プロローグ5:来たぞ我らのビッグセブン
「グッ……!!」
なぜ、こうなってしまったか後悔は遅く、
だが、後ろの二人を……会った相手を守れて、微かに満足し、なお笑う。
「……ごめんね、バーグさん、トリさん……!!」
『だから言いザザ、ぃたよね!?!
機体ダメビ-...45%!!!
トリさんが悲鳴を──────』
目の前のAIの少女は、今にも消えそうに画面を瞬かせて叱ってくる。
バーグの言葉通り……今回は自分が悪い。
「なんで……格好つけちゃったんだろ……!!」
ぴちゃん、と赤い滴が目の前のモニターに落ちる。
───カタリィ・ノヴェルは、頭部を切り脳震盪を起こしており、左肋骨はおそらく折れて内出血。
なんなら左腕は肩がおそらく折れていて、辛うじて操縦桿を握っているだけで、動かない。
『バカ!!バカ……!!
カタリさんの大馬鹿!!』
「……死ぬのか……ボクは……!!」
死の気配を感じるが、恐怖をしている暇は無さそうだと、目の前に迫る美人の割に口の中はおぞましい顔で理解する。
無念だ……だが不思議なことに、取り乱す様な気にはなれない。
ただただ……救えなかった世界の事を考えてしまっていた。
(もっと俗っぽいキャラだと思ってたな僕は……
もっと取り乱すって思ってた……死にたくないはずなのに……なんで、心の片隅だと、平穏な暮らしを望んでいたと思っていたのに……!)
後ろの二人。マサチューと……だれか。
後で知った事だが、彼女たちは血が青い。
人間じゃない。トリにもバーグにも資料と一緒に教えられた。
そして今も見た。
でも、
「女の子の前で、」
ガシャン、と音を立てて、コックピットに真正面から鋭い触手が刺さる。
「カッコつける、奴だったのか僕は……!」
先端がギギギ、とノベライザーの外角を押し退け、自分の額を切るほどの距離まで迫る。
『カタリさん……!』
「最後まで格好つけて死ぬなんてね。
巻き込んでごめんね、バーグさん」
『相性が悪すぎる相手です!
逃げて、』
「もう無理みたいだ……」
そして、
悲鳴を出す暇もなく、ノベライザーは多数の触手に串刺しにされ──────
『必殺!!八裂き手裏剣!!』
『ギロチンレイッ!!!』
スパンッ!!!
V字の光の刃が、回転する巨大な手裏剣が、触手を切り裂く。
その刃達はさらに、触手の大元のネフィリムを斬り裂き、勢い止めずその後ろで市街地へ進撃していたウナギの様な不気味なネフィリムも斬る。
「!?」
ズシィィィン
目の前に降り立つ影、爆ぜる大地。
ノベライザーの目の前に、もっとずっと巨大なロボットが降り立つ。
『我が名は長門。ビッグセブン『光の戦姫』。
光を纏いて、闇を撃ち砕く!』
神々しいまでのスマートな鋼鉄の身体。
静かに構えた姿勢と砲塔。それはまるで仏像のような……まさに『光の巨人』を思わせる銀色の姿。
ビッグセブン、長門がネフィリムと対峙する。
Quaaaaaaaa!!!
カツオノエボシに似た触手を振るい、長門を貫かんと攻撃するネフィリム。
貫く直後、両腕を広げて上に構え、砲塔が縦に二つに割れて光った瞬間、腕を地面まで下ろす。
現れた光の壁。
全ての触手が突き刺さり、動きを止める。
長門艤装艦橋内部
「防御すら貫く一撃。水雷戦隊旗艦のお前の力を、貸してくれ神通!」
取り出す、フリートレスの力の結晶、54式フリートライザー。
ビッグセブン専用の、右手のリング状のG-フリートライザーにカシャンと広げたそれをかざす。
《AUTHORIZE:ZINTHU!
CONECT-ON》
一瞬、ビッグセブンの姿が神通の姿に変わり、直後腕を前方に突き出して交差させる
『クルーズスペリオルスラッシャー!!』
そして、自ら作り出した障壁ごと、大きく縦に開いた両腕から放たれる溢れ出るように弾けるエネルギーを漏らす光の刃で敵を切り裂く!
スパンッ!!
一瞬の静寂、そして真っ二つに割れた巨大な身体がご開帳。
『せぇぇぇぇりゃぁぁぁぁぁぁッッ!!』
その先で200mもの巨体を高速回転させた勢いで砲塔の変形した二つの剣で、巨大なヌメヌメした一本胴体に傷をつけていく光景が映る。
Quaaaaaaaa!?!?
