蒼空がイケメンになればいいだけでしょ?」
「俺に整形しろと?」
一体これのどこが簡単と言うのだろうか? そんな簡単にイケメンになれるなら誰も苦労はしない。仮に整形手術を受けたとしても、現状よりは良くなるかもしれないが元が平凡な顔立ちの俺が少し顔をいじったところでそんな劇的にイケメンになれるとも思わないし.......あれ? おかしいな.......目から汁が.......。
「別にそんな事しなくても蒼空なら大丈夫だと思うよ?」
「いのりの美的感覚は大丈夫か?」
「.......それ自分で言ってて悲しくならないの? それに私の美的感覚は大丈夫だよ」
「...................」
「全く私を信用してない目だね.......。それなら、ちょうど明日は土曜日だし暇でしょ?」
「まぁ、とくに予定は無いけど.......」
「じゃあ、決まりだね! 私が蒼空をイケメンにしてあげる! まずはそこから始めよっか!」
そんなうまい話があるとも思えないが、いのりに任せてみるとしようかな.......。それに、まずはそこからということは奇跡的に俺がイケメンになれたとしても見返せたことにはならないそうだ。
さっきのいのりの口振りからするに、それだけだと俺が羨ましがられるくらいに幸せにって言うには弱いのだろうか?
そんなことを考えながらもいのりと雑談をしながらしばらく歩いていると学校の前まで到着する。
「あれ? 蒼空じゃん。おはよう!」
「.......柚希」
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