第9話 寂しさを忘れるように
「お母様……お父様……」
誰もいない部屋で、本を抱いてポツリと呟くミク。電気もつけず真っ暗な部屋で、ベッドに座っていた。部屋の前で話し合いをしているクルミ達の声が、時々聞こえている。リコの声が聞こえたと思った時、ガチャと部屋の扉が開いた
「泣いてた?ゴメンね」
電気をつけると目を赤くしたミクがリコを見ていた。ミクの隣に座って、頭を撫でるリコ。しばらく二人無言のまま時間が過ぎていった
「あの……お母様達は……」
「ミクのお母さん達は、私の上司達が今も探しているから安心して」
不安そうな顔で話しかけたミクに微笑み抱きしめると、小さく頷いたミクに、また頭も撫でてのんびりした時間が過ぎていく
「朝、お家で会ってからバタバタだったもんね。ゆっくり休んで」
と、リコの言葉を聞くなり、いきなり立ち上がり部屋から出ようと走り出した
「やっぱり、お家に帰ってきてるかも……」
部屋のドアノブに触れたとき、リコがミクの腕を掴んで止めた
「待って。今日はもう遅いし、外も暗いから、部屋から出すわけにはいかないよ」
「でも、帰らなきゃ……お母様が心配する……」
「明日、お家に帰れるか聞いてみるから、今日は外出ちゃダメだよ」
リコがそう話すと腕を掴まれたまま、うつ向いてしまったミク。ふぅ。とため息ついてミクの腕をそっと離した
「一緒に眠るから、休もっか。ちょっと、寝相悪いから邪魔するかもしれないけど……」
リコに言われてベッドに戻るミク。一人だと大きいベッドも、隣にリコが入って狭くなり、寝返りを打つのも少し躊躇して、ちょっと眠りづらそうな様子
「ねぇ、ミクのご両親はどんな人なの?」
ベッドに入ってしばらく経った頃、ぎゅっと目をつぶってみても、眠れないミクに気づいて話しかけるリコ。すると、リコの言葉を聞くなり、体を起こして嬉しそうに話はじめた
「えっと……お母様は、とても優しくて、いつも私を抱きしめてくれて、怒っている姿を見たことない、とても素敵な人です。お父様は、いつも忙しいとあまり帰ってこないのですが、いつも笑って話をしてくれます。それに、私が寂しくないように、いつもお手伝いの方達が私の側にいてくれて……」
と、楽しそうに話すミクを見て、リコも体を起こして話を聞く
「そっか、ミクはお母さん達が大好きなんだね」
「はい。みんな優しくて、いつも笑ってくれていました」
と言うと布団に入り、本を両手に持つと上に掲げて、本を見つめている。そんなミクを見ながらリコも布団に入って、まだまだ続くミクの話に聞き入っていると、落ち込んでいたミクも少しだけ機嫌も良くなってきた頃、ウトウトと目を擦り眠たそうなミクに、リコが布団をかけ直して、電気を消そうとベッドから降りた
「明日は朝から帰る準備もいけないから、もう眠ろう。お休み」
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