『あらよっと!!
へへ、開きにしようと思ったが、なかなか巧くは出来ねぇか!?』
背後で着地する巨大な青い忍者のような姿。
腕を組んで立ち上がるは、ビッグセブン陸奥。
瞬間、ナマズひげの様な器官がピンと張ったネフィリムが、その身体から四方八方無差別に放電し始めた。
『マジかよ!?!』
襲いくる雷。光に速さ。
それを、僅かな着弾時間の違いを見抜いて紙一重で回避し始める陸奥。
『ヘヘッ!!オレを捕らえられねえ雷様かぁ!?!
この『潮風の覇者』陸奥様は、いつのまにか光の速度も追い越したみてぇだな!!』
ならよ、と叫び、正面に降りた陸奥が素早く振り向いて、手の甲を相手に見せてピースサインをする。
『知ってるか異次元の化け物!!
こいつはこのイギリスじゃあ、『死にやがれ』って意味だ!!
つまりお前は、後2秒でおしまいって事だよ!!』
Quaaaaaaaa!!!!
まさか挑発が理解出来たかどうかは分からないが、ウナギというよりウツボな口を開けて舌の中のネフィリム特有の女性の様な部位を見せ、その口の前方に電光の球体を溜め始める。
「撃ち合いはガラじゃあねぇが、同盟国から貰った良いのがあるぜ?」
瞬間、艦橋の陸奥が取り出すフリートライザー。
《AUTHORIZE: ADMIRAL HIPPER!
CONECT-ON》
アドミラル・ヒッパーの姿が一瞬重なる陸奥。
その周りに、無数の手裏剣状のエネルギー弾が発生し始める。
Quaaaaaaaa!!!
敵の雷球が放たれる。
『奥義!!
炸裂連弾手裏剣!!!』
瞬間、ガトリングキャノンの様な凄まじい手数の手裏剣が連続で放たれる。
雷球を押しとどめ、破壊し、そして敵へと降り注ぐ。
悲鳴を上げる間も無く蜂の巣と化し、その体が霧散していったのだ。
『いよっしゃぁ!!』
『やったな!』
長門と陸奥が並びあい、お互い手を打ち合わせて勝利を喜ぶ。
『さて、他は無事か?』
『ま、あんまり心配はしてないけどな』
2つの巨大な鋼鉄の巨人がが見る視線の先、
Quaaaaaaaa!!
三体のネフィリムが進撃する。
まるで鋼鉄の塊の様な鋭く光る、刺々しい体表のもの、
マッコウクジラの頭の様な腕を持つ、筋骨隆々としたもの、
そして…………まさに、溶岩の巨人といった様な、赤く燃えたぎるマグマと黒く冷え固まった岩の様な体の物。
D.E.E.P.が何を取り込んだのか、分かりやすい姿の怪物が今、ロンドンへと進撃する。
『────行くぞ、コロラド姉さん、ウェストヴァージニア!!』
『『応!!』』
その三体へ、
『『『どりゃぁぁぁぁぁッッッ!!!!』』』
三つの巨影が、空中から強力なキックを叩き込む。
強烈な一撃でマグマと鋼鉄のD.E.E.P.が吹き飛ばされ、とっさにそのマッコウクジラの頭の両腕を広げ手短な建物を使って踏みとどまったディープが、女性型の顔の口を、獣のように裂けた大きな口を開けて威嚇する声を上げる。
敵を見るために真正面を向く。
そこに、精悍な顔と光る瞳の鋼鉄の巨人の顔があった。
そう、目の前に。
『……ソーシャル・ディスタンス』
まるで山の様な筋肉盛り上がる機械と思えない腕で、そっと押して後ずさりをさせられる。
面食らったネフィリムだが、すぐさまその相手へ戦いの合図である咆哮を上げる。
『ふむ、なお近づいてくる気か?』
たくましいマッスルは、特殊なカーボンチューブでできた人工筋肉。
散りばめられた様に装着された戦艦の装甲は、サイズが合ってない、と言うよりは筋肉が装甲を突き破っている様な印象すらある。
巨大な胸部は補助動力炉が二つ収められ、筋肉がピクピク動くのは今も冷却水が全身を忙しなく駆け巡る証拠。
6パックの装甲、その足のスクリューでちゃんと動けるのか分からないふとももとふくらはぎのマッスルの隆起と質量。
そして、
肩と何よりもその拳を構成する16インチ砲が目に映る!
