第21話 途切れ途切れのうた

「あれ?ここ、どこ?」

 目が覚めたミク。頭が回らず、ぼんやりとしながら、辺りを見渡すと、また視界は真っ暗。その場にペタンと座り込んで、何が起きたかを思い出す


「えーっと……私、起きて本を読んでたはずじゃ……」

 少しずつ思い出してきた頃、遠くから誰かの声が聞こえてきた。真っ暗の中、声のする方に歩きだす

「お母様のうた……」

 唄声を思い出し足を止めるミク。段々と途切れ途切れになっていく唄声。うたを忘れないように小さな声でミクも一緒に唄っていると、突然聞こえなくなった唄声に、ミクの唄声も止まり、少しうつ向き首をかしげ悩みだした

「あれ?確か、続きって……」





「……ミク!」

 うっすらと目が開いたミクに気づいて、リコが叫ぶ

「クルミ!モモカ!ミクが目を覚ました!」

 慌てて少し離れて、話していたクルミとモモカを呼ぶと慌てて二人が駆け寄ってきた。少し顔を動かして三人の方に向いたミクに、モモカが慌てた様子で、部屋の入り口に走っていく

「私、お医者さん呼んでくる!」

「リコ、私はレイさんを呼んでくるから、ミクを見てて!」

「えっ?わ、わかった……」

 モモカに次いでクルミも慌ただしく部屋を出ていくと、残されたリコが、そっとミクの頭をそっと撫でた

「ミク、大丈夫?」

 リコの問いかけに、ボーッとしていて返事のないミク。それでも目を覚ましたことにホッとしたのか、リコが優しく頭を撫で続けている




「あら、意外と早いお目覚めですね」

 いつの間に来ていたのか、リコの後ろにレイがミクに話しかけてきた。驚くリコを無視して横を通りミクの様子をうかがっている。レイと一緒にきたクルミもリコの隣に来て、レイとミクの様子を不安そうに見ている

「あまり体の負担にならないように、弱く魔術をかけていたんだが、ちょっと困ったな……」

「また、術をかけるんですか?」

「いや……」

 と言うと、まだぼーっとしているミクに、レイがクスッと笑って話しかける

「両親には会えたかい?お話もできたかな?」


「あの、レイさん……」

 リコとクルミが、レイがミクに問いかけた言葉に戸惑っていると、リコ達の後ろから聞こえてきた声に気づいて振り返ると、部屋の入り口にモモカが呼んだ医師達が、リコ達が離れるのを待っていた

「おや、失礼。検査をするなら出ないといけないね」

 クスッと笑って部屋を出ていくレイ。その後に続くように、ぞろぞろと医師達が部屋の中を入ってくる

「三人も一旦、出てください」

 と看護師に言われても、リコは出るのをためらっていた。クルミとモモカに諭されて、しょんぼりと部屋を出ていく

と、先に出ていたレイの後ろ姿を見かけて、リコが声をかけた

「あの……レイさん、私達これからどうしたら……」

 声に気づいて振り返るレイ。しょんぼり落ち込んでいるリコの姿を見て戻ってきた

「少し待てば、また会えるだろう。それまで……」

 と途中で話を止め、リコ達の間を通っていく。レイの後ろ姿を見ている三人の視線に気づいて、止めていた話の続きをクスッと笑って三人に伝えた

「美味しいものを食べて、残った仕事でもしておくように」

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