第三話 事態急変
前回
世界情勢:なんか変なのが現れたせいで経済がヤバい。
ストーリー:五年後に飛んだ。
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二〇二一年二月一一日、沈黙を貫いていた
四月二八日、
五月三日、国際連合は安全保障理事会決議二六八一により
五月四日、国連安保理決議に対し皇國は『
六月四日、アメリカ合衆国、
六月六日、
七月四日、米国、
七月五日、
七月十日、米国、
七月二四日、米国、
七月二五日、
八月一日、
八月六日、
八月七日、第二次真珠湾攻撃(
八月九日、
八月一五日、
八月一七日、皇國、米国占領政策及び戦争責任者の最終処分を発表。
八月二四日、皇國、米国大統領最後の演説を監視付きで許可。日程を
九月二日、大統領演説に対し
九月八日、大統領演説。
⦿⦿⦿
「本当に良いのだな?」
「
「
「あいわかった。」
「親愛なる合衆国市民の皆さん、まずは祖国の歴史にこのような恥辱を刻んでしまったことを大変深くお詫び申し上げます。しかし私は信じている。今でも、自由と民主主義の精神は皆さんの中で強く生き続けていると。私は疑ったことなど一度もない。アメリカの夢は、決して死なないと。だから私の最後のお願いを聞いて下さい。皆さんが飽きるほど聞いた私の言葉を……。」
ぐすり、と鼻を
大統領は目の前の女の様子に驚愕を隠せなかった。
「失礼、続けられよ。」
涙声に
さらに周囲を見渡すと、立ち会った
彼女らは何を思って泣いているのか、考えれば考えるほど背筋が凍る。
一年前、この世界に突然現れた謎の勢力は、ひょっとすると想像以上にとんでもない存在なのではないか。
「どうした? みなまで言う必要は無いという事か?」
恐ろしい想像は止まらない。
ひょっとしてこのセレモニーは、見せしめではなく本当に誠意のつもりで行っているのか。
思い起こせばこの国の態度は最初からおかしかった。
これまで繰り広げられた時代遅れの帝国主義的
侵攻は相手の意を買った武士道のつもりなのか。
彼のよく知る日本とはまるで違う国家、最もどす黒い悪の帝国……。
「いや、言う!」
大統領は腹を
確かめなければならない。
そして戦う意思がくじけてはならない。
偉大なる祖国の再建を誓う彼のスローガンはこれまでで一番大きく、力強い声で米国全土に響き渡った。
一瞬の沈黙のあと、
「素晴らしい! 何と素晴らしい! 一年前の今日より半年をかけて我々はこの世界のありようを調べに調べた。当然、貴国の歴史、
この女は本気でこんなことを言っているのだろうか。
この場に参列した者は、みな正気とは思えない。
泣き上戸の酔っぱらいのような
「それは光栄なことだ……ご褒美に何をくれる?」
「無論、
大統領は大きなため息を吐いた。
「どうせ嫌われ者だ。そんなものより一日も早く合衆国を市民に返してくれ……。」
その言葉に、
手に持った刀を落としさえした。
「
「随分泣き虫なんだな……。あんたの方こそそんなことで国家指導者が務まるのか? お嬢さん。」
ほとほとあきれ果て、心底うんざりした大統領はもう一刻も早くこの茶番を終わらせることを願い、挑発めいたことを言ってみた。
「不覚であった。
拾われた刀が振り上げられ、大統領は流石に硬く目を閉じて歯を食いしばった。
⦿⦿⦿
ここでテレビの映像が
四年前にはこの後で大統領が
「何度見ても
コーヒーカップを片手にニュース映像を見ていた
上質なチェアにふんぞり返り、脚を組んで座る姿勢は
しかし背丈は高い部類に入り、その肢体が放つ色香はやたらと自己主張が激しい。
男としては目のやり場に困ってしまう。
そしてその血を
彼女の冷たい目付きと美しい体付きを堪能しながら踏まれたいという声もよくSNSに上がっている。
息子がいたらひょっとすると性癖が
「結局この後米国占領は一年も経たずに終わりましたね。まあその後の政権は
机の脇に立つのは
「彼らとしてはあの広大な領土に進駐し続けるより、都合の良い政府に立ってもらって国際社会との窓口になってもらった方が国益に叶うという判断だったのよ。それと、『先制攻撃してきた戦争相手も責任者さえ処分すれば自主独立を尊重しつつ友好関係を結びますよ。』とアピールしたい意図もあったのでしょうね。」
「正直、不謹慎な話ですがあまりにスピード決着したものだから恐れ
苦笑する
「
雇用主であり政治の師でもある
「先生、
「そうでもないわよ。同盟国にして覇権国家、そして重要貿易相手国の失墜は
「あの、先生?」
「
「あら、そういえば
「世界最強よ。」
「せ、先生、何ですかその冗談……。」
「
正確に言えば、世界で最も大きな権力を握る全人類の第一人者となるのが彼女の夢である。
自らがそれに値する人物であると
そのためにありとあらゆるものを利用するつもりでいる。
それが
「
「それをどうにかするのが
彼女は間違いなく日本国初の女性首相に上り詰めると確信していた。
だからこそその彼女から学び自分が政界に出た時の糧にしようとしているのだ。
「それにしてももう一つの問題はあの
「それに彼女は
二人の言葉は
ただ彼女を自分の為に利用しようと思っているだけだ。
そう言う所を見透かされているので、二人とも
「精々強がっているといいわ、
子は親の心を見透かしている。
対して親は子の心を知ろうともしていない。
⦿⦿⦿