『『力の知将』ことこの私コロラド相手には、あまり良い策ではないな!』
言い放った瞬間、ネフィリムが巨大で太く、何より重そうなマッコウクジラめいた両腕を振り上げて飛びかかる。
『むんッ!』
振り下ろされた両腕を、直立不動の姿勢で腕だけで掴む。
その足元に起こる爆発は、単純な力によって引き起こされた衝撃波。
『なかなか良いパワーだ!
だがまだまだと言わせてもらおう!』
───コロラド微動だにせず。
驚く相手が動きが止まった瞬間、右腕が引き絞られ……否!!
右砲が『装填』される。
『味わいたまえ!これこそ、』
相手の方が早かった。
既にその両腕を交差させ防御の姿勢をとっている。
『我が16インチの拳だッ!!!!!!』
放たれた右ストレート。
分厚い腕を派手にくりぬき、引きちぎり、ネフィリムを大きく吹き飛ばす。
踏ん張っているはずの両足が捉えたはずの地面はどんどん足の裏が擦れる様に移動していき、やがてぶつかった建物に躓き、背中から地面に叩きつけられてようやく止まる。
Quaa…………!!!
声にならない悲鳴。
それを見下ろす中、コロラドは艦橋内で静かに拳のG-フリートライザーへあるフリートレスのフリートライザーをかざす。
《AUTHORIZE: SIGURE!
CONECT-ON》
「さぁ、同じジム仲間の
君の純粋なる力を借りよう!」
一瞬、時雨の幻影がその大きすぎる艤装を隠す。
そこからコロラドの艤装が、右腕、左腕の順に腕を曲げ、銀色の放電と共にダブルバイセップスのポーズへ。
全身の砲の部分が展開し、サイドチェストのポーズと共に銀色の放電の様な物が目の前でエネルギーの球体を作る。
『パワード、』
そして、再び右ストレートのために拳を振り絞り、
『─────ボンバァァァァァッッッ!!!』
エネルギー球を、渾身の力で殴る。
コロラドの16インチ砲のパンチが乗ったエネルギー球が、かろうじて立ち上がったネフィリムを貫いた。
爆発!
水に変えるだけのはずのフリートレスの攻撃に、さらにムダに加わったエネルギーが熱に変わった事による水蒸気爆発だ。
『16インチ砲の拳は、全てを砕くッ!!』
勝利のオリバーポーズ。
その風圧で、水蒸気が晴れ────
『破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
装甲より赤い下の人工筋肉が目立つ、コロラドよりは細身な体型のビッグセブン艤装。
同じく砲塔の変形した拳二つ、相手の金属じみた体表のネフィリムの長い剣の様な爪を刃のない懐で受け止めて、弾く。
『せいっ!』
メリーランドは、そのままの勢いで一回転し首筋に手刀を一閃。
『たぁぁッッ!!』
鉄をも切り裂く様な一撃でよろけた隙を突いて、一歩踏み込んで、足先から力を伝播させた綺麗な正拳突きを相手へ打ち込む。
ガンッ!!
鉄板の歪む音は、鋼鉄と岩肌の胴体を撃ちへこませた音。
Quaaaaaaaa!?!
続いて耳をつんざく悲鳴を聞く。
「すぅー……ひゅー……!!」
呼吸を整え、油断なく構えるメリーランド。
「単純に硬いか……『不屈の闘士』などと呼ばれているが、少し骨だな」
取り出したるは、ステイツのとある最新鋭戦艦のフリートライザー。
《AUTHORIZE: MISSOURI!
CONECT-ON》
拳を構えたメリーランドの艤装に、黄金に輝くミズーリの姿が一瞬重なる。
黄金の光を纏い、構えるは再び正拳突きの構え。
腕を構成する砲塔が開き、より一層煌めきを増して力が収束する。
Quaaaaaaaa!!!
瞬間、鋼鉄の巨大な爪が振るわれる。
しかしバキィンと音を立てて、黄金のオーラに弾かれ砕かれる。
「卑怯とは言うな!
無敵のマイティー・モーの力だ!!」
即座に放つ正拳突き。
「ストライクバーストッ!!」
鋭い一撃が鋼鉄の身体を貫き、まるで黄金の槍のような輝くエネルギーが放たれる。
爆散。
残心から構えをとき、メリーランドは呼吸を整える。
「よし……!」
『ごめーん!!メリーお姉ちゃーん!!』
ところが、そこで突然のそんな声と共に、ずどんとぶつかる巨大な影。
『ぐあ……っ!?
ジニーお前!!』
「本当ごめーん!!
