第7話 優しい思いに甘えて
「おいで。髪洗ってあげる」
とリコに言われて、前に座って長い髪を洗ってもらうミク。施設にある女性用の広いお風呂場には、他にもたくさんの女性隊員達が、のんびりとお風呂に浸かっていた
「あの……ここはなんなのでしょうか?不思議な服を着ている人ばかりですが……」
来る途中に見た人達を思い出して、少し顔を上げてリコに問いかけるミク。髪を洗いながらリコはその質問に答えていく
「ここはね本部って場所だよ。魔術本部って知らない?」
リコの話に首を軽く横に振って否定すると、隣にいたクルミが話の続きを話はじめた
「ここは、悪いことをする人が現れたら捕まえたり、未然に防ぐ為に作られた場所だよ」
「えっ?でも私、何も悪いことは……」
慌てるミクに、リコがクスッと笑って頷いた
「ミクは悪いことしてないよ。私達は、その本に用があるだけだから」
「でも、これはお母様の大事な本で……」
お風呂にも持ってきた本。濡れないように袋に何十にも包んでいる本を膝の上に置いた
「この本、読んだことあるの?」
モモカが聞くと、まだ髪を洗ってもらってるミクは小さく首を横に振って否定した
「いえ、お母様はいつも隠しながら読んでいました。私にはまだ早いと言って……」
「そっか……」
二人の会話が終わると、ミクの髪を洗い終えたのか勢いよくシャワーをかけて泡を流すリコ。流し終えるとミクの背中も洗っていく。会話が止まって、のんびりと体を洗うミク達。いつの間にか、お風呂場にいた人達も少なくなってた
「湯船あいたよ。一緒に入ろう」
リコがミクを湯船に誘い、モモカとクルミも一緒に入って、バタバタしていた一日の疲れを取ろうと、ふぅ。と大きく一息ついた
「あのう……。さっき、魔術本部って言ってましたよね?」
恐る恐る近くにいたクルミに問いかけるミク。のんびりしていたクルミが、その問いかけに笑って答えた
「そうだけど、どうして?」
「魔術ってことは、魔法ですよね?使えるんですか?本みたいに!」
目を輝かせて聞くミクに、三人は目を見合わせて、戸惑い不思議そうな顔をしている
「えぇ……。そうだけど……」
「凄いです!羨ましい!今度、魔法を使うところを見せてください!」
質問に答えたクルミに、期待してグイグイと近寄ってくるミクに、クルミがちょっと困った顔をしている
「えーっと……。ミクちゃんは、魔法を使えないの?」
二人の様子を見ながらモモカが問いかけると、ミクは何度も頷き嬉しそうに話はじめた
「はい。昔、本で魔法があると知って、一度見てみたいと話していたのですが、お母様もお父様も、お手伝いさん達もみんなムリだと言って笑っていましたから……。皆さんが魔法を使えるのなら、ぜひ見てみたいです!」
会って初めてテンション高く話すミクを、何も言わず様子を見ている三人。本を抱いて三人から離れ、嬉しそうな顔をしているミクの姿を見て、リコがモモカとクルミに話しかけようとした時、クルミが突然立ち上がり、ミクに声をかけた
「……ミク、のぼせる前に出ようか。魔法は今度見せてあげるね」
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