プロローグ4:そして始まるロボと艦の物語






 ────そこはロンドンではなかった。

 崩れ落ちる看板が、倒れる青い血のフリートレス達が、無数の水に消えていくD.E.E.P.があるそこは、




 東京。

 旧東京タワーが、スカイツリーがまた折れている。




「酷い……!!なぜこんなことに……!?!」



 キュワァァァァァァァァァン!!!!


 警告音の様な、甲高い叫び声。


 そして眩い光と、次の瞬間響きわたる轟音。



「な……!!」



 目の前に半身が抉れて消えた長門の艤装が、ビッグセブンの半壊した姿が落ちてきたのだ。


「長門さん……!?!」


 サラサラと傷口から『文字』が流れて、空中で薄くなりやがて消えていく。

 ビッグセブン、『光の戦姫』長門の艤装の目には、光は二度と宿らない。




 ぬわぁぁぁぁぁ!!!!!



 そして響く断末魔。


 視線を移動させた瞬間、声にならない悲鳴をあげてしまう。



 コロラドが、あの鋼鉄の筋肉の塊が文字となり消えて行く。

 その向こうから現れた、それはどす黒いまでの闇の文字を纏っていた。


 殺セ、死ネ、沈メ、負ケロ、嫌ダ、オ前ガ死ネ、オ前ダケ沈メ、消エロ、


 沈メ、沈メ沈メ


 沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ


 沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ殺セ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ死ネ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ消エロ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メオ前ガ死ネ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メヤダ沈メ沈メ沈沈メ沈メマダ死ニタクナイ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メオ前ダケ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メイナケレバ良カッタ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ消エロ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ沈メ



「ウッ……オェ……!!!」


 頭を突き刺すようなまでの、圧倒的『負』

 ロドニーは、吐いてしまうほどの『負』



 中心の輪郭は女性のような、しかしビッグセブン並みの体長の何か。


 一歩、ただ歩くごとに海が、大地が、空がドス黒い負の文字に書き換えられ、ただの闇に変わっていく。



 その向こうには、胸の辺りに取り付けられた探照灯が赤く点滅し、今にもエネルギーが付きそうなビッグセブンの艤装が5機。


 自分、メリーランド、ウェスト・バージニア、そして……


「姉様……??」



『────私達は諦めるわけにはいかない!!

 そうだろう、!!』


『その通り!!どんなに絶望的だとしても!!!』


 ネルソンの騎士甲冑の様な姿の艤装の肩、


 見たことのない、青い小さな……それでも10mか20mかぐらいはありそうな、人型の機械が、ロボットがいる。


「カ……クヨ、ム……??」


 バイザーに光る文字を輝かせ、突如生み出した槍の武器を手に、ネルソンと共に駆け出す。


「!?!

 なぜ……!!」


 まさに、自分と同じポーズで、自分が、ロドニーの艤装が手を伸ばす。


「『姉様ぁ!!』」


「これしか方法は今がないんだぁぁぁぁぁ!!!」


 無謀ともいえる突撃。


 そして、敵の攻撃が、ドス黒いまでの闇の文字の本流が、ネルソンへ直撃する。


「あ……!」


 それは、ネルソンを消し、そして自分たちへと降り注ぐ。




「あ───────」




 絶望の叫びを上げそうになった。


 だが、その時、








『────叫べ、指揮官よ!我らの名を!!』






「ノベライリングッッッ!!


 ビッグセブゥ───────ンッッッッ!!!」








 光と共に、


 輝く、『ビッグセブン』の文字と、巨人を見た。








          ***


「───ロドニー?」


「あ……!」



 気がつけば、心配そうに見る姉のネルソンと、騒がしく逃げ惑うダイナーの外のロンドン市民たち。


「予知夢を見たね?ひょっとしてこれかい?」


「いえ……状況は?」


「思わしくないぞ!!

 まさかのネフィリム大量発生だ!!!」


「何ですって!?!」


 ビッグセブンのみが戦える、D.E.E.P.の特殊個体。

 それが大量発生とは……!?


「つーか、通信によると、もっと混乱した事態だぞオイ……!!」


 静かに、情報をまとめるべく通信機に耳を傾けていた陸奥が呟く。


「陸奥くん!スピーカーホンにしてくれたまえ!」


「後悔すんぜ、コロラドの姉御!!」


 陸奥が通信をスピーカーホンに切り替えた瞬間、






『うぉぉぉぉいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!

 ビッグセブンどこだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!

 出番だぞビッグセブゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!』





 音割れするほどの叫び声。

 一瞬、ガラスがカタカタ揺れた声に、コロラド以下ステイツ艦がため息をつく。


「あー、落ち着きたまえ、サウスダコタくん。

 現状報告」


『コロラドォォ!!早く来てくれコロラドォォォォ!!!

 何かしらねーけど!!なんか、なんか目の前で!!

 あ、コロラドォォォォ!!!!目の前でロボがぁ!!!!コロラドォォォォ!!!』


「まさか君の妹か!?」


『違うってぇ!!!!!!

 目の前で、目の前でぇ!!!!』



          ***


「う……」


 頭から、青い血を流す銀髪の美人。

 サウスダコタ級3番艦、マサチューセッツ。


「どういうことだよこれぇ!?!

 助かってるけどなんでだよぉ!?!??」


 彼女を抱える、サウスダコタ級1番艦ネームシップ、サウスダコタが叫ぶ先、



 機械油が滴る、左肩から失った傷口。

 右足は鋭い触手に貫かれ、青い体は無残な傷を負う。



 Quaaaaaaaaaaaa!!!!


 巨大な、女性の様にも見える、口が大きく裂けた怪物の顔。

 青い体はクラゲやカツオノエボシの様で、鋭い刺胞の触手がその青いロボットを貫く。



『逃げて……!!もう持たない!!!』


 振り向く、頭部バイザーに写る『カクヨム』の文字。



「なんだよ!!カクヨムってなんだよぉ!?!?

 なんで助けてくれるんだよぉ!?!?

 なんでそんなボロボロで!!!


 顔面カクヨムの青いのォォ!?!?!!」



          ***



「は……!?!」


 思わずロドニーが呟く中、早速ドアを開ける長門。


「行けるなみんな!?

 先に行くぞ!!」


「おうよ!!!」


「行って確かめるか!!」


 勢いよく出る面々の中、表情の曇るロドニーと、それを見て動かないネルソン。


「……この事を見たのかい?」


「わかりません。

 ……姉様、私が言うのもあれですが、クイーンダムの戦艦がクイーンダムの危機に駆けつけないというのも、」


「ああ!

 騎士道にも恥じる行為だな!!」


 お互い頷き合い、そして走り出す。


 戦場へ……!



           ***

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る