ちょっと調子のっちゃ、うぼあぁぁぁぁ!?!?!」
二つの巨人に降り注ぐ炎の球体。
全身を煮えたぎるマグマで構成したネフィリムから放たれたそれらが、まさに炎の雨となってウェストバージニアとメリーランドへ降り注ぐ。
「メリー!!ジニー!!
貴様ぁ!!我が姉妹に!!!」
全身の筋肉の血管が浮き出る怒りのまま、走り出そうとするコロラド。
『無事だ!コロラド姉さん!!』
「メリー!?ジニーは!?!?!」
「コロラド姉の怒りもごもっとも!!
だけどね!!」
シュパパパパパ……!
妙な風切音が辺りを包む。
煙の不自然な場所が渦巻き、直後煙が吹き飛ばされる。
「この敵は!」
シュパパパパパ……!
何かが高速回転しながら宙を舞う。
「この私!」
ビルを蹴る巨大な脚部。
「『正義の炎神』、」
巨大な鋼鉄の赤い身体で宙を舞う。
その巨体で軽やかに、ツバメのように翻り、
「ウェストバージニアの敵だぁ────ッッ!!」
ズギャァァァン!!!
その重さに似合う強烈なドロップキックを叩き込む。
くるりと空中で一回転して大地に降り立ち、改めて二本の角と赤いマスクを被ったような顔の巨人が、勇ましいファイティングポーズをとる。
『お前なんかより……熱いぜ、私は!!』
直後、立ち上がったネフィリムが、胸からマグマの光線というべき攻撃を放つ。
『ッシャオラァァァ!!!』
走り出した勢いでスライディングキックへ移行して、回避と同時に攻撃を行う。
その足には、フリートブルーの起爆力を持って爆発的な燃焼が纏い、マグマの身体に傷をつける威力を生む。
Quaaaaaaaa!
背後でスーパーヒーロ着地の姿勢でUターンしながら止まり、立ち上がり右拳を振り上げる。
『まだ、まだぁ!!』
炎を纏う拳。
敵もその腕にマグマを纏い、二つの燃える拳がぶつかり合う。
爆発。
お互い、その巨体が後退りするほどの破壊力が爆ぜる。
「うっひゃぁ〜……!
私の炎に対抗できるほどかぁ……!
いいね、燃えてきた!!」
そんじゃまぁ、とウェストバージニアの取り出すフリートライザーが、二つ。
「出し惜しみなし!!
永久凍土も融ける炎と、火の鳥みたいな日本の航空攻撃の炎で!!」
ほい、ほい、と二つを腕のG-フリートライザーに読み込ませる。
《AUTHORIZE: GANGUT!
AUTHORIZE: HOUSHYOU!
CONECT-ON》
瞬間、全身に迸るエネルギーとともに、ガングートと鳳翔の二つの姿が重なり、
全身が、燃え上がる。
「来た来た来たぁ!!!
行くよマグマ怪獣D.E.E.P.!!!」
直後、敵ネフィリムもマグマの身体を噴火させるようにその熱量を上げる。
「ウェストォ、ダイナマイトォォッッ!!!!」
二つの大炎上する物体がぶつかり合い、
当然の如く、凄まじい大爆発を起こす。
「アイツバカだったなそういえば」
「うむ」
そんな姉二人の呟きもかき消す衝撃が、テムズ川深くまでやってきた、沖合にいたと思われる現代艦艇達で身体を作ったであろう機械的なネフィリムと、青く半透明な女体そのままのネフィリムの足を一瞬止める。
《FLEETRANS!
AUTHORIZE:JAVELIN = LANCE》
『まずは空母部分を!!』
空中から現れし鎧の騎士。
ネルソンのビッグセブン艤装の手に、駆逐艦装少女ジャベリンの武器であるドリル型の槍が現れる。
甲板を貫き破壊する。
悲鳴を上げる艦艇型ネフィリムが、全身の現代駆逐艦のVLSをやたらめったらに発砲する。
鎧の騎士へ迫るミサイル達。
回避しようとしたネルソンが、突然身動きができなくなる。
なんと、あの透き通ったネフィリムが、身体を液状に変えて偽装を包み、硬化して拘束したのだ。
「くっ……!」
目の前に迫るミサイル。
D.E.E.P.でなければあらゆるものを破壊するそれらが、
突然、ネルソンの目の前でピタリと止まる。
Qua!?
突然の事態に驚く艦艇D.E.E.P.
