第23話 素敵な友達に挨拶を

「大丈夫?勝手に抜け出して」

 後ろを時々振り返りながら進むモモカ。ふわりふわりと空を飛んで、目的地のミクの家へと進んでいく

「いつも勝手に出掛けてるし。大丈夫だよ」

 モモカの少し前を、リコとクルミも同じくふわりふわりと、浮いて進んでいく



「あっ、ここだ」

 夕暮れが近づいてきた頃、やっと辿り着いたミクの家。少し疲れた様子のモモカを置いて、リコとクルミが一足先に家の中に入っていった

「本当に大きい建物ね……」

 家の中を見回していると、高い天井や広いリビング、見慣れない置物に、見とれているクルミ。

「ねー。森の中にあるっても、こんな大きな建物、見つからなかったなんて……」

「そうだね。私とモモカが来た時も、偶然っちゃ偶然だもん……」

 と、リコがモモカに返事をしながら奥の部屋を開けると、会話の途中で止まった。部屋の扉を開けたまま動かないリコに気づいて、クルミとモモカが駆けつける

「リコ、どうしたの?」

 二人も部屋の中を見る。特に変哲もない寝室に、恐る恐る部屋の中に入っていく

「ミクを見つけた場所だ……」

 部屋の奥の大きな窓を開け、庭へと出ていくリコ。後を追うようにクルミとモモカも庭へと出できた

「見つけた時、バタバタしてたけど、こんなに広かったんだ……」


「あれ?」

 庭の真ん中まで歩いた時、リコがキョロキョロと辺りを見渡した

「何か、聞こえない?」

 後ろにいたクルミとモモカに問いかけると、二人とも不思議そうな顔をしている

「いや、何も聞こえないけど……」

 二人も一緒に広い庭を見渡していると、リコが少し上を向いて、指差し見入っている

「ミク……」

 ポツリと呟いたリコの言葉に、クルミとモモカも指差す先に目線を向ける。リコ達のいる場所の上にある二階のベランダから、こちらを見ている人影が見えた。口元に手をあて、クスクスと笑い、リコ達を見ている女性が一人いた

「違う。多分、ミクのお母さんじゃ……」

 うっすらと見える顔を確認すると、少し後退りするクルミ。モモカが、女性が胸元にぎゅっと掴んでいる何かに気づいた

「あれって、ミクちゃんが持ってた無くなった同じ本じゃ……」

 とモモカが話しているとまたリコが、辺りを見渡しはじめた


「うたがきこえる……」

 そう呟いたリコ。だが、その瞬間力が抜けたようにフラッと倒れた

「リコ!」

 慌てて二人がリコのもとに駆け寄ると、段々と大きく聞こえてくる唄声に、2階にいる女性の方を見ると、まだ三人を見て微笑んでいる。やがて、はっきりと聞こえてきた唄声に、モモカも力が抜けたように倒れてしまった

「モモカ……」

 バタンと倒れた音にクルミが振り向く。突然、眩暈が起きて、クルミもフラッと倒れてしまった




「ミクに素敵なお友だちが出来たのね」

 三人の側でクスクスと笑い、呟く声が聞こえる。倒れたまま動かないリコ達を女性が見ていると、後ろから近づいてくる足音が聞こえてきた

「アマネ、何をしているんだい?」

 声をかけられ振り向くと、呆れながら女性の側に近寄る男性が一人。その姿を見るなり嬉しそうに男性のもとに駆け寄っていく

「ライさん。ミクのお友だちに、ちょっと挨拶をね」

「それは素敵なことだ。だが、もう急がないと……」

「あらあら、もうこんな時間?」

 空を見上げると、夕暮れだった空がいつの間にか薄暗くなっていた。すると、アマネがまだ倒れているリコ達のもとに戻って、三人の頭をそっと撫でてクスッと微笑んだ

「本の為にありがとう。ミクのこともよろしくね」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る