第8話 この世界の未知なる力

「どうしよう……。もう一日以上一緒にいるけど、進展もないし……怒られるよ……」

 お風呂の後、ミクを寝室に案内してリコ達三人は、ミクのいる部屋の前で、話し合いをしていた。ミクがずっと離さない、あの本を持ってくるという任務を果たしていないことに、リコが部屋を出てからずっと落ち込んでいた

「まだ来て一日目でしょ?ミクだって、意味が分からないまま、ここに連れてこられてるのに……」

 モモカがリコの頭を撫でて励ましていると、クルミが呆れながらリコに話しかけた


「そうだけどさぁ……急いで本を持ってこいって言われたのに……」

「ミクちゃんと本が、ここにあるのなら許してくれるよ。それよりクルミ、これからどうする?」

 更に落ち込んでいくリコを、頭を撫で続けて微笑み励ますモモカ。どうするかと話しかけられ、しばらく一人考え込むと、ふぅ。と一つため息をついて、リコに話しかけた

「とりあえず、レイさんに今日の報告をしようか。リコはミクと一緒に寝ておいて」

「それなら、お安いご用だよ。報告よろしくね」

 クルミの提案を聞くなり、怒れないですむと思ったリコは、ご機嫌でミクのいる部屋にすぐ戻っていった


「リコの、あの明るさが本当羨ましいわ……」

 バタンと部屋の扉が閉じるなり、はぁ。とため息ついて笑うクルミ。モモカもリコを見てクスッと笑う

「そうね。まあ、そのお陰であの子も少しは笑ってくれてるから助かるわ」

 と話をしながら部屋から離れていく二人。今日の出来事の報告へと向かう途中、気分を変えようとリコの話をして盛り上がる


「でも……。ミクちゃん、魔法が使えないなんて……」

 もうすぐ目的の場所に着く頃、ふとモモカがミクのことを思い出して呟いた

「使い方が分からないだけなのかも……。あの子の周りもわざと、魔法を使わないようにしていただけかもしれない。急いで、ミクのことをレイさんに報告しましょ」

 クルミが語気を少し強め話しながら、歩く速度が早くなるクルミ。モモカも早歩きで後を追う

「この世界に、魔術が使えない人がいたとなると……」

 と言うと、歩んでいた足を止め深刻な表情になったモモカ。少し前にいたクルミも足を止め振り返り、モモカを見て頷いた

「本のこともある。慎重にあの子から、もっと話を聞かないといけないわね……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る