「───こちらですよ」
その真横で、逆さになって片手をかざす巨人がいる。
クルリ、と巨人が手を動かすとD.E.E.P.の驚いた顔とミサイルがこちらに向く。
パチンと弾かれるマニピュレーターの指。
瞬間、放った本人へ降り注ぐ無数のミサイル。
Quaaaaaaaa!?!?????
爆煙を上げ、巨人共々炎が包む。
『ロドニー!?!ロドニー!!!』
「お姉さま、一体何度この簡単な脱出マジックに引っかかってしまうのです?」
驚いたネルソンの背後から、細身の身体の艤装、ビッグセブン・ロドニーが大仰に手を広げて歩いて出てくる。
『無事だったのか!?
流石、『神秘の魔術師』!!』
「ですから、この程度で驚かれては困ると……まぁ嬉しい反応ではありますが……おっと!」
と、あの全身が液体のD.E.E.P.がロドニーに狙いを定め、液体の体を渦巻かせて襲いかかる。
「ロドニー!?
なっ……!?」
そして、爆炎から現れた艦艇型D.E.E.P.が、ネルソンへ向かい集中砲火を放った。
一気に劣勢へ……!?
「───戦艦が簡単に沈むか。
映画にも出てきたセリフを、ビスマルク殿は私に贈ってくれた……」
爆煙をかき分けるよう、這い出る黒い装甲。
《FLEETRANS!
AUTHORIZE: BISMARCK = ARMOR》
「このネルソン、『賢者の騎士』と名乗る以上は!
お借りした力とあらゆる知恵で、必ず勝利を掴む!」
ネルソンの装甲は、揺るがない意志と鉄血の黒に変わっている。
再びの砲撃。
しかし、避けずに全てを受け切って、ゆっくりと距離を詰める。
「そして、ビスマルク殿の力をお借りする以上は、我らが風の騎士長殿も出ていただかないと」
ネルソンの右腕のG-フリートライザーにかざすは、クイーンダムの誇り。
《FLEETRANS!
AUTHORIZE: HOOD = BLADE》
良き風と共に現れる、ロングソード型戦艦砲実体剣。
掴み、そして尚も足掻くよう砲撃を続ける艦艇型D.E.E.P.を捕らえる。
「行くぞぉッ!!」
《GIGANTIC-CUT IN》
放たれた渾身の突きがD.E.E.P.を貫く。
瞬間、刃に纏う風が嵐のようにその体内に吹き荒れ、
ズドォンッッ!!
爆ぜた。
「……よし。
ロドニー、そっちは!?」
「あら、ようやくこちらのフィナーレですか」
言葉と共に水の渦の中心のロドニーが静かに片手を上げる。
液状のD.E.E.P.の渦がその手に集中し……いや、その手の先へ自分んですら制御できない渦と共に収束し、巨大な水の塊となっていく。
「では、まずはオーソドックスに、水を一瞬で凍らせるマジックを!!」
《AUTHORIZE: FUBUKI!
CONECT-ON》
一瞬吹雪と姿が重なり、ロドニー艤装の指が鳴らされた瞬間、D.E.E.P.だった水の渦が一瞬で凍てつく。
そのまま、上空へすいーと飛ばして、艤装内部で別のフリートライザーを自分の物にかざす。
《AUTHORIZE: SOUTH DAKOTA !
CONECT-ON》
鋼鉄の腕を頭の上で交差させ、一瞬その姿をサウスダコタの幻影と重ねる。
「さて、最後は派手に……『物体消失』をしちゃいましょうか!」
《GIGANTIC-CUT IN》
前にかざした右手の中心に、黒い点と眩い光──マイクロブラックホールとガンマ線バーストが発生する。
「レボリウム・バニッシャ────ッ!!!!」
放たれるマイクロブラックホール。
氷の塊に直撃し、高重力で圧殺しながら蒸発していく。
『……おぉ……!
恐ろしきは、そんなポテンシャルを秘める最新の
「ええ、お姉さま。
ちょっと煩いだけの良い方に……これほどの……!?」
サウスダコタの力を使った直後、ふと本人を探していたロドニーが、それを見る。
遠く、サウスダコタ達と共にいる長門と陸奥の足元、
青い、あちこちボロボロな、人型ロボット。
「あれは……!!!」
───夢で見た通り、顔に映る『カクヨム』の文字。
「予知で見たあの機体……!!」
***
この時から、後にビッグセブン3隻の消失、多数のフリートレスの轟沈が起こる戦いの序章が始まる。
だが、
この世界線には、ほんの少し、
招かれざるも、居なければいけなかった存在がいたのだった─────
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