月日は流れ、
高校時代のもう一人の友人、
何やら夢を追いかけると意気込んでいた。
六月初旬のある夜、
「
飲み相手の
「あいつよくこの情勢でこの時期に決めたな……。面接とか全く得意な印象無いんだが。中学の頃はほとんどボッチだったじゃん。」
「ま、色々あったからね……。」
そもそも
そして高校時代に
「内定先は教えてくれないんだよね……。」
「お
高校も中学時代の成績からはやや上狙いであった。
そんな彼の姿勢は、傍から見るとそういう風にしか見えなかった。
「もういい加減そんな意気地無しムーブばっかやってないで告って確保しちまえよ。お
「いやぁ~……。」
その自信の無さは歳月と共に躊躇いを増し、手が付けられないほどある感情の拗らせが重なっていた。
「そんなに自信が無いなら例えば
「いや、それは無い。」
即答。
それは本当に脈が無いことを
「
「前から思ってたけど、
「この大学生活中に色々知って目が覚めたんだよ。祖国の真の歴史と危機を知ってな。」
またその話か。――航は
この
先日も、「古くはソ連、今は中国やロシア、北朝鮮の脅威に目を背けて憲法改正や防衛力強化に反対してきた奴らが、目の前に大日本帝国が表れて初めて危機意識を持った。」などと皮肉を言っていた。
まあこの意見は
ただ、「こいつここ最近ヤバい方向に行ってないか?」と
そういえば
この男、思想に嵌って人生を脱線し始めていないか。
友人として止めようとそれとなく注意はしているのだが、どこまで効果があるのかわからない。
⦿⦿
その後、話が脱線しそうだったのでどうにか身内話に軌道修正したい
寮に戻り、
あらためて内定先を聞いてみたが、
どこに就職するかはまだ決めておらず、決めても教えるつもりはないらしい。
その際
もう潮時なのか?これ以上は言い逃れ出来ないレベルでストーカーになってしまうか。ここで引くべきなのか。――
考えれば考える程溢れてくる思い出。
⦿
合格発表の帰り道、浪人を経ての合格を何だかんだで祝ってくれたこと。
現役時の受験では
三人で下校した
中学の頃、
ちなみにこれが
そして小学生の頃は、
とんでもない出会いだったが、今ではその出会いは彼にとって……。
⦿
あ、ヤバいまたこれ思い出しちゃった。――
しかし、意識すればするほど思い出と妄想はどんどん膨らんでくる。
近頃の
妄想の中にのみ存在する、
そんなものが記憶の中に焼き付いているある意味で体を重ねた光景と重なってしまったら、もう辛抱止められるはずがないではないか。
そわそわして貧乏ゆすりしながらも、次第にいてもたってもいられなくなる。
腹の底から致し
実のところ二人の出会いは
二次性徴が始まるころから片鱗はあったのだが、今やすっかり彼の性癖は
そしてこれこそが、
この寮は壁が薄く、結構隣に声が漏れたりするのだが、隣の部屋から美青年の艶っぽい嬌声を聞かされる隣人は様々な意味でたまったものではないだろう。
自らの劣等感を克服するため、
おそらく成人してピークを迎える彼の
隣人は隣に住む中性的で端正な顔立ちと
気の毒なことだ。
⦿⦿
酷い気分の落ち込みを伴う
目は覚めたが夜はまだ明けきっていない。
シャワーを浴びた後、日が昇らない内に潮風に当たりたくなった。
とにかく考えを落ち着かせたかった。
ふらふらと寮の駐輪場へと足を運び、自身のオートバイにキーを差し込んだところで前夜飲酒していたことを思い出し、電話を取り出した。
呼べるかな……。――タクシー会社に電話をしたのは初めてだった。
運転手は最初、宅飲みで帰れなくなったのかと思っていたようだが、どうでもいい事情にもかかわらず快く乗せてくれた。
どうやら青春を感じたようで、若さを羨ましがって笑っていた。
⦿⦿
「ありがとうございます。帰りは始発に乗りますので。」
自由の女神像のレプリカがいやに悲しそうに佇んでいた。
潮の香りが侘しさを際立たせる。
ふと左方に目をやると男女が接吻を交わしている。
こんな時間にもカップルがいるのかと驚いたが、何やら二人に近づく複数の人影。
不審に思うよりも先に
人影は巨大な袋状のものをいきなりカップルに被せる。
もし
幸いカップルに被せられた袋は覆い被せられたところで
「逃げろ!」
揉み合いながら
その隙に男の拳が
いつも想定している妄想上のモノと比べ、全く屁でもないパンチだと思った。
すかさず殴り返す
鍛え抜かれた体がイメージしたパンチの動きはかつて自分を完膚無きまでに打ちのめしたものだ。
しかし、十分だ。
相手が怯んだのでその隙に自身も逃げようとした時、
そして何かの布で鼻と口を塞がれ、意識を失った。
「予定変更だ。とりあえずこいつ一人だけ持っていくぞ。」
最後の男は先程まで
紛れもなく日本語であった。
海から先程
「この男、使えそうだ。二人攫うより戦力を稼げたかもな……。」
空が
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・
西暦2003年(皇紀2663年) 5月3日生
身長 175㎝
体重 68㎏
血液型 A
・
皇紀2624年(西暦1964年) 7月30日生
身長 169
三位寸法 胸90 胴62 腰87
血液型 O
次回より本編第一章「脱出篇」開始。
更新は、9月8日㈫
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