第3話 お願い事の前に
「お願い!その本ちょっと貸して!」
家からずっとリコにおんぶされ、知らない施設に連れてこられ、施設にあった部屋のベッドに座るミク。リコの話を聞いて、本をぎゅっと抱きしめ、うつ向いて首を横に振り嫌がるミク。ずっと、頑なに本を渡すそぶりも見せず、本を抱いたままのミクに、リコも負けじと本を渡すようずっとお願いをして続けていた
「汚さないし、すぐ返すから。ねっ」
笑って聞くリコに顔を背けて、やっぱり拒否するミク。
それを見るなり、はぁ。とため息ついて後ろで壁に背もたれて見ていたモモカに、話しかける
「ねー。見てないで、助けてよ……」
と、泣き声をあげるリコを見て、モモカもはぁ。大きくため息ついて、ミクとリコの所に話ながら近寄ってきた
「だってね。初めて会った人に、知らない場所に連れられて、大事な本を見せろって言われても、誰だって警戒もするでしょ」
「そうだけどさぁ……私だって本を借りないと怒られちゃうし……」
モモカがベッドに座るミクの前につくと、屈んで少し顔をあげ微笑むと、ミクが目を合わせないように、少し顔を横に向けると、モモカがまた微笑みミクに話しかけた
「お腹すいた?お昼ご飯、食べに行く?」
と、モモカが言うなりミクの代わりにリコがテンション高く何度も頷いている
「行こう!私もお腹すいた!」
と、グイッとミクの手を引っ張るリコ。強く引っ張られ慌て転けそうになるミクを気にせず部屋を出ようとするリコに、モモカがまた、大きくはぁ。とため息ついて後を追う
「好きな食べ物なに?ここの近くは美味しいご飯屋さんがたくさんあるんだよー」
「えっ?あの……」
話も歩きも止まることなく、施設の中を歩き続けるリコに戸惑うミク。施設にいるすれ違う人達も、二人の様子を不思議そうに見ている
「あれ、リコ。この子どうしたの?」
「あっ、クルミ。ミクだよ。さっき連れてきた」
玄関前で二人に話しかけてきた女性と話すリコ。二人の視線にリコの後ろに隠れたミクに、クスッと笑って女性が二人に近寄ってくる
「へー。じゃあ、その持っている本が探してた本?」
「そうそう。でも貸してくれなくて困っててさ……」
「そうなんだ。まあ、ここにあるなら、まあ良いんじゃない?それより、どこ行くの?」
と二人話していると、やっとモモカもミク達のもとに来て、二人の会話に入って話をする。三人の話にはいれず、ミクがリコの服の袖を強くつかんで、不安そうな顔をしている
「……でね、街に出てお昼ご飯食べに行こうかなって。クルミも一緒に行く?」
「そうしようかな。仕事も一段落しているし」
とリコと話終えると、ミクを見て微笑む女性。目を合わせないようにしているミクに、手を出して握手をしようとしている
「私は、クルミ。ミクちゃん、よろしくね」
と話すクルミに、リコの服をつかんで戸惑うミク。リコとクルミ、モモカの顔を見回すと、恐る恐るクルミと握手をする。それを見たリコが、うーんと背伸びをして、ミクの背中をポンッと軽く叩いて笑う
「じゃ、自己紹介も終わったし、急いでご飯食べに行こう」
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