第六話:永久的停滞招来体-エターナル-
『なぁ!!陸奥が目を覚まさないんだ!!!
どうすりゃ良いんだよアタシィ!?!
こんな時だけどバカだからわかんねぇよぉアタシはさぁ!!!』
「……降りてください。戦います僕達が!!」
瞬間ノベライザーを加速させ、あのエターナルへ向かうカタリ。
「『空中に現れる無数のミサイル。
まさに雨の如き勢いと数を持って、敵へ降り注いでいく。
無数の爆発に包まれたエターナルの体表は、脆くも崩れ去り四散するのであった』!」
詠唱、瞬間空中で簡単な形の円筒形のそれらが現れる。
空中に現れる無数のミサイル。
まさに雨の如き勢いと数を持って、敵へ降り注いでいく。
無数の爆発に包まれたエターナルの体表は、脆くも崩れ去り四散するのであ───────
体表に届く瞬間、まるで時間が止まったようにピタリとミサイルが止まる。
「!?」
ジジ、と詠唱する分の写った文にノイズが走り、パァンと光の粒子になって文字が消える。
あのサメのような怪獣型エターナルの周りのミサイルが、錆びて風化するようにサァァ……と霧散していく。
いや、霧散したのではない。
無数の黒い文字。ミサイル、誘導弾、そう言った単語に変わり、『文字化』してが薄くなり……消える。
「なんだよ、それ……!?」
『どうして!?そんなことがなぜ!??』
おもむろに、エターナルのギザギザした歯の並ぶ口が開く。
瞬間、真っ黒な波動と禍々しい文字達の本流がほとばしり、近くの港を包み込む。
爆発。
そして、あたり一帯は全てが文字と化していく。
「辞めろぉぉぉぉぉ!!!」
とっさに、船も切れそうな巨大な剣を創造して斬りかかる。
だが、体表に届く本の数m前で刃がピタリ、と不自然に止まり、直後にサァと刀身が文字へと霧散する。
攻撃が届かない。
理解して、恐怖する。
その事実より何より…………
エターナルがこちらを全く見ていない事に。
『脅威とすら思われていない……!!
今までと、全然違う……情報が全くない変異型!!』
「そんな……そんな……!」
つい、手に持っていた柄を落とす。
初めて、チラリとこちらを見たエターナルは、しかし深海のような真っ暗で巨大な瞳を今度はまだ無事な都市部を見る。
「クソッ……!!
まだメディキュリオスフォームで……!!」
「ぁぁぁぁあああああああああああああああああああああ“あ”あ”あ“あ”あ”あ“あ”あ”あ“───ッッ!!」
瞬間、コックピット越しでも響く喉を突き破って出たような絶叫。
ズガン、と音を立てて、エターナルの巨大な頭部が口を閉じて跳ね上がる。
『あれは……!?』
その顎の下、
一人のフリートレスが、艤装を纏った拳を突き出している。
「───憤怒ッッ!!!」
もう片方の腕をさらに叩き込み、魚雷を炸裂させる。
「激怒ォッッ!!!」
次に脚、
「怒髪天をォ!!衝くゥッッ!!!!!」
さらに、特大の蹴りが、顎を砕く。
「お前が何かだとかぁっ!!!
世界の危機だとかァッ!!!!
この際どーでもいいッッッ!!!」
激しい怒りの表情の、一隻のフリートレス。
神通が、怒りのままエターナルを殴る。
「よくも妹を!!アタシの部下を!!!
アタシの仲間をぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!
お前がぁぁあああああああああッッッッ!!!」
《CUT IN》
武装へ装填されるフリートレスの血『フリートブルー』。
爆発物であり燃料のそれが、武装の威力を底上げし、今必殺の一撃が放たれる。
「うわァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」
《神通
ク
ラ
ッ
ク
ア
ッ
プ
フ ィ ニ ッ シ ュ 》
脚部の魚雷を中心に、粘度の高いフリートブルーが流れて溢れ出る。
青い色の衝撃波とともに、まさにミサイルと言った勢いで放たれた神通のキックが、徹甲弾のようにエターナルの頭を貫き粉砕する。
『攻撃が通った!?何故!?』
「……泣いている」
『え……?』
ふと、カタリは気づいたまま言葉を発してしまう。
「……悲しい顔なんだ……彼女が……!」
上空へ足を向けて、怒りの表情のままでいるフリートレス。
しかしその目頭から、フリートブルーでもない透明で綺麗な雫が、一緒に宙へ舞っているのがカタリには見えていた。
『……!
カタリさん、あの人を助けて!!』
「!?」
だが、そんな彼女の目の前で、消えた頭の周りの文字が急速に集まり、大きく口を開けたサメに似た頭に変わる。
口の中心には猛烈な光。
ノベライザーが手を伸ばし、神通と重なった瞬間、
光が、二人を包んだ。
***
「ウッ……!?」
どれほど寝ていたか、バッと即座に上体を起こす神通。
「敵は!?あれ……あーしなんとも……」
身体にも艤装にも異常はない。
周りが明るいおかげで良くわかる。
時刻はあれから少し後、夕方の…………
「……え?何この光……?」
ふと、もう空が暗い事を思い出す。
この温かい光は……と神通が見上げた瞬間、
巨大な腕があった。
光を放つ青い左腕。
その根本にいる青と焦げた黒のロボットは、右側が消し飛んだ状態で、ヒビの入った『カクヨム』のバイザーでこっちを見ていた。
「あ……ああ……!!」
『……目が覚めて良かった……!
ちょうど治療が終わ、ぐっ!?』
光が止まり、ロボットが片腕で侍従を支える。
それを見ずに、恐らく人のいる胸部が見える大穴の位置まで神通が走る。
「声……まさか!?!そんな!?!」
「……はは……なんでまた……カッコつけちゃったんだろ……!!」
機体と同じ焦げ後見える傷の中、半死半生で荒い息の少年が……カタリがいた。
「何やってんだよ、君はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!?!」
……この時カタリは、
痛む傷の中、全く同じ自嘲気味な事を頭でリフレインしていた。
同じことを2度も。
情けないな、と
***
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