第22話 不本意な思いと苦しみと

 ミクの健康診断が無事終わり、一人きりの部屋でベットで横になっていたミク。声が出せず、少しまだ頭が回らずボーッとしていると、ベットの隣に置かれたテーブルの上に絵本が置かれているのに気づいて、ゆっくりと体を起こして絵本に手を伸ばすし、絵本を手に持って、ページをめくり紙をなぞる。いつもなら文字が現れるのが、何も起きない絵本に、しょんぼりしていると、スッと絵本を取られた。顔を上げると、絵本を持ち睨んでいるレイがいた。その姿をミクがボーッと見ていると、視線に気づいたのか、ミクに優しく微笑むレイ。スッと絵本をなぞり、物語が動き出しすと、ミクに絵本を手渡した。ミクが動く絵本に見入っていると、コンコンと扉を叩く音が聞こえると、女性隊員が部屋に入ってきた


「レイさん、会議の時間です……」

「ああ、すまないね。今、行くよ」

 二人が部屋を後にすると、また一人部屋に残ったミク。

一人きりと落ち込む暇もなく、絵本はページを勝手にめくり勝手に物語が進んでいた




「ちょっとリコ、ちゃんと食べなさいって」

「んー。分かってるよ……」

 ミクの様子に気づくようすのないリコ達は、遅いお昼ご飯を食べていた。だが、リコはミクのことが気になり食べる速度も遅く、はぁ。とため息ばかりついていた

「二日分の仕事も溜まってるんだし、ちゃんと食べないと……」

 モモカも心配そうにリコを見ていると、三人を探していた隊員が駆け寄ってきた

「あの……みなさん」

 恐る恐るリコ達に声をかける隊員。嫌な予感を感じて、リコが慌ててご飯を急いで食べ始めた

「ミクさんの会議に参加するようにと出ています。今から会議室に来れますか?」




「リコ君か。体調はどうかね?」

「問題ありません」

 ずらりと本部の幹部達が集まった会議室に、緊張した面持ちで答えるリコ。その様子をクルミとモモカが部屋の片隅で見守っている

「魔力はどうなっている?」

「そちらの方も変化ありません。明日にでも任務につけます」

 とリコが答えると、少し静まり返る会議室。怖くなって少し振り返って後ろにいるクルミとモモカに、リコが助けを求めている

「そうか、ならこの件に関しては、三人は任務終了ということで……」

「えっ?なんで……」

「本の力とあの子の為だ」

 重々しい声に、何も言い返せないリコ。遠くで座って聞いているレイを見ても、レイは気づかないふりをしている

「それじゃあ、これにて会議は終了。また、なにかあれば集まるということで……」




「どうしたの?また不機嫌そうな雰囲気だして」

 会議後、リコの部屋のソファーに座りのんびりしているクルミとモモカ。リコはベットに入って、枕に顔を隠して、二人に気分を悟られないようにしていた

「納得いかないの。なんで、ミクと離れないといけないのさ」

 八つ当たりついでにクルミに枕を投げるリコ。枕を受け取ったクルミは、はぁ。とため息ついた

「仕方ないでしょ。そう指示が出ちゃったんだから」

 と言うクルミの隣に座るモモカが、二人のやり取りを見て、困った顔をしていると、突然、リコがガバッと起き上がった

「そうだ!」

 と言うなり、ソファーに座る二人の元に駆け寄るリコ。クルミを挟んで、ニコニコと笑って二人に話しかける

「今から、ミクの家行こうよ!」

「えっ?今から?なんで?」

「何かミクの事、分かるかもしれないじゃん。前も雨降ってすぐ帰ってきたし」

 リコの提案に、クルミとモモカが目を合わせて困った表情にをしている

「そうだけど、勝手に動いたら怒られるよ」

 とクルミが言うと、モモカも頷く。だが、心配する二人の気も知れず、リコが二人の手を思いっきりグイッと引っ張っり、ニコニコと笑って部屋の入り口へと歩いていく

「大丈夫、大丈夫。それより、見つかる前に急いで行こう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る